表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が好きなのは妹の彼氏でロリコンのアイツ!  作者: 月宮流夏
春と暑さが暴れた一学期
9/21

9話 キャラエピ 柏木莉音の生徒会相談②

 突如掛かってきた電話の相手は、生徒会副会長『星野梓(ほしのあずさ)』。現時点で不登校の副会長である。


「もしもし? どしたの?」


 拓斗に梓について話をしていたら、タイミング良く梓から電話が掛かってきた。そして、梓の第一声は―――


「もしもし莉音? あのさ、金貸してくんね?」


 だった。


 その言葉を聞いた瞬間、莉音は通話終了ボタンをタップした。


「…間違い電話だったっ!」


「んなわけないでしょ! さっき堂々と「あ〜副会長さんですかぁ」って言ってましたよ?!」


 バレバレの否定をし、拓斗からの反論が来ても、動じることなく「ちゃう。新手の詐欺だった」と意地を張る莉音。


 彼女の心情は、変わってしまった副会長を思い、悲しみの渦に囚われていた。


「梓も変わっちゃったな…時代の流れは恐ろしいもんだよ…」


「なに急に悲観に浸ってるんですか。アホなんですか?」


 拓斗の容赦ない罵倒に心がえぐられながらも、再び梓にかけ直す莉音。

 今度は拓斗からの要望でスピーカーで通話をする。


「……莉音! なんで切るんだよ!」


「なんでって。あんたが変わっちゃったからだよ…おねーさん悲しいよぉ…」


「いつからアンタは私の姉になったんだよ!」


 「すげぇ…先輩のボケに対して完璧にツッコミ入れてる」とよく分からないところで関心する拓斗。


 後日これを参考にして澪にツッコミを入れたら、ぶっ飛ばされたのだが、それはまた別の話。


 ひとまず拓斗は、莉音に小声で指示を出す。


「(先輩。とりあえずなんでお金が欲しいのか聞いてみてください)」


「(わ、わかった!)」


「梓〜? なんでお金が欲しいの?」


「は? 金がないからじゃん。富豪なのに金借りるかよ」


「「(ド正論…)」」


 「や、ヤベぇこの人『正論ぶちかますマン』だ…口調は悪いのに正論言ってくるとか…怖っわ」と拓斗は少し震えている。なんともアホな感想だが、その辺は愛嬌だ。


「そ、そりゃあそうなんだけど…じゃあお金貸したとしたら何するの?」


「え? まあ…()()()()? かな?」


「「犯罪だァ!」」


「?! うるせぇ! ってお前男と一緒にいるのかよ!」


 『家賃の返納』とか『家族の病院代』とか、お涙頂戴系の返事を期待していた拓斗は、思わず声を上げてしまった。


 莉音も同じで、さすがに『パチンコ』が出てくるのは想像出来ず、拓斗と同じように声を上げてしまった。 


 梓の言葉など関係なしに、話を進める二人。


「うっせぇ! 関係ないわ! 犯罪者予備軍に言われたくねぇよ!」


「先輩! 予備軍じゃなくて本軍です!」


「そっか! 逮捕だ逮捕!」


「そっちで盛り上がんな! しかもなんだ予備軍って! お前ら誤解してるだろ!」


「「…は?」」


 「誤解も何も、ガッツリ犯罪ですよね?」「はい。逮捕…指導だった気がします」と梓の反論も聞かずに、盛り上がる拓斗と莉音。流石に梓が声を上げ、反論する。


「はぁ…そもそも私が無断で学校サボってるって思ってるだろ? 違うからな。てゆうかその男誰だし」


 梓が不登校な理由は、家族の用事で海外に居たから。金が欲しかった理由は、梓の十歳下の妹の誕生日プレゼントに『ア○パンマン』のおもちゃのパチンコが欲しいとせがまれたから。決して本当のパチンコをやろうとしていたわけでない。ただの妹思いなだけだった。


「なぁ〜んだ。つまんないの」


「別に面白くするつもりで言ったわけじゃねぇよ…」


「まあいいや。アンタはいつ学校来るの?」


「あ〜予定がまだあって明後日だな。澪は元気か?」


「元気も何も覚醒してるよ。ね?」


「やめてください。俺に聞かないで…」


 莉音からのフリに反応したくない拓斗。梓には既に拓斗と澪の関係を伝えてある。

 伝えた時に音割れするぐらい笑われたのだが、そこは置いておく。


「ま、頑張れよ後輩。明後日会えるはずだからな。妄想しながら待っとけ」


「いや、俺は萌葉以外で妄想しないんで」


「そ、そうか。じ、じゃあな」


 結局、明後日に莉音が少し寄付をすることで合意し、梓の微妙な反応を残し通話は終了した。


「…梓先輩ってどんな人なんですか?」


「う〜ん…『田舎ヤンキー』?」


「なるほど。超わかりやすいですね」


 とてもわかりやすい例を出され、拓斗と莉音はゆっくりお茶を飲む。そして一息つくと、拓斗は莉音にまたも質問する。


「他の先輩はどうなんですか?」


「あ〜…『会計』清水 葵(しみずあおい)は『変態』。『風紀』神谷穂乃果(かみやほのか)は『女の敵』って感じ」


「なるほど。俺、生徒会辞めたいです」


 言葉だけでわかるカオスなメンバー。『絶対王政』に『サンドバック』『女王』『お姫様』『ヤンキー(田舎)』『変態』『女性の敵』。これをカオスと言わずしてなんという。


「まあまあ、みんないい人だから」


「どこが! 生徒会長がいちばんやべぇっすよ!」


「…それに関しては激しく同意」


 拓斗はつくづく思っていた。「なんで俺こんな人達と一緒にいるんだろう」と。


「あ…忘れてた」


 莉音が思い出したのか、ボソッと呟きながらスマホを取りだし、メッセージを打つ。

 莉音の超早い文字入力を見て、拓斗は―――


「…メールですか?」


「そんな感じ。今日の中止のメールね」


「……ほえ?」


 莉音の言葉が斜め上から拓斗に突き刺さる。


 「今日の中止のメール」その言葉の意味が理解できなかった。


「中止って…相談のことですか?! ダメですよ! 校長にバレたらどうするんです!」


「大丈夫大丈夫。中止にするんじゃないよ。必然的にやらせないから」


「……え?」


「だから、()()()()()()()()()()()()()


 莉音が言ったのは、それは実現出来たらいいけど、ほぼ実現不可能なこと。いくら金持ちといえど生徒全員を掌握するのは無理だろう。

 と思っているのは拓斗だけで、実際は―――


「私を誰だと思ってるの? 全校生徒の3分の2.9が参加しているグループの創設者だよ? この学校は私の思う通りなのだ〜」


「……は?」


 笑顔でとんでもないことを言い出す莉音。『3分の2.9』なんて聞いたことないワードすぎる。ならもう全員でいい。


 澪にも負けず劣らずの権力を見せつけられる拓斗。帰りたい気持ちはピークを迎えていた。


「そんな私が『今日は来ないでね♡』ってメッセ打ったらどうなると思う?」


「……みんな死にます」


「ぶー! 不正解! どんな考えしとるんだ君は」


 現実逃避を超えた現実逃避をし、考えがバグってしまった。頭のおかしいことが何連続で起きている。理解など到底不可能だ。


 ツイツイとメッセージを打つ莉音。そして、スマホの電源を切ると―――


「よし! 帰ろっか!」


「はい。俺もう来たくないです」


 その日から拓斗は莉音に反抗的な態度をとるのは辞めたという。

あれ………相談ってなんだっけ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