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95話 PAと、戦場と


『リアさんもPAを出して』


『えっ? 出したいけど……今まで出したことが無いし、そもそも操作方法もわからないよ』

 ロイズさんに相談してPAの操作ができるようにスキルは取ったけど、まだ使い方も何もわからない。そんなPA出しても却って邪魔になるだけ……


『やってみたら良いじゃない』

『そんな……無茶な!』

『でもこのままじゃ、色々な意味で負けだよ』

『色々な意味で……』



「ハルがバンダナに負ける。それは同時に山神様にも重大な影響を与える結果になる。勿論。その時はわたしも……」

 まだ治療中の腕を見ながら自問自答で頭の中がグルグル回る。そして、



『イヤだ……皆が負けるのはイヤだ! ……わたしが負けるのはどうでも良い。でも……ハルが負けるのがイヤ!』



「お願い、わたしのPA! こんな情けない持ち主で悪いけど力を貸して! 召喚(コール)!」



 ピシッ……



 何かが割れるような音。それは


「何もない所にヒビが……違う、空間が裂けてる?」

 裂けた空間から、迫り出すように出てきた白銀のPA。


「これがわたしのPA……、(タイプ)ハマル」


 西洋の鎧、それを重厚にしたようなフォルムでありながら、額から生えたツノのようなものが異質さを醸し出している。それに、手にしたこの武器は……


「わたしの……ううん、わたし達の為に力を貸してくれる?」

了解(イエスマイロード)


 声と共に光る紫色の目がわたしを視る。その瞬間、体の奥底が熱く滾る。



「……うん、行くよ!」



―――◇―――◇―――



「いつまで耐えられるかな?」

「お前の弾切れが先じゃねぇか?」

「はははっ、だったらそのまま案山子になってな!」

 バンダナ野郎はそう言いながらライフルを撃ち続ける。


『まぁ、フォーマルハウトなら予備の銃の二つや三つはあるよな……』

 リロード時に予備の銃に変えてるから、弾切れを狙う目論みは外れたか。さて、どうしたものかな。


「お前もこのままじゃ退屈だろ? こういうのはどうよ!」

 バンダナ野郎のフォーマルハウトはバックラーをこちらに向けると、



 ガコン



 バックラーの裏から表れた二つの銃口が、こちらを向きながら唸り始める。


「チッ、乱射野郎ハッピートリガーが!」

「好きにほざきな! コイツを食らって立っていられればな」



『ヤベッ、チャージショットか!?』

 散弾、そして貫通力を増した射撃である【チャージショット】は(タイプ)フォーマルハウトの得意技であり、あまり喰らいたくない技。


『避けるのは容易いが、避ければ山神様に当たっちまう……どうする!?』


 時間にしてほんの一秒ぐらい考え、悩んだ瞬間。



 ゴォォォォ



『なんだ!?』

 今この場に存在する音全て飲み込むほどの、大音量が辺り一帯を支配する。そして、


『ハ、ハルどいてーーー!』

「はぁっ?」


 現れた白銀のPAから聞こえるのは……リアか!?


「リア、お前何を」

『ごめん、聞き取れないから、後で』


 ……だ、大丈夫なのか。



―――◇―――◇―――



「えーっと、何とか乗れたけど……どう動かすんだろ」

 なんとか復活した左手も合わせて、自分が座った座席まわりを見渡す。


 左右にレバーがあるのは操作用だよね。でもそのレバーの奥に他にもレバーがあるんだけど……手は二つしかないよ!?

