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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
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第70話 日本語喋れるのに

 あぁ、まだリアルの方面の話が終わらない。登場人物が勝手に動きすぎる

  ~東広島市~


 あまり車の走っていない山の中を赤いクーペが走る。日はまだ高くなく、木の影が走るクーペに映りこむ。


「あのね、君たち。君たちさ、基本バイクで通ってるでしょう? なんで俺が送り迎えしないといけないのさぁ」

「す、すいません、教授、バイクのエンジンがイカれちゃって」


 運転する葉楽が後部座席をじろりと見る。そこには林音と章浩が乗車していた。


「でも瀬尾さんもいつも送り迎えしてるじゃないですか」


 章浩は灰羅の座っている助手席を指差しながら言う。


「外に連れ出した責任というのもあるんだよぉ?」


 葉楽は助手席で座り眠っている灰羅をちらと横目で見た後、カーブを曲がるためにハンドルを切る。


「こいつの身長じゃあ車運転するのも難しいし、バイクなんて以ての外だからねぇ。だからといって、3時間掛けて電車とバスで通学させるわけにも行くまいさぁ」

「下宿って手があるじゃないですか」

「こいつはほぼ確実に寝坊の常習犯になるよぉ?」


 山の中、といった感じの周りの風景から森が消え、街路樹とアスファルトで舗装された地面、それと鉄筋コンクリートで作られた建物が立ち並ぶ。赤いクーペの前の信号が赤へと変わり、葉楽はブレーキを踏んで停車し、後ろを振り向く。


「それよりも、今日はあまり迷惑を掛けさせないでよぉ?」

「えっと、それは我々よりも女子に言ったほうがよろしいかと」

「言って聞くなら言ってるってぇ。今日は一人増えるからねぇ。更に姦しくなるのさぁ」


 葉楽がため息を一つつくと、信号が青く光ったので葉楽はアクセルペダルをゆっくりと踏み、エンジンの音を小さくして走らせる。


「へぇ、教授の知り合いですか。誰です?」

「章浩。君なら見たら分かると思うよぉ?」

「……SOEGメンバーの一人ですか?」

「そうだねぇ。このクーペの送り主さ」


 葉楽はポン、とハンドルの縁を指で叩いた。


 ―――――


 ~白南大学・構内~


「いや、本当にありがとうございます」

「まあ、言ってしまえばついでだしねぇ。ほら、灰羅起きなってぇ」

「んぅ」


 大学の駐車場に車をおきエンジンを止めると、葉楽は隣で寝ている灰羅の側頭部を手の甲で叩き、シートベルトを外して車から降りる。


「……着いたの」

「体力付けろ。目指してるものからして体力が足りないよぉ?」


 葉楽はそう言うとドアを閉めてゼミ室へと向かおうとする。その時、ふと、違和感を感じた。


「―――ッ!?」

「きょ、教授!?」

「暗殺者!? それとも拉致しにでも!?」

「……どこから?」


 葉楽が何かを察知して飛び退くと、今さっきまで葉楽が立っていた位置に投げナイフが突き刺さる。それを見て林音と章浩は慌て始め、灰羅は寝ぼけ眼を擦りながら犯人を捜す。


「まったく……ご挨拶だな、エル!」

「Guten Tag, glaube ich, daß ein Luck nicht stumpf ist」


 葉楽が投げナイフが飛んできた方向に怒鳴るとその方向にいたのは、栗毛でショートカットの白人女性だった。ただし、電灯の上に立っているあたりかなりの変人であることが伺える。


「鈍ってない? いやその前に言うことがあるだろう!?」


「ドイツ語で話しかけられてるのに日本語で返した!?」

「え、あれドイツ語?」

「あんたフランス語取ってるものね」


 日本語で平然と返す葉楽に林音が驚きの声を上げ、章浩がとぼけたことを言う。灰羅はその中でこの会話に対する違和感を多少ながら感じ取っていた。


「Das, was ungefähr geredet wird, es ist du, daß du mir keinen Kontakt gabst!」

「関係ないだろうが!? もし当たったらどうする!?」

「Es ist Frieden zu jedem Preis Verstand-fertig」

「割とスリリングな生活を送ってるよ! ていうかそもそも!」


「お前日本語喋れるのにわざわざドイツ語でしゃべんな! 理解できてない奴もいるんだぞ!?」

「いやぁゲルマンって分かってもらうにはこうやってアピールするのが一番じゃない?」


「「えっ」」


 葉楽の言葉に答えるようにエルと呼ばれた女性が日本語で返すと、林音と章浩は呆けた声を漏らす。


「あぁ、そういうこと……日本語で喋ってるのに平然とドイツ語で話してるから違和感がやばかったのね」


 そして灰羅の違和感も自然と解消される。


「あら、よく見たら男の子二人に女の子一人がクーペの中に。ラック、あんまり私があげた車を汚さないで欲しいな」

「俺はちゃんと車内飲食禁止にしてるっつの。ってか君言えた話じゃあないだろ」

「食べかすとかじゃないんだけどな」

「はあ? じゃあ、何さ」

「ナニの体液」

「殺すぞ」


 エルと呼ばれた女性は電灯から飛び降りると、着地の際にほんのり赤い光の翼を開き、着地の衝撃を和らげた後光の翼を畳む。そして葉楽の傍へと近づくと葉楽の顎を持ち上げる。


