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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
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第88話 幻想武具

 ハルの武器だの技だの作る時ばっかりグーグル先生に頼ります。だってロシアあんまり知らないし。っていうかひらがなにルビ振るの手間かかる

 ~フォーリン・カーズ・上空~


 飛んでくるボウガンの矢を翼で叩き落としながらブラックは武器をワイヤーから拳銃へと持ち変える。


「がぁぁぁっ!」

「ったく、たいしたテイミング技術だこと! ドンだけエイム良いんだよあのドラゴン!」

「や、やっぱり」

「だから甲斐性だっての! 気にしなさんな、とと!」


 ヨミのほうへと叫んだ瞬間ブラックの頬を矢が掠める。青い粒子が頬から散るのを見た後、ブラックは銃口をドラゴンへと向けた。


「龍なら龍らしく牙と爪で戦えっての!」


 ここで狙ったのはドラゴン本体ではなく、その手に持ったボウガン。拳銃程度の貫通力ではドラゴンの鱗を貫通できない。のであれば、拳銃程度の威力でも十分な効果を発揮できるものを狙う。当然の帰結だ。


「うがぅっ」

「歯ァ食いしばって舌噛まないようにッ!」

「う、うん!」


 ボウガンが壊され動揺を見せたドラゴンを確認した後、ブラックはヨミに忠告した上で振り返り、そのままの勢いでドラゴンの横っ面に回し蹴りを打ち込む。


「ぐるぅ」

「っし、ここから」


 ブラックが追撃をかけようとした瞬間、その背の赤い羽根が打ち抜かれ体勢を崩す。


「んなっ!? どっから……」

「ちょ、ちょっと! 前! 前!」

「はっ?」


 思わず意識を逸らしたブラックに、ヨミが必死に肩をゆすりブラックがそれに応じて前を見ると、すぐ目の前にドラゴンの拳が迫っていた。


「ま、まず」

「っがぁぁぁぁっ!」


 打ち抜かれた羽根ですぐさま立て直せるわけもなく、ドラゴンの拳を諸に喰らい、ブラックは意識を失い、墜落していく。


「わ、わ、わ!」


 そうなると堪らないのはヨミである。拳の勢いのまま移動していくのは良いが、このままでは地面に激突そのままお陀仏。そんなのは誰だって嫌だ。

 墜落していくのをどうにかしようと思ってもヨミにはどうすることも出来ない。あわや激突というところでヨミは目をつぶる。が、衝撃は来ない。


「はぁ、我が弟ながら詰めが甘いといいますかなんとも」

「へ……?」


 涙目のヨミが目を開けると未だ空の上。気絶したブラックと一緒に何者かによって小脇に抱えられている状況だ。視線を横にずらすとまず目に映るのは紫色の粒子、それを発する翼。

 次に目に映るのは風になびく内側に巻く癖気の茶髪に所為を感じぬ両性的な顔。釣り目と髪を除けばブラックとよく似ている。


「さぁて、エレメンツが舐められても困りますしー。マスター直々にぶちのめしますかねー。イベント呼びに来ただけなのに厄介だなもう」


 ―――――


 ~フォーリン・カーズ・通路~


「はっはー、手が出せないようだなぁ、ハルとやら! こういうのを俎板の上の鯉、と言うんだろうな!」

「俎板の上に置いたまま包丁を一つも入れられない料理人は迷わず廃業だと思うけどな……」


 ハルは段々とだれてきていた。理由は簡単で、無傷でかっこいい攻略法が一つも思いつかないからだ。ハルの師匠であるローゼなら矢を躱しながらヘッドショットだの、矢を受け止めて銀杏返しで仕留めるだのやりそうだがハルにそこまでの技能はない。肉を切らせて骨を絶つぐらいしか実現できそうなものがないのがもどかしい。

 今度緊急用の銃を用意しとこうと考えつつ合計127本目の矢を切り払ったハルは片手剣も取り出して覚悟を決める。


「破れかぶれな二刀流なぞッ!」

「(ここっ!)」


 突き出す槍はそらされ、肩口からハルの右腕は切り飛ばされる。瞬間、ハルの脳裏に浮かぶのはローゼとの特訓の1ページ。

 その時ハルはローゼの弾幕を掻い潜り、ライフルを切り飛ばすことに成功していた。


『っ』

『っし……!』

『残心!』


 瞬間、獲物がライフルから高周波ブレードに切り替わり、コックピットを突かれ、モニターには【RANK2:ROSES NOBLES'S WIN!】と表示され、待合室へと転移する。


『うげー、油断したー』

『あのだな、勝って兜の緒を締める。これはどんな勝負事にも通じる言葉だぞ?』


 そして今はっきりと思い浮かぶのは次の言葉。


『誰だって自分の思い通りに物事が動いたら気が緩んでしまうものだから』


 この後にはだからこそその緩みは最小限にだとかのお小言が続くのだが、今はその当たりは関係ない。

 今大事なのは、目の前のもう既に首を切り飛ばしたリードは盛大に気が緩んでいた、と言うのが大事なのだから。

 左手で逆手に持った片手剣を順手に持ち直し、飛んで来た矢を切り飛ばす。その時ハルに違和感が走る。


「(ん? 利き腕じゃないにしてもやけに矢の勢いが強いが)」


 ハルがそう感じた次の瞬間、切り飛ばされた右腕の肩口に矢が突き刺さった。


「うぐぁっ……!?」


 ハルは激痛に顔を顰めながらも右の矢の飛んできた方を向く。そこには明らかに先ほどのリードとは格の違う二刀を提げた男が左手に弓を持って矢を射ったままの体勢で佇んでいた。


