第二十二話 気に食わない
「本当に大丈夫なの?」
「俺の家結構裕福だからな。小遣い多いんだよ」
梃徒と真澄は神戸に向けて、出発した。
荷物は最小限のものだけ。
とりあえず時間がなかったからだ。
新幹線で神戸までは片道で一万五千円ほど、時間は二時間半掛かる予定だった。
荷物をまとめた梃徒たちは、すぐに家を出たので、夕方に神戸に着き、そこから京コンピュータ前まで向かうので、十八時半ごろに目的地に着く予定だ。
「いや、お金もだけど、荷物だよ。碇君、まったく荷物ないよね」
「別に男なんだからなくてもいいだろ。それよりも俺のことは真澄でいい」
梃徒の真澄に対する印象は、この数時間でがらりと変わった。
彼のことを梃徒は粗暴で愚かな人、的な位置の人なんだろうと思っていたが、頼りがいのある人物だったらしい。
「真澄君は、どうしてそこまでして灘さんに?」
その理由はなんとなくわかっていたが、聞かずにはいられなかった。
そんな弱い自分を、梃徒は許容している。
「え? それは友達だからだよ。あ、ちなみに一応言っておくけど、友達っていうのはお前のことも入ってるからな。もう俺たちは友達だと思ってる」
「灘さんのことを、好きなんじゃないの?」
「は?」
真澄は梃徒に険しい顔を向ける。
「言っとくけど俺彼女いるぞ?」
「え、そうなの? 僕はてっきり――」
(よく絡んでくるから、灘さんといる僕が、気に食わないから突っかかってきているのかと……)
「俺が桿那のこと好きだから、お前のことが気に食わなかったって思っていたのか?」
「え、ええっと……」
「気に食わなかったのは事実だよ」
窓際に座っている真澄は外の景色に視線を移した。
「お前は、桿那がお前に向かっていっているのに、まるで相手にしてなかっただろう? なんかそれ見て、最低なやつだと思ったんだ。相手の気持ちでさへ自分の中で整理しちまう野郎だってな」
確かにそうだったのかもしれない。と梃徒は思った。
「でも、今日ちゃんと接してわかったよ。お前が本当はちゃんと桿那のこと考えてるんだってことがな。好きって気持ちが伝わってきた」
「そんなに出てたかな?」
梃徒は恥ずかしくなる。
確かに自分の気持ちは、固まった。
けれど、いきなりそれが漏れ出ていてはどうなのか。
「実はな。お前と両親の会話聞いちまったんだよ。トイレに行こうって思って、部屋を出たときにお前、いや梃徒が梃徒の父親と話してるのをな。なかなか、熱かったぜ。ああいうの聞いたらもう駄目だ。最後まで付き合わないと気持ちが悪い」
梃徒は、目を瞑った。
神戸まではまだまだだ。
これから長い夜が始まるのだろう。
そのためにも今は休息を取ろう。
梃徒は気が付けば眠っていた。
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