↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
59/131

第58話 Persistent

 この小説を友達に読ませた時、説明が胃にもたれるといわれました。でも説明をくどいほど書きます。だって書きたいんだもん。後前回が特殊だっただけで本来は今回がクリエイト・ワールド外の話予定でした。え? コロナ戦わせたかっただけ? さぁ、聞こえないなぁ

 ~市街地ステージ【シティランジ】~


 夜闇に染まったビル群の間、窓ガラスの中に明かり一つ灯っていない中、銀と赤の混じった影が疾走(ハシ)り、それを深紅の影が追う。


「チッ、ストーカー野郎が!」

「仕方ないさね、ローゼス! 俺ァ近接格闘しか出来ないもんでね! Do you understand!?」


 銀と赤の影の機体、ノーブルナイトを駆る男、ローゼス・ノブレスは背後の深紅の機体、サンブレイドを駆る男、コロナ・フェンサーに向かってミサイルを放ちながら吐き捨て、コロナ・フェンサーは自らに向かって飛んできたミサイルを切り払いながら笑う。


「くそっ、エイトランカー相手だとどうしてもミサイルが効き辛い!」

「アンタの誘導プログラム、かなり優秀だからな。こうやって切り払ったりそもそも効かないとかじゃないと必ず当たっちまうし。だからこそあんたに勝つには俺とか、レイヴンみたいなのが!」


 コロナ・フェンサーは叫びながら目を剥くと、フットペダルを力強く踏み込み、サンブレイドを急加速させ、ノーブルナイトへ接近する。


「Year Haaaaaar!」

「Do not come here while you talk bad boy!」


 コロナ・フェンサーはレバーを操作し、サンブレイドはその手に持った大剣を振り被り、振り下ろす。

 ローゼス・ノブレスはレバーとフットペダルを操作してノーブルナイトを反転させ、機体の腰に携えた超振動割断剣(インパルスブレード)を引き抜き起動させ、大剣相手に打ち合い始める。

 打ち合いの最中、ローゼス・ノブレスはサンブレイドをロックオンしたことを確認した直後、フットペダルを全力で踏みタックルのような形でサンブレイドにノーブルナイトを突進させ、まともにタックルを貰ったサンブレイドは体勢を崩しながら地面へと墜ちていく。


「Wow! タンノシィーッ!」

「Ha! この危険中毒者(スリルジャンキー)が! こいつはサービスだ、取っとけ!」


 ローゼス・ノブレスはレバーのトリガーを引いて狂ったように高笑いをしているコロナ・フェンサーに向かって機体の肩部に詰まれたコンテナからミサイルを発射し、背中にマウントされたライフルを無造作に引き抜いて乱射する。


「おおっとぉ! 自由落下に身を任せてちゃあ駄目かぁ!?」


 しかしコロナ・フェンサーもランク1の名に恥じず、ミサイルを落ちながら全て切り払い、ライフルの弾丸は真横に避け、ビルの壁を蹴り上げながらローゼス・ノブレスへと近寄る。


「Year! How are you now!?」

「Persistent!」


 居合いのような形で繰り出される剣戟をローゼス・ノブレスは剣で受け流し、ローリングソバットのような形でコロナ・フェンサーを蹴り飛ばし距離を取ろうとするが、コロナ・フェンサーはレバーを思いっきり手前に引きながらフットペダルを踏み込み、サマーソルトのような形でその蹴りを躱す。


「ハァ!?」


 ローゼス・ノブレスの表情が驚愕に染まった瞬間、ローリングソバットの体勢でいたノーブルナイトの突き出したままの右足が切り落とされた。


「んなっ!?」


 ローゼス・ノブレスは思考を意図的に暴走させ、思考する時間を無理やり取る。

 ―――剣の攻撃は受け流したはず―――

 受け流した以上は体勢は崩れる。居合いのように繰り出した以上、空中にあるため偶力が働きサマーソルトにスムーズに移れた。それは分かる。理解できるし納得できる。スラスターのついたロボット同士の戦いだ。再現しようと思えば自分でも出来る。ただ驚いたのはタイミングがドンピシャ過ぎたと言うだけで、動き自体には不思議な点はない。まだサンブレイドは反転した状態だ。この状態で手に持った巨大なブレードでノーブルナイトの右足を切り払えるか。

 答えは否。ロボットとはいえ、いや、ロボットだからこそ間接の稼動範囲は決まっている。ロボットの素材は基本的には金属だ。金属には弾性と硬度があり、そのバランスによって剛性が決まる。耐え切れる圧力というものがあるのだ。そして人を乗せられるほどの大きさのロボットは、その巨体故に生まれる自重に耐えなければならないので、人間には出来てもロボットには不可能な動き、というものが発生する。

 そこまで考えたローゼスノブレスの視界にあるものが映る。サンブレイドの爪先から伸びる光、プラズマを示す青白いそれ。


「仕込レーザーソードだとぉ!?」

「御明察! もっとも、使うのはあんたが初めてだがなぁ!」


 そのままサンブレイドは滅茶苦茶にバーニアを吹かし、錐揉み回転して爪先のレーザーソードと手に持った大型超振動割断剣(インパルスブレード)でノーブルナイトに切りかかる。

