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誰がための存在証明(レゾンデートル)  作者: リョウト
Fourth Chapter ~Fire Fear Find~
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第50話 それはダニだ

 一応各話のタイトルはその話の中の台詞となっていますが、たまに変なのが紛れ込んでいることがあります。相違運は穂kにしっくり来るものがなかったとお考えください。あと、平常運転のローゼ、葉楽の台詞の場合は伸ばした音を削っています。

 ~アクダク火山:洞窟~


 洞窟をしばらく進んだ三人を待っていたものは、蝙蝠の群れであった。暗闇の中で反響測位(エコーロケーション)と呼ばれる、舌打ち音の跳ね返りで位置を探る相手に対してまともに相対できるものはソナーのような感知方法を持つローゼだけではある。

 人間の目は闇の中のものを見ることは出来ない。それは、人間の目は光に反応してその像を捕らえる。鏡で自らの姿を見ることができるのは鏡が光を反射するからだ。

 洞窟には日光も月明かりも入ってこない。故に、暗闇。自然そのままであれば。


魔法詠唱(チャントオブマジック)!『暗き闇夜に光あれ! イレディエイションマジック【カルラ・ランタン】!』」


 セリオが太股に取り付けたメダルケースを叩き、呪文を唱えながら飛び出てきたメダルを弾く。そして弾かれたメダルはしばらくの間中空を漂い、蝙蝠たちの眼前で弾ける様に輝き始めた。

 こうなると蝙蝠たちにはたまらない。蝙蝠は洞窟や夜などの闇の中に暮らす生き物だ。故に、光を見る機能は退化している。自分たち人間が車を走らせ、暗いトンネルの中から明るい昼間の中へと出たときですら眩しくて目も開けられないほどだ。だとしたら、光を見る機能が退化している蝙蝠たちが目の前がいきなり明るくなったならば、人間が暗視ゴーグルで太陽を間近に見るのと同じぐらいの刺激が蝙蝠に走るのである。因みにハルは目が利かないと分かった瞬間に目をずっと閉じているし、セリオは使った本人であるため問題ない。ローゼにはそもそも効かない。だって片目義眼だし。

 蝙蝠たちは短い悲鳴のような鳴き声を上げて地面へと墜ちる。

 ローゼ達三人はそれを無視して奥に歩を進める。何匹か踏み潰したが、気にすることは無かった。


「蝙蝠って血を吸うって聞いた覚えあるんだけど」

「種類によるよぉ~。因みに植物にも鼠にも魚にも動物の血を吸って栄養を確保する種はいるからねぇ。特段不思議なものじゃあないよぉ」

「あぁ、蚊とかね」


 納得するように頷くハルにローゼは補足を入れる。


「あれ、血を吸うのは成虫のメスだけだよぉ?」

「まじで!? あぁ、だから夏ばっかり蚊に咬まれるのか!」

「確かに成虫になって生きてるのは夏だけみたいなもんだからそう言う事ぉ。その他の時期は主に果物の汁とか花の蜜なんかの他の虫も食べるようなものを摂取するんだぁ。オスもそれらに当てはまるよぉ」


 説明が終わると同時にローゼの裾が引っ張られるが、ローゼは少したりとも慌てない。周囲の様子を把握していて、その引っ張った手の主がセリオだと分かっているからだ。


「私冬に蚊に咬まれたことがあるんだけど」

「それはダニだ」


 ぴしゃり、と言い放つ。実際夏以外の虫刺されは大体ダニである。

 そんな話をしているとローゼの様子が変わった。感知範囲内に何かが侵入してきたからだ。


「静かに」

「あいよ」

「進行方向からなの?」


 セリオの言葉にローゼは短く頷いてからその身を屈め、壁に張り付く。。もしもモンスターなどだった場合に反応を遅らせるためだ。ハル、セリオもそれに習う。

 息を潜めるとまずコッコッコッと乾いた足音が連続で響き、それに遅れてズドドドと地響きが鳴り響く。

 トレインか、MPKか。そのどちらであろうと対処するために全員武器を構えた。結果。


「おぅローゼ!? ちょうど良かったちょっと助けあっぶな!?」


 焦って出てきたターレットの頼みも聞かずに銃声が響く。ターレットがそれを叫びながら避けると蝙蝠が人の大きさになったようなモンスターの眉間に当たった。もちろん、当たったモンスターは青い粒子となる。


「おっわ、ローゼ、助かった!」

「御託はいい! 松明を消せ!」

「見えなくなるだろ!?」

「敵が集まるからだ馬鹿が!」


 ローゼの叫びにターレットは渋々松明を消す。そして松明を消した次の瞬間に巨大な鼠が襲い掛かってきた。


「うおぉっ!?」

「よいっしょぉ!」


 それにうろたえたターレットが腰を抜かすと、ハルがターレットを追い抜かしハルバードをバットのように振り、鼠を上半分と下半分に両断する。現実であればかなりグロテスクな絵になるが、これはゲームだ。断面は滑らかな平面となり青い粒子へと変わる。


「鼠ごときにうろたえるなんて爆弾魔(ボマー)の名が泣くぜ?」

「うるさいなぁ、慣れてないんだよまだ暗闇に!」


 そう言いながらターレットは立ち上がって斜め前の壁に向かって拳銃を構えて銃弾を放つ。


「何を……!?」

「ま、見てなって」


 放たれた銃弾はカィン、カィンと金属音を響かせ、洞窟の奥のほうへ消えると鼠の断末魔が響く。


「跳弾か」

「そういうこと。目さえ慣れればこっちのものさ」


 ターレットが銃口から漂う紫煙をふぅ、と吹き飛ばすと、それを見ていたハルがじとぉっとした目で見ながらボソ、と呟いた。


「蝙蝠に尻尾巻いて逃げてたくせになんでそんなに得意げなんだか」

「馬鹿野郎! 怖くないのか!? 人みたいなサイズの蝙蝠!」

「似たような異星人がいるんだからこわかないよ」

「俺は見慣れないのさ!」

「何を情けないこと胸張っていってんのさ」


 ハルとターレットのそんな掛け合いを尻目に見ながら、ローゼはあるものを発見する。


「これは……?」


 ローゼは発見したものを持ち上げ、目を凝らす。ローゼが拾ったそれは、装飾が施された何かしらのものの欠片の様だった。


「むぅ」


 ローゼはレーダーの範囲を広げてみるが、これから先、特に分かれ道も隠し通路も存在しない。誰かの装備の破片だろうと、とりあえずコートの懐に入れておくことにした。


「ローゼ、どうしたの?」

「いいや、なんでもないさぁ。早く奥へ進もう。まだ暑くもないからね、ここでいくら戦っても魔法は手に入らないだろうさ」

「そうね。さっさと手に入れて外に出たいわ。ここ、なんだか息苦しいもの。あんた達! さっさと行くわよ!」

「うーい」

「え? 俺もナチュラルにメンバーに含まれてる? まあいいけどさ。一人だとなんかさみ、不安だし」


 こうして、ターレットを仲間にしたローゼ一行は洞窟の奥へと進む。しかし忘れてはいけない。ここは洞窟で、暗闇の中だ。その中での一番の敵は自分自身だということを。

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