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ぐうたら姫の後宮生活  作者: こでまり


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21 余興

 余興と言われて今度は何をさせられるのかとソワソワしていると公達二人が部屋に入ってきた。


「この者たちは信頼できる。今後はこの者たちにも麗景殿を警護させる」


 帝はそれだけを言うと笑いながら退出してしまった。

 他の者たちと同じように頭を下げていた綾は顔をあげて、更に眉間に皺が寄った。


「兄さま?」


 なぜか公達の中に兄、良智がいた。


「東宮妃様!あれほど問題を起こさないようにと申し上げたはずですが?」


 珍しく怒りを露わにして綾を睨みつける兄は今にも怒鳴りだしそうな勢いだ。

 衣冠姿なので宿直なのかと思ったがもう一人の公達も同じ姿なので別の任務に当たっていたのだろう。


「問題は起こしていないわ」


 綾はどうしてそこまで怒られないといけないのかと言い返す。


「東宮妃様、良智殿は大切な妹君を心配されているのです」


 兄の隣に座る公達は頭中将で橘忠良と名乗った。二十代半ばくらいの落ち着いた青年だ。更に後ろに控える検非違使たちは笑いを堪えていた。


「東宮姫様が麗景殿を出られる時から麗景殿の庭先で警護に当たっておりました」


 頭中将が説明してくれる。全部見られていたのだ。


「問題は起こしていないわ。ただ、確認したいことがあっただけよ」

「そのお話は先ほど中務卿からお聞きしました。我々からもお礼申し上げます」


 頭中将と検非違使たちは頭を下げてきた。


「お礼?」

「そうです。今、宮中ではある噂が持ち切りです。その噂は瞬く間に広がって、つい先日はある女御が親王をつれて出奔しようとしているとまで噂が立っていたのです」

「誰がそんなことを言っているのですか!」


 それはまさしく、あの常茂が言っていた内容に酷似している。

 綾は両手を床に叩きつけ怒鳴る。


「綾、落ち着いて!」


 兄に言われて居住まいを正したが、納得できない。

あれほど衰弱した藤壺女御をみればそんなこと嘘だと分かるはずだ。おまけに、御子は連れ去られたというのに。


「東宮妃様が親王様を連れ戻してくれたこと、重ねてお礼申し上げます」

「お礼を言われるまでもないわ。だって、あの赤子は帝の御子様ですから。当然のことです」


 綾はいつの間にか涙を流していた。どうしてそこまで藤壺女御を追い詰めるのか。

 許せないと思った。一体だれが!


「そのお心遣いが東宮様のお心を射止めたのですね」


 頭中将は綾にそっと懐紙を渡してくれた。

 涙を拭きながらここにいる人たちを見渡す。


「みんな、どういう立場の方たちなのですか?」

「ここにいる者全員、東宮様にお仕えすると決めた者たちです」

「東宮様に……」


 それで帝は信頼できると言ったのか。


「綾、このことが何を意味するか分かっているか?」

「どういうこと?」


 兄に言われて、信頼できるから安心していいと言いたいのかと思ったが、表情からそうでないような気がした。


「東宮様が失脚すれば、僕たちも後がない」

「えっ?」


「後宮に入る前に説明したよね。政治的な思惑ですべてが動くことがあると。今は、東宮様のお人柄や知性でその地位は安泰だけど。帝からは後宮内の問題を解決せよといわれているのは周知の事実だ。その問題をいつまでも解決できずにいると問題も解決できないのかと人々は離れていってしまう。そして、別の方が東宮に立つ可能性もあるのだよ」


「東宮様はどうしてそんなことまでして私を東宮妃にしたいの?本当なら別の方が東宮妃になる予定だと聞いたわ」

「東宮様は柾良親王様と直貞親王様のことを心配されているのです。このまま東宮様が帝位につかれたときのあの二人の行く末を。その為、出来る限りお二人のことを大切にしてくださる方をと考えておられました」


 頭中将が目を伏せながら話す。


「それでしたら、右大臣家の姫でよかったのではないのですか?」


 右大臣家の姫なら、柾良親王は大切に扱われるだろう。そして、直貞親王は年齢が離れているので悪いようにはしないと思う。


「右大臣の姫をと話はありましたが、それはあくまでもつなぎとしての東宮なのです」

「つなぎってどういうこと?」

「右大臣の姫を東宮妃にすることで東宮様を操り、時期を見て柾良親王様に帝位を渡すことを右大臣は考えていたのです」

「それでは使い捨てのようなものではないですか!」

「そうなのです。右大臣は柾良親王様に帝位を継がせるべく画策しておりました。ただ、今上帝は東宮様の資質を分かっておられるのでどうしても東宮にしたかったのです。その為の布陣と申しますか。これからの治世に力になってくださる方をとずっと探しておられたのです」


 やっと納得出来た。これは帝位を賭けた争いなのだと。それに藤壺女御と直貞親王は巻き込まれた。


 あれ?

 おかしい。


「話が合わないわ。それなら、どうして柾良親王様はご病気になったの?」

「我々も、そこが疑問に思っておりました。帝もそのことを不審がっておりまして、何かわかるかもしれないと一縷の望みをかけて東宮妃様に内偵をお願いしたのです」

「犯人まで見つけられなかったわ」


 綾は後悔した。あの時、常茂たちに見つからなかったらもしかしたら柾良親王の病の原因を見つけられたのかもしれないと。しかし、そうなると直貞親王を取り戻すことが出来たかと聞かれればそちらも出来たか分からない。

 結局、中途半端なままで終わっているのだ。


「麗景殿を襲った者を数人捕らえています。誰の手の者か分かるはずです」


 綾は兄と頭中将、検非違使たちに守られて麗景殿へ戻った。

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