第16話 現実での無能はとことん無能なの?
基本的には作者の頭の中に浮かんだ風景をそのまま小説にしているので時には訳のわからない話ができたりします。先に言っておくことは一つ。一般人とは、貴族とか芸能人とか軍人でない人のことを指します。よし!これで葉楽一般人判定だ!
~オネスト~
虎申亭から出た三人を待っていたのは、どこにそんなものあったのか、といった感じの電柱にもたれ掛かって腕と足を組んでいるセリオであった。
ロリな見た目の奴がやっているので、周りからの目線は生暖かいが、三人の背筋には冷たいものが走る。
いつの間にこの場所を掴んでいた?後その電柱どこから持ってきたよ、とか、なんか関節の曲がり方っていうか重心の位置おかしくね? とか。
「……遅かった、わねぇ?」
「あの、さ。何も言わなかったのは謝る。済まなかった。とりあえずその電柱どっから取ってきたの? 趣味人が作ったもの盗ってきたの? まあどうだか知らないけどさ、返しに行こう? ほら、俺も頭下げるから」
「あんた、私の今のレベル解って言ってるの!? 3よ3! あんたのレベル言ってみなさいほらほらほらほら!」
「……15だけど? 何か文句あるのかこらぁ!」
ローゼは開き直って凄む。傍から見るとちびっ子にメンチ切る大人気ないヤ○ザだが、同い年である。念のため。
「何逆切れしてんのよレベル差二桁突入してんでしょうが莫迦! リザードマンに頭カチ割られて脳漿飛び散らせて死ねっ!」
「うっせばァかそんなこと言ってる暇あったら生体CPUの件について調べてレポートにまとめて持って来い!」
「はぁ? そんなデマに踊らされてるんじゃないわよマヌケ! 普通にAIしか使ってないわよアンドロイドに転用する用のね!」
「マジでか調べててくれたのならマジでありがとうレベル上げ付き合うけど!?」
「あんたらがさっきまで行ってた所に連れてきなさい!」
「へへぇ」
ローゼは振り向いて屈み、セリオを背中に乗せる。ものすごい勢いのある掌返しである。それを見てミラーとケイトは見合わせて呟く。
「おいなんか頭垂れたぞ」
「勢いよく伏線っぽいものぶっちぎってね。なんだよあのシリアスな空気。意味なかったじゃん。結局僕の空回りじゃん」
ケイトの件は自分の当たらない勘を信じたケイトのただの因果応報でもあるのだが、ミラーは触れずに剣をインベントリに収め、バトルハンマーをインベントリから取り出した。
「あれぇ?剣以外も使えるのぉ?」
「寧ろこっちが本職だ。そいつ斬撃だろ?なら今さっきみたいに斬撃武器がないわけじゃない。何が敵に効くかわからんから三人以上なら打撃、斬撃、銃撃は最低でも確保しとくもんなんだよ」
「爆発はぁ?」
「……衝撃?」
ハンマーで肩をトントンと叩きながら説明するミラーに、ローゼはごく普通に疑問を投げかけ、ミラーは戸惑いながら思いついた答えを返す。その時、ふとミラーはセリオを強化するのに手っ取り早い方法を思いついたので、提案することにした。
「そうだ。奥義システムがあったな。あれがあったらいろいろと有利だぞ」
「有利って?」
「レベル1だろうが条件さえ満たせば魔法が使えるようになる。地属性だけだしな。レベル制限付いてるの」
「マジでっ!?」
ミラーの言葉にローゼは驚く。全部レベル制限があると思っていたからだ。自分の例がスタンダードと考えて。しかしよく考えたらガイアルクも『自分のだけ条件が難しい』とか行っていたのを思い出し、落ち着いた。その反応をスルーしながらミラーは続ける。
「俺が一番最初に使えるようになったのは水属性だ。火属性は火山いかなきゃならんが水属性は近くに水源があればいい。リアルスキルがあればこのゲーム、とことん有利だ」
