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青春詰め合わせパック(9個入り)  作者: 古川ムウ
[10月上旬]
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33/52

<33:恋と畳と柔道着(6)>

平井悟・・・柔道部員の高校2年生。

小原輝雄・・・平井の親友。

小原弥生・・・小原輝雄の姉。学校のOB。

秋田隆三・・・柔道部の主将。

瀬田伊織・・・テニス部員の高校1年生。


 「あら、平井君」

 トボトボと悟が校庭を歩いていると、快活な声が響いてきた。

 相手を見なくても、それが誰なのか、悟には分かっていた。


 「お久しぶりです、弥生さん」

 落ち込んだ様子で、悟が挨拶する。


 「確か、昨日は対抗戦だったんでしょ?どうだったの」

 「負けました」

 重い声で、悟が言う。

 「そうなの、残念ね」

 弥生は同情の視線を向けた。

 「自分が勝っていれば、チームも勝ち越せたんですが。弱い自分が腹立たしいです」

 「そんなに自分を責めなくても」

 「いえ、普通なら勝てる相手だったんです。でも、自分が甘くて、隙を作ってしまったせいで、簡単に投げられてしまって」

 悟は、ギュッと唇を噛む。弥生と一緒にいても、今は嬉しさより、試合に負けた悔しさの方が強かった。


 「そうか、負けたのか」

 しみじみと言うと、突然、弥生は両手をガバッと広げた。

 「泣く?」

 「えっ、あの」

 突拍子も無い行動に、悟は困惑する。

 「悔しくて泣きたいなら、私の胸で泣いてもいいわよ」

 「な、何を」

 悟は後ずさりする。

 「別にいいじゃない。男の子だって、泣きたい時もあるでしょ」

 何食わぬ顔で、弥生は穏やかに言う。


 「だとしても、弥生さんの胸を借りるなんて。というか、自分はどんなに泣きたくても、女性の前では絶対に泣きません」

 「古臭いのねえ」

 「古臭くても、それが男としての美学です」

 すると弥生は微笑しながら、

 「でも、そういう人って、嫌いじゃないわよ。むしろ好きかな」

 と、何気無い口調で言った。


 「へっ?」

 好きという言葉に、悟は過剰に反応する。

 「そ、それは」

 悟は弥生の顔をじっと見た。

 弥生はキラキラとした瞳で、悟を見つめる。


 (もしかして、これは、いい雰囲気という奴ではないのか)


 悟は興奮していた。心臓のバクバクが止まらない。

 彼はショートしそうな頭をフル回転させて、次の行動を導き出そうとする。

 だが、答えが出る前に、

 「あっ、そろそろ私、行かなきゃ」

 と弥生が軽く言う。


 「えっ、あの」

 「じゃあね、平井君」

 弥生は手を振り、さっさと去ってしまった。


 悟はポツンと立ち尽くす。

 燃え上がった心のやり場を失い、彼は呆けた顔になってしまった。


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