 それにやたらたくさんあるボタンやスイッチ、あと足元にはペダルが四つもあるし。


『ヤバイヤバイヤバイ、本当にどうしよう!?』

 とりあえず座席にあったベルトをはめて、レバーを握るけど……まぁ、これだけじゃ動く訳無いよね。



『リアさん、PAは初心者でも扱えるモードがあるから落ち着いて。まず座席の頭部付近にある』

『これかな』

 座席の上にある四角い物体を下ろして……


『えっ、ちょっと』

『ん?』

 ロキシーさんが慌てた声を出すけど、



【ダイレクトアームダウン。PHYシステムヘ移行】



 何? サイ? 角の生えたあのサイ


「うわっ」

 なんのことかわからず狼狽えていると、座席の後ろからいくつか細い腕のようなものとワイヤーが出てくると、わたしの体の至る所をロックする。


「ちょっ、ちょっとそこは……んんっ!?」


【所有者トノ連結確認。システムモード移行完了。以降、所有者ノ意志ニ従ッテ稼働……認識、敵PAノ破壊】



 ゴォォ……



「えっ、何? 動くの!?」

 キツくロックされた体を動かすことは出来ず、ただ前に映された映像が動き始める!


「えっ、えっ?」

 動き出しはゆっくり。しかし三秒もすると、



 ゴォォォォォォォ!



「ちょっ、くぅぅ……」


 急加速によって体が座席に貼り付けられると、体中の血がぜんぶ後ろのほうに集まるような感覚になり、手や足の先の方に力が入りにくくなる。あと、視界が微妙に狭くなるような錯覚に。


『感覚……的には、ジェットコースターの急加速……だけど、レベルが……違い……すぎ』



 そんな事を考えているウチに、気がつけばハルとバンダナが戦っている場所へ近づいて……

『やばっ、このままだとハルに衝突する!』



「ハ、ハルどいてー!」

『リア、ーーーー』

 ハルが何かしゃべっているみたいだけど、いまいち何を言っているのか聞き取れない。


「ごめん、聞き取れないから後で!」

 それに、もうバンダナのフォーマルハウトもすぐそこにいるから、他のことに気をまわす余裕も無い。


「クソっ、まだ仲間がいたのか、だがな!」

 フォーマルハウトは右腕のライフルはハルに向けて撃ち続けながら、左腕をわたしの方へと向ける。


『ええ!?』


「溜めは既に終わっているぜ、カウンターで吹き飛びな【チャージショット】」



 ドッ!



 左腕のバックラーから伸びた二つの銃口が光ると、辺り一帯に響く大きな銃声がする!



【シールド展開、不足エネルギーハ搭乗者ヨリ採取】



「うぅ、くぅっ」

 体に巻き付いたワイヤーから、何かが抜けていく感覚。それが何かはわからないけど。いまあったアナウンスから考えると、このPAがシールドというシステムを使う為に足りないものを、わたしから抜いたんだという過程は成り立つ。


 ちなみにそんなアナウンスがあった後も、何やらPAから大きな音がするだけで、わたしが見ている映像に変わりはない。直後、



 ガガガッ!



「わっ、わ!?」

 座席にロックされたわたしにまで響く衝撃と炸裂する音。爆炎によって映像が乱れ、覆っていた煙がなくなり視界がクリアになると、すぐ目の前にはフォーマルハウトが。


「いいっ!?」



【シールドレベル異常ナシ 突撃(ストライクフォース)



 ドンッ!



(ツゥ)!」

 フォーマルハウトにぶつかる寸前、右手に持っていたトンガリ棒……もとい、槍が前に構えかるとその先端から根本までがフォーマルハウトの腹部に刺さる!

 その時の衝撃によって拘束されたワイヤーが体を締め付け、無理矢理擦れた箇所は服を破り肌に食い込む。



『って、まだ動いてる!?』


 だけど、わたしのPAはその後も止まらない。フォーマルハウトを串刺しにしたまま走り続け、



 ドガッン!



「キャアァ!」

「をっ、ぁ……」

 木々をなぎ倒しながらそのまま直進し、切り立った山の斜面に激突する!


「ひぐっ」

 激突した衝撃によって体が前へと強制的に持っていかれるが、固定しているワイヤーがそれを許すこともなく、それこそ皮膚に爪を立てるかのように全身をきつく締め上げる!


「ぁ……」

 そして内蔵にいたるまでの全身に受けた圧迫と激痛によって、わたしの意識は強制的に切断されて……


 ・

 ・

 ・



ビーッ、ビーッ、ビーッ……


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