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青春詰め合わせパック(9個入り)  作者: 古川ムウ
[10月上旬]
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31/52

<31:学園祭への道(3)>

大森昌彦・・・学園祭実行委員長。

斉藤俊也・・・学園祭実行副委員長。

西田・・・学園祭実行委員。

黒崎・・・学園祭実行委員。

加茂文治・・・生活指導教師。

野口優作・・・漫画研究部の部長。


 「鋼鉄獣の一件がクリアされて、最大の危機は免れたと思っていたのに」

 昌彦は前方を凝視したまま、ハアッと溜め息をついた。

 作者側の都合で、鋼鉄獣の搬入は学園祭の後に延期されたのだ。

 「あの時は、これ以上のトラブルは無いだろうと思っていたけどな」

 俊也は淡々と告げ、一点を見つめる。



 二人の視線の先には、学園祭で使用する大きなアーチが置かれていた。

 毎年、それを正門前に設置することになっている。

 アーチには「第 回 城陽学園祭」と書かれており、「第 回」の部分だけを張り替えて使用する。

 その度に新しく作っていたら金が掛かって大変なので、使い回しているのだ。


 昌彦と俊也がいるのは、体育館の横にある備品倉庫だ。

 彼らはアーチのチェックをするため、そこへやって来た。

 そして二人は、呆然と立ち尽くすハメになった。

 アーチの足元が、ポッキリと折れていたのだ。



 「どう見ても、壊れてるよな」

 昌彦の顔は引きつっている。

 「ああ、壊れている」

 俊也が静かにうなずく。

 「どうして壊れたんだ?誰かが倉庫に忍び込んで壊したのか」

 「どうかな、老朽化って可能性の方が高いんじゃないか。何年も前から使い続けてきたんだから。そりゃあ、いつかは壊れるさ」

 「だからって、よりによって今年じゃなくてもいいだろ」

 「運が悪かったとしか言いようが無いな」

 「落ち着いてる場合かよ。すぐに修繕しないと」


 「しかし、これ、修繕で済むレベルかな」

 俊也はアーチに近寄り、じっくりと見回す。

 「良く見ると、片方の足元が折れてるだけじゃなくて、もう一方もヤバそうだぞ。それに上の方も、かなり損傷が激しい」

 「おいおい、新しく作り直せっていうのか。そんな時間の余裕は無いぞ」

 「時間よりも、問題は予算だな。修繕で済ませるにしても、予算は必要になるし」

 「くそっ、仕方ない、加茂に頼むか。しかし、あいつが金を出してくれるかな。どうも無理な気がするが」

 昌彦は渋い顔をする。



 予感は的中した。

 「ダメだ」

 職員室へ行くと、加茂に一蹴された。


 「学園祭全体での予算は決まっている。それに基づいて、実行委員会で支出の計算をしたはずだ」

 「ええ、それはそうですけど」

 「新たな予算を捻出することは出来ない。最初に決められた予算の中から、やり繰りをするのが運営というものだ」

 「分かりますけど、今回の場合、緊急事態ですから。何とか追加予算を出してもらえませんか。職員会議にでも掛けてもらって、先生たちで相談してもらって」

 「その必要は無い。ダメなものはダメだ」

 加茂は、取り付く島も無い。


 「大体、緊急事態と言うが、それは君たちの怠慢が招いたことだろう。アーチのチェックなど、もっと早い段階で済ませておくべきじゃないのか。もう少し早ければ、追加予算の件も、何とかなったかもしれないのに。今頃になってアーチが壊れていました、修理するので追加予算を下さいというのは、虫が良すぎる」

 正論を突き付けられ、昌彦はグウの音も出ない。

 確かに、その通りなのだ。



 ただ、昌彦には彼なりの言い訳がある。

 本来、アーチのチェックは1年生の実行委員、黒崎に任せた仕事だった。

 ところが、その黒崎が、すっかり忘れていたのだ。

 「アーチの方は大丈夫だろうな」

 と、今日の会議で昌彦が問い掛けると、黒崎は

 「あっ、忘れてました」

 と呆けた顔で告げた。

 そこで昌彦は自分でチェックするため、俊也と共に備品倉庫へ赴き、壊れていることを知ったのだ。


 そういう事情はあるのだが、ただ、そんな人間にチェックを任せておいたこと、今まで確認を取らなかったことが悪いのだと言われたら、反論の余地は無い。

 だから昌彦は、納得できない思いを抱きつつも、何も言い返せなかった。



 「用事は、それだけか。だったら、こっちの用があるから、もう行かせてもらうぞ」

 加茂はそう言うと、セカンドポーチを小脇に抱えて立ち上がり、職員室を去っていった。


 憮然とした表情で立ち尽くし、昌彦が口を開く。

 「なあ、俊也。こんなにトラブルが続くってことは、ひょっとしたら俺、呪われてるのかな」

 「呪いねえ」

 「だって、おかしいだろ、ここまで幾つもトラブルが起きるなんて。絶対に何かあるぜ。あっ、おい俊也、男の厄年って何歳だ?それじゃないのか」

 「最初の厄年は数えで25歳だよ。っていうか、お前が厄年だったら、同級生はみんな厄年だろぞ」

 俊也は冷めた目で見つめる。


 「そうか、だったら、やっぱり呪いだな」

 「明らかに違うと思うぞ。だけど、気になるなら、お祓いにでも行ったらいいんじゃないか」

 俊也は軽くあしらうように言ったのだが、昌彦は真顔で、

 「ああ、そうだな。考えておく」

 と口にした。


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