「相変わらず固いのね。もうちょっとユーモアがあってもいいと思うな」

「キミこそ女性なんだからあんまりそういう下品なジョークをやめておいたほうがいい」


 エルと呼ばれた女性は上目遣いで、葉楽は見下すような形で互いの顔を見つめる。


「まあ、そんなところも嫌いじゃないんだけど」

「そうさね。俺も自分のこんなところが好きだよ」

「あら」


 エルと呼ばれた女性は葉楽の顔を自らに近づけてキスしようとするが、葉楽はその手を払いのけてそれを阻止すると、クーペの中の3人のもとに向き直る。


「まあとりあえず君ら講義の時間だろう? 話なら後でする。さっさと行って来い」


 ―――――


 ~荒戸ゼミ室~


「……ああ、マジに来たのか」

「ずいぶんな言い草ね。アンタが講義が終わってからにしろっていったのに」


 夕方、灰羅がまず最初にゼミ室に入ると、葉楽は嫌そうな顔で灰羅の顔を見て、灰羅は仏頂面のまま言い返す。


「いやあ、同じ学科なはずなのにレベルの違いをさまざまと見せ付けられますよねぇ。なんであんな速度の講義内容纏めながら質問できるんだあの教授一時間でノート7・8枚ざらなのに」

「ぼ、僕のほうは学科違うから問題ない……ボッチで寂しいけど」


 そしてそれに続いて章浩がひょこっと顔を出した後そのままゼミ室に入ってきて、林音もそれに続いて部屋に入る。


「ふぅ、やっぱり捜索願い出てた。あぁ、なんで卒業した後もこいつの世話を焼かなくちゃならないんだろう……」


 葉楽がそういいながらドイツの大学への連絡メールを送ると、ゼミ室の隅に不自然に詰まれた衣服の山がもぞ、と動く。


「ま、まさか……」

「そのまさかだよ全く」

「アンタに類は友を呼ぶって言葉を送ってあげるわ、葉楽」

「よう類、キミ他人の事言えると思ってんの?」


 そのまま衣服の山の揺れは大きくなり、衣服の山が吹き飛んだ後、エルと呼ばれた女性が飛び出す。


「うんうんいいねぇいいねぇ! 相変わらずいい香水センスだよ!」

「ただ薔薇の匂いのから気に入ったの買ってるだけだがな」

「ちゃんと自分の体臭に合うの買ってるからね! 鼻が曲がらないしむしろ嗅ぎたい!」

「うるせぇよ馬鹿」


 葉楽はズズイと近寄ってくるエルと呼ばれた女性にチョップを入れると、ゼミ室の椅子に座る。


「まあいいさ。てか自分の名前ぐらい名乗りなよ。子供じゃあないんだから人にいつまでも紹介させんな」

「えぇ、どうしよっかなぁ」

「ゲルマンは責任感が強いって聞いたことあるんだけどなぁ……ッ」

「人それぞれだよ? そんなの」


 エルと呼ばれた女性は頭を抱える葉楽に笑いながら声を掛けると、灰羅達のほうへと向き直る。


「まあ、名乗り遅れたのは本当のことだし、しよっか。私の名前はエルミーラ・フリードリヒ。ドイツ生まれのクォーター。まあ4分の3はゲルマンの血流れてるからね。あんまり気にすることは無いかな。専攻しているのは量子物理学。そこにあるのにそこに無いとか研究してて面白いんだよねぇ。磁場みたいなもの、って言ったらわかるかな。実際運動エネルギーは与えるしそこに存在することは確かなんだけどね、それを存在を証明する証拠が正直電子の運動に干渉するって程度のことで、存在しているとははっきりいえない」

「ずれてる!」


 エルミーラと名乗った女性の話がわき道にそれた瞬間葉楽が怒鳴る。


「えぇ、パラレルワールドの方がよかった?」

「そこじゃない、今は君のことを説明、って言うか紹介してるんだろ!? なんで量子物理学の話してんの!?」

「私から量子物理学のことを切り離して話すことは難しい!」

「さっさと戻れ!」

「はぁい」


 エルミーラは葉楽の叱責を受けてまた灰羅達のほうへと向き直る。


「あ、あとラックと一夜を過ごした仲ですよ? 同じベットの中、同じ屋根の下でね」


 時が、止まった。

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