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彼女が掴み取った未来
瞬劫で操ることができるのは、物体の相対的時間だ。
例えば、レイにとっての一秒が、世界にとっての一年となる。つまり、レイには一秒間に一年分の情報量が雪崩れ込む。そんなものを脳が処理できるわけもない。実際には一秒が何百年に相当するだろう。レイの脳は認識することをやめ、思考停止していた。
だから、自らの時間が世界の基準に戻ったことに、レイは一瞬気づくのが遅れた。
それは自らの意思ではなかった。
どれくらいの時間が経過したのか分からない。本堂は何も変わっていない。あれからまったく時間が経っていないようにも見えるし、何千年が過ぎたようにも見えた。
何か問題でも起きたのだろうか。
焦りを募らせ始めたそのとき、自分の横に誰かいることに気づいた。
白銀色の髪を短く整えた女性は、レイと目が合って微笑みを漏らした。
それが誰なのか、レイはすぐにわかった。
随分と大人びているが、見間違うはずもない。
静かに涙を流した彼女は顎を上げ、そっと目を瞑った。
再び伝わる彼女の温もり。レイは満たされていく心のままに彼女を抱き締めた。




