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96話 強制的な帰還


ビーッ、ビーッ、ビーッ



【システムの強制切断を行いました。次回ログインまでは最低20時間空ける必要があります。

 システム管理者へログ送信、接続者情報確認中……スキャン実行……問題なし。

 ゲーム内キャラクター、自動生活(オートモード)へ移行します……確認終了。


 キサラギアリサ 様、一定以上の痛覚及びリンク値の超過を確認しましたので『PAWオンライン』との接続を強制的に切断しました。

 なお、体に不調を感じた場合には、お近くの医療施設での診断をオススメします。また……】



「……そっか、強制切断されちゃったんだ」

 見慣れた天井を見ながら一人ぼやく。


 なんとかしたいという思いからPAに乗って、とにかく突き進んで、相手のPAに突撃した状態のまま山の斜面に激突。わたしらしいと言えばわたしらしい結末に、なぜだかため息が出るばかり。


『あれからどうなったのかな……』

 たぶん相手は倒したと思うけど、山神様やハル、ロキシーさんはどうなったのだろう。


 勿論、自分のことも少しは気になる。相手のPAに突撃した時の衝撃もかなりのものだったけど、その後斜面に激突した時の衝撃は言葉にするのも難しいレベル。もし現実に同様のことを体験したらムチウチとかでは済まされず、それこそ死に至ったかもしれない。

 ただ、やはり気になるのはあの後のこと。



『これが要さんや那緒だったら携帯端末(ポータブルデバイス)へ連絡入れるんだけどな……』



 ピピー、ピピー、ピピー



 そんな事を考えていたら、あまり聞くことのない着信音……アドレス帳には無い、未登録先からの着信が。


「……もしもし?」

 普段なら未登録先からの電話なんて絶対に出ないけど、なんだか妙に話しをしたい感覚に襲われて、つい電話に出てしまう。


『よかった、現実の方では無事なようで』

「岸さん!?」

 あれっ、アドレス交換はしていなかったはずなのに、どうしてわたしの番号を?


『今回はちょっと裏から手を』

「いやいや、それ犯罪では??」

『あ、大丈夫。犯罪行為なんてしないから。ちょっと財力というか、家の力をね』

 サラっと怖い事言ってませんかこの人。



『私があなたのことを心配していたのは事実だし、あなたもあれからどうなったか知りたいかと思ったのだけど……不要だったかしら?』


「すみません、是非お願いします」

 もはや携帯端末(ポータブルデバイス)に向かって土下座状態です。というか、


『はは、体が鉛のように重たいし……』

 体全体もそうだけど、節々とか関節がギシギシ言ってる……うーん、ゲーム内のがこっちに来ているわけないんだけどなぁ。


 というか、現実では無事って!?


『あ、別に向こう(PAW)でリアさんが亡くなったとかじゃないから大丈夫』

「えっ、はい」

 じゃあ一体……


『簡単に言うと骨折四ヶ所、打撲十ヶ所以上、裂傷数十ヶ所、内出血数え切れず、あとそれに意識不明でしょ。他にも……』

「も、もう大丈夫です、わかりましたから!」

 うぅ、聞くだけで体中が痛くなってくる。


『だめよ、マチュアさんやハルにもキチンとリアに伝えるって約束したから。ちなみに二人共物凄く怒っていたからね、次回ログイン時には覚悟した方が良いわよ』

「えぇ……」


『ま、私は良いけどね。ただ、コクピットから出たリアの状態は、それこそ死んでいるかと思ったぐらいだったのは事実よ。

 ハルの慌てっぷりは、見ているコチラが軽く引くぐらいだったかな』

 うーん、ログイン時に即土下座確定かな。あ、でも


「岸さん、ログインなんですが……」

 ついさっきシステムから言われたことを彼女に伝える。



『なるほど、マチュアさんが『回復魔法かけてもリアの意識が戻らない』って悩んでいたけど、理由はどうやらそれかしら』

「重症だからでしょうか」

『そうね。意識不明の状態だからというのはあるのかもしれないわね。まぁ20時間後にはログインできるという事は、逆に考えれば最大でも20時間過ぎたら意識不明からは戻るはずでしょうし』


 うっ、今からログインが怖い……


『良い機会だから、ゆっくりとしたらいいと思うわ』

「そう……ですね」

 いきなり予定がポッカリと空くのは、結構寂しいものだと痛感する。



『それと、あなたの今の状態で移動するなんて意見は出るはずもないから、しばらくはゲーニスに逗留することになってるわ。だから慌てなくても大丈夫』

「えっ、でもそれだとマチュアさんとロイズさんに」

 時間がかかると面倒なことになりかねないって……


『だから今回はロイズさんだけが先行してアルブラに向かったわ。馬車は残してあるから、ロイズさんの代わりにファナさんが操作してくれるそうよ』

「ファナさんが?」


 ああ、もう今回は色々な人に迷惑かけまくってて、情けないやら申し訳ないやら、とにかく謝りまくる必要がありそうで頭が痛いかも。


『とりあえず私は一度ログインして今の状態を伝えておくわ。このレベルなら運営からとやかく言われる事も無いでしょうし』



 現実でゲーム(PAW)の情報交換をしすぎること、とくに抗争や戦争時におけるゲーム(PAW)外からの過度な情報収集についてはマナー違反として運営からペナルティを受けるらしい。

 まぁわたし個人の情報なら大丈夫だと思うけど。



「では岸さん、わたしの代わりで申し訳ありませんが」

『構わないわ。そうね、その分機会があったら現実リアルの方でご飯をお呼ばれして頂こうかしら』

「あ、はいっ!」

 わたしの料理で良ければいつでも。


 それから少しだけお話してから、岸さんと改めてアドレス交換を行い通話は終了する。



『今から皆にどう謝るかシミュレーションしておこうかな……』

 マチュアさんやハル、ファナさんの顔を浮かべながらひたすら謝りまくるのを脳内で何度も行いながら、気がつけばわたしは意識を手放していた。




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