「それだと現実での無能はとことん無能なの?」
「いや? がんばりゃ奥義も習得できるぞー? ……スキルレベルが50とか必要だけどな。本当に途方も無いな」
「まあ、昔のロープレの最高到達レベルくらいは必要なんですよね。僕もそこまではいけてないし。まだプレイヤーレベルですら34だし、スキルレベルは23だし」
そういえば初めてケイトのレベル聞いたな、とか思いながらローゼは背中にモールス信号で下ろせと伝えたセリオを地面に下ろす。
「セリオ、君が得意なのってなんだっけぇ?」
「剣はほぼ自己流だから……歩術とかそこらへんの技術になるわね。ローゼ、あんたは知ってるでしょ?」
「あぁ、あの攻略法ばっればれな威嚇用のあれねぇ」
ローゼがリアルでの灰羅のとある動きを思い出しながらセリオの言葉に返した瞬間、セリオの蹴りがローゼの脛を叩く。このゲーム、ダメージ判定はなくても痛覚はある。ローゼは痛む脛を抑えながら踞った。
「いったぁ!?」
「そうよ、その威嚇用のやつよ! 何、何か文句あるの!? 手早く出せて思いついたのかこれなんだから仕方ないでしょう!?」
「……ダメージないからって弁慶の泣き所は……痛い」
「あー……セリオさん、どんなのなんです? その、奥義並ではあるけどアレな技ってのは」
踞ってプルプルと震えてるローゼを尻目に、ゲンナリとした顔でケイトはセリオへ問う。
「……ここら辺じゃやりたくないわよ。さっさと水辺に案内しなさい」
「仰せのままに、我侭御嬢。ローゼ、さっさと立て。行くぞ」
「筋肉も脂肪もつかないんだぞォ~……脛って。骨と神経にダイレクトダメージよぉ?」
「片目義眼になるような怪我した奴が何言ってる。それに比べたら掠り傷もいい所だろ?」
「うぅ~」
ローゼは涙目状態のまま立ち上がる。それを見たケイト、ミラーの二人はセリオ、ローゼの二人を先導しながら歩き始める。
「あぁ、そうだ。ローゼ、RPは5あるか? あるなら剣取得しといてくれ。いざという時貸せるから」
「……もしかしてこの装備の素がいる場所いくのぉ?」
「あぁ。全員が斬撃使えたほうがいいだろう? ケイトは魔法で斬撃を出せる。だがお前は土だろう? あんまり鋭いのは苦手だろう」
「……肉とかなら尖らせてブッ刺せばいいかもしれないけどぉ、植物は確かに切りづらいかもねぇ。 繊維に沿って切ってもすぐに回復しそうだしぃ。うん、わかった。取っておくよぉ」
ローゼはウィンドウを開いて剣スキルを取得する。もしも使わないスキルが出てきたら控えに移せばいいだろう。そう考えての行動だ。
「あれぇ? そういえば二人も奥義持ってるのぉ?」
「うん、持ってるよ。でも、ここじゃ危ないので、セリオさんと一緒に見せますよ」
「……敬語使わなきゃ、ってのと素の口調が混じってるよなぁ。ま、どうでもいいか。言うまでもないが俺も使えるぞ。例に漏れず後後でのお楽しみってことで、だがな」
「へぇ……ケイトの方は分かんないけどぉ、ミラーのは想像つくなぁ」
ミラーの得意げな表情が曇る。主にイラつきで。
「へぇ、言ってみろよ」
「AM、君モーショントレースコクピットだったよねぇ。だから予想が付くってだけなんだけど」
「あ、そうか。お前俺と戦った事あるもんな」
ローゼの言葉にミラーは納得したような表情を浮かべた。それを見たローゼは指を指して正解の意を示す。
「そゆことぉ~。おおかたあのフィニッシュムーヴでしょ?五段階のコンボを流れるように決めるあの」
「……あぁ。詳しいところまでは秘密で頼むぞ?」
「はいはいぃ~」
ローゼ達はくだらないことを話しながら北へと歩く。目的地は、湿地帯。植物の物の怪が住まう場所。




