兄妹の話。1
「僕は君達姉妹を見ていた。面白くてさ」
まただ。またこの夢。
「でも見てるだけじゃ物足りなくなってきた」
「憂...久しぶりだね」
隣には誰もいない。1人だ。
「そうかな?そこまで久しぶりでもないと思うけど」
「そうかも。...今度はどうしたの?」
「いや、用事という用事は無いよ。ただ、警告しに来ただけだよ」
「警告?」
「近いうちに、君達の当たり前は、当たり前じゃなくなる」
「どういうこと?」
「言葉のままだよ」
「あなたは、何?」
「僕は僕であって、また、憂でもある。違う言い方をするのなら...そうだな、まあ、君達の言うところの神様だよ」
「そうなんだ。そうだったとしても不思議じゃない」
「意外だな。信じないと思った」
「信じるよ。嘘を吐く意味がない。神様でも、私の考えてることすべてが分かるわけじゃないんだね」
すると、憂は苦笑して言う。
「そりゃあそうさ、神だって全知じゃない。そして、本当に傲慢で、自分勝手な物さ。ただ、うーん、そうだなぁ」
少し考えたあと、ピンと人差し指を立てて、
「君が瀬戸川律、ないし瀬戸川由莉のことを愛しているのはわかるよ」
と言った。
「そうだね、愛してるよ。律...お兄ちゃんのことも、由莉のことも」
「意外だ、恥ずかしがらないんだね」
「もちろん。誇りさえすれ、恥ずかしいことじゃないからね」
「ああ、ごめんね。僕から話を振っといてなんだけど、与太話はこのあたりにしよう。時間はあまりないのだけど、君の愛に免じて、そしていつも面白い君達に感謝して、一つだけ教えてあげる」
「なに?」
「瀬戸川由莉は明日中に事故に遭う。君が隣に居るときに、だ」
「それは、冗談?趣味悪いね?」
「いや、冗談なんかじゃあないよ。これは未来だ。可能性の一つだ」
「可能性?」
「そう、可能性。可能性は可能性でも、限りなく高い可能性だ」
「私が何かすれば助かる?」
「かもしれないし、そうじゃないかもしれない。わかる?」
「わからない。でも、心には留めてく。忠告してくれてありがとう」
「いやいや、僕の私利私欲のためだからね」
「私利私欲?」
そう尋ね返すと、質問には答えず、
「神様っていうのは、暇なんだ」
と、憂は言った。
「そんなもの?」
「そんなものさ。さて、もう朝になる。...個人的に応援はしているよ」
「うん、ありがとう。元気で」
「そっちこそ。...ああ、そうだ」
思い出したように憂は言った。
「また会おうね。今度はそっちで」
「...?うん。ぜひ」
その会話を最後に、私は目覚めた。
「夢...か」
違う。いや、夢だけど、多分、夢じゃない。
「由莉...!」
ベッドから飛び降りて、兄...由莉が寝ている隣の部屋へと走る。
由莉は、まだ寝ていた。
幸せそうな寝顔だった。幼くて脆くて、気づいたらどこかに消えてしまいそうな顔だった。
起こさないように、近くによって頭をなでる。
なんでだろう。泣きそうになった。悲しくもないのに、痛くもないのに、寂しいわけでもないのに。
サラサラとした髪が、私の手を柔らかく受け止めた。
「ねえ、由莉。大好きだよ。...ずっと、ずっと昔から」
ちいさな声で、呟く。起きる気配はない。
「由莉は、私が守るからね。だから...だから、ずっと一緒に居よう」
絶対に守ってみせる。今度は私の番だ。
今日はやけにお姉ちゃんが静かだ。それに優しい。
いや、優しいのはいつものことだけど、いつもの何倍も甘い。
その割に、表情は暗い。どうしたんだろう。
考えてても仕方ないし、聞いてみるのが一番早い。
「お姉ちゃん、なんかあった?」
「なんにもないよ?どうして?」
「なんか、今日のお姉ちゃん変じゃない?」
「そうかな?そんなことない...と思うんだけど」
「お姉ちゃん...その顔、お姉ちゃんが嘘ついてる時の顔だよ」
我が姉ながらなんてわかりやすいんだろうか。私の目をじっと見て、私どれくらい疑ってるか読み取ろうとする。
「顔で判断しないでよ...まあ、うん、はい。嘘です」
これ以上の抵抗は無駄だと判断したのか、お姉ちゃんは思ったより素直に白状した。
「もう、どうせバレるんだから余計なことしなきゃいいのに。それで?何があったの?」
「言わなきゃダメ?」
「ダメではないけど...言ってくれると嬉しい」
そう返すと、急に辛そうな顔をした。
今にも泣き出しそうな顔だ。
「お...お姉ちゃん?今日本当におかしいよ?」
困惑しながら、言葉を口にする?
「ごめん...。あのね、由莉。今日、あなたは事故に遭う」
意味がわからなかった。
「...どういうこと?」
「憂が、そう言ってた」
「憂が...?そっか」
一呼吸置いた。
憂が言うなら、きっと起こりうることなのだろう。それに、お姉ちゃんがそれをただの冗談だと判断していないのにも、何か理由があるはずだ。なら、元兄として言うことは一つだ。
「大丈夫。俺は死なないからさ。絶対、蒼空を1人にはしない。約束する」
そう言って、蒼空に笑いかける。
怖くないと言えばそれは嘘だ。でもそれ以上に、妹にこんな顔をさせて良いわけがない。
もう何度も何度も悲しませてしまっているんだ。これ以上悲しませてたまるか。
「だから安心しろ。な?」
「でも...」
まだ言い淀む蒼空を抱きしめる。
「こんな身体になってもさ」
もうこれ以上、蒼空を悲しませたくないんだ。
そう言った兄は力強く、でも、温かく私を抱きしめた。
その小さな身体には、これ以上ないほどの生命力と慈愛に満ちていた。
顔は見えないがきっと、兄さんは私を裏切らない。
そうわかっていたから私は、力強く兄を抱きしめ返した。
兄の存在を私に刻みつけるように。
自分の存在を、兄に刻みつけるように。
あけましておめでとうございます...!
一ヶ月以上更新できてなかった...!
...まあ二年くらい放置してたんで今更ですね!!!
のんびり書いているので気長にお待ちいただけると幸いです。
待てねぇよって方がもし万が一いらっしゃれば感想とかに「早よ続き書け」って送ってくださいよろしくお願いします。
感想を乞食いたところでまた次回。瀬野でした。