「(……マジかよ、タイミング悪いにも程があんだろ。せめて右腕を残しておくべきだったか?)ハッ、勝って兜の緒を締めろ、俺も心得てたはずなんだがなぁ」

「……参る」


 次の瞬間にはもう踏み込み、二刀を引き抜いていたその男の一撃に、ハルは正確に一撃を合わせる。だが、そこまでで、後には続かない。いくら正確に二刀を打ち払えようと、圧倒的に手数は足りず、いくら足を交えようが、頭突こうが、こちらは利き腕を失い、向こうは五体満足。それには変わらない。そして。


「(おっも……)」


 一撃が先ほどまでとは比べ物にならないほど重い。それが一番ハルを追い詰める。先ほどは目の前の男が援護していたようで、矢は飛んできてはいない。だが、先程より良い状況、といえるのはそれだけだ。

 一歩ずつ、一歩ずつ後ずさり、とうとう、左手の剣が弾かれる。


「ッ」

「貰う!」


 二刀の交叉、その一撃をどうにか防ごうとハルは。


 漆黒の【右腕(ナクシタバカリノモノ)】を突き出した。


「「!?」」


 二刀の一撃を弾いたその行動に、ハルも二刀の男も目を見開き、驚愕する。そしてハルはいち早く意識を戦闘に戻し、二刀の男の顔面を殴り飛ばす。そして、ハルは右腕を一本の棒を擦るように虚空を動かしながら唱える。


黄昏(プラヴェーヤ)(ルカ)右腕(スミレク)! 抜剣、断隆剣、サモセック!」


 その右掌の軌道に沿って一本の剣が現出し、丁度持ち手が現れた瞬間にハルは右手を握り締め、最上段で振りかぶる。


「まさか、幻想武具(イマジナリーウェポン)……!?」

「知った、事か!」


 そのまま驚愕の顔を浮かべる二刀の男を切り伏せると、サモセックは消え、漆黒の右腕は元のハルの右腕に戻る。


「はぁ、名前、聞き忘れた」

「あ、いましたいました探しましたよー」

「ん?」


 そしてハルが地面に突き刺さった片手剣を引き抜くと、後ろから声がして、そちらのほうへ振り返る。


「中々苦戦したようで。右腕、落ちてあれ? なんでお前右腕二本あるんですか?」

「あれー……?」


 そこにいたレイヴンの言葉でそこでハルはまじまじと自分の腕を見る。


「肉を切らせて骨を断つの精神でくれてやったはずなのに。黄昏の右腕の時また生えた?」

「プラヴェ……? ロシア語ですか? ま、あるんなら右腕いらないか」

「……それでも投げ捨てんなよ混乱招くだろうがよ」


 ポイッ、と自分の右腕を投げ捨てるレイヴンにハルは苦言を呈し、そして右手でレイヴンの抱えた気絶した二人を指差す。


「で? 俺が逃がした二人がどうしてそんな状況になってんだ」

「あ、ハルがコイツ逃がしてたんですねー。通りで。ま、油断してドラゴンのパンチまともに喰らいましてバタンキューといいますか。レ……ブラックのほうは」

「そっちは?」

「助けた時ブラックに抱えられてたのを纏めて抱えてたんですケド。ドラゴン倒すのにちょっと、短時間だけですけど放り投げまして」

「はぁ!?」


 レイヴンの言葉にハルは目をむいた。当然過ぎる。路地裏で男に壁ドンやられてただけでも相当怯えていたのだ。まかり間違っても紐無しパラ無しスカイダイビングなんぞさせてはいけない存在だ。


「おまっ、何考えてんだ!? 女が皆が皆、お前の彼女みたいな豪傑じゃないんだぞ!?」

「ご、豪傑!? 言うに事欠いて人の彼女豪傑っつった!? あんな出来た子そういないって!」

「いやだって普通の女子高生は不良2ダース全滅させたりしねーもん!」

「はあ!? 正確には23人ですー! 2ダース言ってませんしー! 僕ならこの10倍は固いですしー!」

「俺だってその9倍は固いよ、でもな? その23人全滅させた瞬間普通の女子高生の枠から外れるんだよ!」

「……この話決着つきませんし後回しません?」

「……平行線だもんなぁ。ま、いいや。で? 何で俺探してた」

「おっと。すみませんすみません」


 ゴホン、とわざとらしい咳払いをしてレイヴンは姿勢を正す。


「砕星龍戦が明日でして。参加願おうかと思いましてね、エレメンツ、クランハンドレッツのあなたに」

「二人称、安定させろよ」


 レイヴンのいつも通りの胡散臭い笑みにハルはため息をつく。


「いっつも発信機程度の役割しかこなしてないでしょう? たまには全力の貢献を、ね?」

「別にロゼも明日明後日いないからいいけどさ、トール戦、肝が冷えたぜ。お前セリー連れてくから」

「いやお前連れてったら同じギルドってばれるじゃないですかー。それは避けたかった」

「同じガッコってばれてるのに俺連れてかないってのは不自然だろ? ま、ロゼもなんか別のことに気ィ取られてたのか気付かなかったけど。まあ今いる町ぐらいしか教えてないけど後ろめたい」


 ハルが槍を拾いながらそういうとレイヴンは先ほど投げ捨てたばかりの腕を拾い、蹴り飛ばしながらフォローする。


「そういうスパイやらせるんならお前使ったりしませんよ、と。別の人材使いますって。義理堅い人間に恩人裏切らせたりはしませんよ」

「ならいいけどさ」


 素直にレイヴンの言い分を信じ込んだハルは槍と剣をインベントリにしまいこみ、レイヴンに向き直る。


「で、だ」

「はい」

「今までナンパしててさ、まともな子その子だけだったんだけどさ。御祓いとか、出来ない?」

「島根行け」


 バッサリ切られた。

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