第68話 義手ですよん
ノリと勢いで描写してるしパーソナルデータとかもういらないんじゃないかな
~ホテル・ビハインド~
【ホテル・ビハインド】。広島県の海沿いにある竹原付近に存在する高級ホテル。街の喧騒とは離れ、静かな一時を提供、中のレストランはイタリアン・フレンチ・和食・中華(上海)それぞれの名店を取り揃えており、取れた手の新鮮な海の幸を使った料理を楽しめ、どのレストランからでも瀬戸内海を一望できる。無人島や近くのフェリーでしか行き来できない孤島が見えるため広大な海、とは言いがたいが、穏やかな雰囲気で食事が出来る。もちろん部屋も一流の家具が取り揃えられており、各種ルームサービスも充実。ホテル内のレストランの料理をデリバリーしてもらうことも可能。
唯一の欠点は人里から離れすぎている所為で観光には滅法向かないことであるが、主な客層は観光目的ではなく休養目的の金持ちであるため、常に黒字をたたき出す高級ホテルだ。
葉楽はそんなホテルの駐車場に深紅に染められたドイツ製の右ハンドルに(無理やり且綺麗に)改造したクーペを止め、カーナビゲーションから携帯に延びたケーブルを抜き携帯を黒い背広の内ポケットに収めてホテルの中へと入っていく。
そしてホテルのフロントカウンターに向かい、コンシュルジュに話しかける。
「すみません、予約していた荒戸ですが」
「ああ、はい、ええと」
コンシュルジュは手持ちの端末を操作して【天道 歩・荒戸 葉楽】と記載してあるページを見つけ、予約内容を確認する。
「荒戸様ですね、【Aqua Pazza】の予約席へとご案内します。天道様はまだ来ておりませんが」
「ならロビーで待ってますよ。どうも」
葉楽は会釈をした後踵を返し、外の様子が確認できるソファーを見つけそこに座る。ネクタイを締めなおしながら左手首に巻きつけた腕時計を確認すると待ち合わせ時刻の30分前。
いくらなんでも早すぎたか? とか何とか考えながら携帯を取り出し操作し、SOEGメンバーのエルミーラから届いた【明日には日本に着く】といった内容のメールを見てため息をつく。
「はぁ、学会までまだ子半年あるのになんでまたこんなに用事が相次ぐ」
現在7月の中旬、葉楽が出席する予定の学会は12月の下旬であり、発表する内容はもう既にデータに纏めているためすることは無い。が、学会前後に交渉事が相次ぐ為に学会付近=多忙の式が成り立つ。
モニタと睨めっこしながら葉楽がスケジュール調整をしていたその時、玄関前に黒塗りの車と深蒼のバイクが止まる。バイクから降りたライダースーツの人物はヘルメットを脱ぎシートに置くとハンドル付近の機械を操作しバイクをどこかへと転移させる。
「へぇ、空間連結、実用化まで進んでいたのか」
葉楽はエルミーラが無邪気に見せてきた論文を思い出しながら感慨深そうに呟く。
転移の際の光が晴れるといつの間にか服装が変わっており、黒いズボンに真っ白なドレスシャツと黒いチョッキを着用し、青いロープタイを締めていた。そのチョッキの茶色い軽度の天然パーマがかかった人物が黒塗りの車のドアを開けるとその中から深紅のスーツを着用し、漆黒のシルクの手袋をつけた人物が降り、その後に続くように黒服の金髪の人物が降りてくる。葉楽がようやく見覚えがあると分かる人物が。
「……え、ハル? 何やってんのアイツ」
車から降りたハルは手の中に持つ何かを訝しげに弄りながらバイクに載ってきた人物とは逆側に、深紅のスーツの人物の横に立ち、ロビーへ向かって歩いてくる。
「えっと、どうも、脳科学者の荒戸です」
葉楽が混乱した頭からようやく搾り出せた言葉は自己紹介の言葉だった。ロビーに入ってきた深紅のスーツの人物はその言葉を聞くととても人のよさそうな笑みを浮かべる。
「貴方がドクター・荒戸ですか。お会いできて光栄です」
