第二十八話 魔導銀
西部鉱山都市・ガルム。
中央工房の地下。
「……これは」
俺は言葉を失った。
巨大だった。
地下空洞。
岩盤一面に刻まれた、青白い光の線。
まるで都市そのものが、巨大な魔法陣になっている。
「古代魔導回路です」
案内していた老ドワーフが言った。
「この鉱山の本当の価値は、銀そのものじゃねぇ」
「回路……?」
「魔導銀だ」
老ドワーフは壁へ触れる。
すると。
青白い線が、ぶわっと発光した。
「うおっ!?」
空気が震える。
微弱な魔力が流れた。
「……生きている?」
「半分な」
ドワーフは鼻を鳴らす。
「昔は、この山全体が動いていたらしい」
怖いこと言うな。
◆
「つまり」
俺は壁を見る。
「普通の銀じゃない?」
「ええ」
ベルクが珍しく真剣だった。
「高純度魔導銀です」
「魔力伝導率が異常に高い」
グランも続ける。
「だから昔から、“王国級”で管理されていた」
なるほど。
だから銀鉱山都市が重要だったのか。
「待ってください」
俺は少し引っかかった。
「じゃあ今まで、“通貨用銀”として大量消費していたんですか?」
沈黙。
ドワーフたちが気まずそうに目を逸らす。
「……はい」
「もったいな!!」
いやいやいや!
魔導素材を貨幣にして削っていたの!?
「昔は魔導文明が滅びた後だったからな」
老ドワーフが言う。
「使い道が分からなくなっていた」
なるほど。
技術喪失か。
「ですが」
ベルクが壁を見る。
「最近、変化が起き始めています」
「変化?」
「預かり証の普及で、銀貨需要が減った」
「はい」
「その結果、“高純度銀”が市場へ残り始めた」
……あ。
繋がった。
「魔導技術側へ流れ始めている?」
「ええ」
つまり。
金融革命が、魔導技術を復活させ始めている。
「面白いですね」
俺は思わず笑った。
「市場改革したら、古代文明が蘇り始めた」
「笑い事ではない」
グランが低く言う。
「魔導文明は、一度世界を滅ぼしている」
空気が変わった。
「……は?」
「正確には、“暴走した”」
ベルクが続ける。
「古代文明は、魔力流通を極限まで効率化した」
「魔力流通?」
「今のお前と同じだ」
沈黙。
「物流」
「信用」
「情報」
「魔力供給」
グランが静かに言う。
「全部繋ぎすぎた結果、一つ崩壊した瞬間、世界全体が連鎖崩壊した」
ぞくり、とした。
それ。
完全に現代金融危機じゃないか。
「だから十三商会は、“市場を加速させすぎるな”って言っていたんですか」
「ええ」
ベルクは頷いた。
「過去に世界が一度壊れているからです」
重い。
かなり。
◆
そのときだった。
地下回路の奥で、光が強くなる。
「……ん?」
低い振動。
青白い線が脈打つ。
まるで心臓みたいに。
「おい」
ドワーフが顔色を変えた。
「待て」
「何です?」
「誰か、“核”を起動している」
空気が凍った。
「核?」
「古代魔導炉だ!!」
次の瞬間。
地下全体が揺れた。
轟音。
光。
そして。
地下回路の奥で、巨大な紋章が浮かび上がる。
「……魔法陣?」
「違う」
グランの声が低い。
「あれは、“古代契約炉”だ」
ぞわり、と背筋が冷える。
その瞬間。
俺は気づいてしまった。
今まで俺たちがやっていた、
•信用
•契約
•通貨
•認証
全部。
この世界には、“もっと古い形”で存在していたんだ。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけましたら、
下にある**【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】を★★★★★**にして応援していただけると、執筆の励みになります……!
ほんの少しの応援でも、作者にとっては嬉しいものです。
どうぞよろしくお願いいたします!