 ローゼス・ノブレスはしばらくの間下がりながら剣戟をいなしていたものの、大型超振動割断剣(インパルスブレード)で手に持ったブレードを弾き飛ばされた次の瞬間にレーザーソードで胸のコックピットを貫かれる。その瞬間にコックピットモニタには【CORONA FENCER WIN】と表示された。


 ―――――


 ~AM待機室~


 ローゼス・ノブレスこと荒戸葉楽は凹んでいた。自棄酒した後潰れた灰羅を家に送り届け、帰ったら憤怒の表情で浪士の襟元を掴んで引きずっている朱里を見なかったことにして、多少アルコールが残っていた状況でAMを始めた自分について、更に、剣一本だけなんていうどこぞのエレガントな決闘用の機体でもないのに武装はそれ一つだけと思っていたこと。咄嗟にローリングソバットなんて隙だらけな技を使ったこと。その全てに自分が嫌になる感覚を覚える。仮想空間の椅子に座り、メットを脱ぎ捨て、膝に肘をつきながら手を組み、組んだ手に顔を押し付ける。


「……あ“ー」


 葉楽は腹の底から声を震わせる。嫌悪感。圧倒的な嫌悪感。それが葉楽を支配していた。先日かららしくないミスばかりだ。時計塔にいた時なら……変わった理由は? 出会い? いや、違う。葉楽は頭を振る。理由は分かり切っている。記憶。失われたそれがいまさらになって目の前に現れて、自分でもどうしたいのか整理がついていない。そもそも葉楽の功績として挙げられるRE:mapping法。今では主にアルツハイマーを治すためとして使われているそれ。元々は葉楽が記憶を取り戻すために研究していたものだ。

 エピソード記憶と手続き記憶というものがある。これら二つの記憶は脳の別々の部位で記憶される。それを利用し、生きるために必要な手続き記憶の時に動作する脳の部位を記録し、そこ以外を全部健常者の脳神経の配列に並べ替えるという完璧に頭のいかれた方法を思いついたのだ。しかしこの方法はエピソード記憶は失われる可能性のほうが高かった。損傷した神経を並べ替えるだけで脳細胞を傷つけるわけではないがその並び自体が記憶の元と論じられていたこともあった。結論から言うと脳神経ではなく脳細胞に記憶は封じ込まれていた。しかし、それは失われたエピソード記憶は取り戻すことは出来なかった。まるで一度消去されたコンピュータのデータをリカバリしても取り戻せないように、記憶は取り戻せなかった。

 結果的に葉楽にとってそれは益となった。怖くなっていたのだ。失われた自分に。恐怖していた。それにアルツハイマーの治療法として最適で、その特許料だけで、その研究についての本を一・二冊書けば一生遊んで暮らせるほどの凄まじい功績だった。何しろ、健康な頃の脳の状態さえメモリーしておけばメモリーした時とアルツハイマーになるまでの期間の記憶は失われるとはいえ、実質アルツハイマーはほとんど人類にとって無害な風邪のような認識にまで陥るほどの画期的な研究だった。

 しかし、葉楽は恐ろしくなった。他人には問題なく効果を発する、異星人、マウス、挙句の果てには小型の怪獣。そんな存在にまで効くそのRE:mapping法は葉楽の脳には何の影響も与えなかった。RE:mapping法を施す前、施した後、どちらの脳のデータを見比べても違いは見当たらなかった。

 その頃からだろう。葉楽が過去に恐怖し始めたのは。葉楽が自分を信用できなくなったのは。SOEGのメンバーである女性の量子力学者は電気を操る能力が干渉したのだろうといった。しかし、葉楽は知っている。立ち会って、直に見ているのだ。脳の生体電流を増幅して放出する異星人に対してもRE:mapping法は問題なくその効果を発揮したことを。

 葉楽だってSOEGなんていう天才科学者軍団に籍を置く身だ。その可能性を考えてその異星人の死刑囚を使って実験をした。そして、それは問題なく作用した。凶悪と噂のその異星人は無邪気な笑顔となり、元の凶悪な人格は消去されていた。人格を消去できるほどに、使いよう次第ではその人間を根本から破壊できるほどRE:mapping法は強力だ。だが、葉楽には作用しなかった。一欠けらも、だ。


 そんなものでもこじ開けられなかった記憶が今、蘇りかけている。葉楽がそれを知ろうと動いているのは、その記憶へ、未知へ、恐怖しているからだ。まるで深遠に潜む混沌のように、這いずって、這い寄って、葉楽の足に絡み付こうとしている。

 記憶を取り戻したほうが幸せなのか、取り戻さないほうが幸せなのか、それは判断がつかないことだ。時と場合による。少なくとも今の葉楽に聞けば欠片も見えなければ諦めもついたと嘆くだろう。しかし、見えてしまったなら、その欠片に向かって歩くしかない。例えそれがパンドラの箱であろうとも。


『ハッハァーッ! 俺の勝ちだなぁ、ローゼス・ノブレス!?』


 だからとりあえずクリエイト・ワールドでもリアルでもいいからモニタの向こうのこいつにあって殴りたい。

 葉楽はモニタの向こうで無駄に爽やかに笑う艶やかな腰まである黒髪の男に対して殺意を燃やすのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。