「い、いえ、ドクター、では無くプロフェッサーでお願いしたいと。一教授、ですから」
「ああ、それは失礼。プロフェッサー・荒戸。自分は天道歩。天道コンツェルン代表取締役をやっております。まあ、部下が優秀なのでほとんどやることがありませんで、こういう大事な時だけ顔を出して片田舎で喫茶店のマスターをやっております」
そういいながら差し出された手を葉楽が握手しようと手にとると、手首から先がいきなりすっぽ抜けた。
「~っ!?」
葉楽は更に脳の処理が追いつかない出来事が起き、脳の発声する部分が上手く動作していないのか、戦慄の悲鳴をあげようとするも、口から息が漏れるだけで声にならない。
「ふふ、義手ですよん。いや、昔防衛隊の特捜チームに勤めていまして。名誉の負傷ですよ」
歩と名乗ったまだ若々しい男性はいたずらが成功した子供のように無邪気に笑い義手を元に戻しながらネタ晴らしをする。しかし、葉楽の頭の容量はパンクして上手く感情が表れない。見かねたハルが歩を諌める。
「おやっさん。ロゼが固まってる。多分俺と輝がいる時点で頭追いついてないんだから、畳み掛けない」
「まあ、確かに義手の流れはまずかったかもねぇ」
肩を竦めながら苦笑する歩を尻目に、チョッキの人物が一歩前に出て微笑みながら右手を差し出す。その姿はよく見るとネットの中で出会ったレイヴンそのものだった。
「どうも、ローゼ。いや、荒戸さん。レイヴン・クロウ、水野輝です」
「え? あ、ああ、よろしく」
葉楽は差し出された手を見ると、そこにはまだライダーズグローブがはめられていた。葉楽が手をとるべきか迷っていると、輝ははっとした顔で右手のグローブをはずす。
「ああ、失礼。いつもはあまり握手をしないもので。それに、さっきの今ですもの」
「確かに、そうだよなぁ」
葉楽は苦々しげに呟く。そんな葉楽の様子に苦笑しながら輝は両手で葉楽の右手を無理やりとって包み込む。
「まあ、以後もよろしくお願いしますよ? プロフェッサー」
「あー、教授って呼んでもらったほうが良かったかなぁ」
なんとも言いがたい表情で葉楽が肩を竦めると、歩と輝がどちらとも笑い出す。そんな二人を横目で見ながら、ハルは3人を急かす。
「バイトの身分で言うのもなんだけどさ。まだ昼飯食ってないんだ。お腹空いてるし、早くレストランに行こうぜ、おやっさん、ロゼ。それに、この場で商談とでも行くのかい?」
ハルの言葉に歩は笑いを止め、ゆっくりと瞬きして葉楽を見据える。
「そうだねぇ。それじゃあ行きましょうかプロフェッサー・葉楽。ここのレストランはどこでも一流だ……大蒜、大丈夫です?」
「ええ、まぁ。食べられないものが無いことが自慢でして」
「それは重畳。オイルスパゲッティが絶品なんですよ。フェットチーネは……」
「「クリームに限る」」
声を揃えるように放たれた葉楽の言葉に歩は眉をあげる。
「へぇ。同意見ですか」
「それはもう。平麺にはあまりギトギトしているオイルソースは合わない……しかし、あっさりしたスープパスタは直ぐに伸びてしまう。かといってミートソースなんかの厭くまでソースが主、というのも少しもったいない。ならば、一番あうのはクリームしかありえない」
葉楽の説明に歩は口角をゆがめる。
「そこまで意見が同じとは。楽しい食事になりそうだ」
歩はそういうとエレベーターへと向かっていく。それに追従するように葉楽達もエレベーターへ向かう。
「なあなあロゼ。フェットチーネって何だよ」
「きし麺のパスタバージョン」
「ああ、そういやひらめんっつってたなぁ」
その途中で葉楽はハルにかなり簡潔に間違った情報を流していたが。
前置きだけです。やべぇ葉楽灰羅が自分の中でかなり落ち着いたほうのキャラだということを急速に自覚する。レイヴン出ると文字数あっという間だこれ




