第十三話:クロスボウを開発し、兵士と傭兵に訓練させる
王都の工房に、静かな緊張が走っていた。
机の上に置かれているのは、一つの試作品。
木と金属で構成された簡素な武器。
だが、その形を見た瞬間、傭兵リーダーが眉をひそめた。
「……弓か?」
俺は首を振る。
「違う」
「“誰でも撃てる武器”だ」
・クロスボウの誕生
側近が設計図を見て目を細める。
「弓兵の代替……ですか?」
俺は頷く。
「違う」
「弓兵を消す」
沈黙。
側近が即座に言う。
「それは軍の構造を壊します」
俺は淡々と返す。
「壊すんじゃない」
「更新する」
・兵士の訓練開始
訓練場。
兵士たちが新しい武器を受け取る。
見た目は単純だ。
引いて、固定して、撃つ。
ある兵士が呟く。
「これ……俺でも使えるぞ」
別の兵士も頷く。
「剣より簡単だ」
傭兵リーダーが笑う。
「そりゃそうだろ」
「技術いらねぇようにしてあるんだからな」
・“戦闘の民主化”
側近が小声で言う。
「殿下……これは危険です」
「熟練兵の価値が下がります」
俺は答える。
「下がるんじゃない」
「広がる」
側近が顔を上げる。
「広がる……?」
俺はクロスボウを手に取る。
「今までの戦争は“選ばれた人間の戦争”だった」
「でもこれは違う」
「誰でも戦える」
沈黙。
傭兵リーダーが低く笑う。
「それってつまり……軍の質じゃなくて数で勝つってことか?」
俺は首を振る。
「数じゃない」
「再現性だ」
・訓練の変化
兵士たちが一斉に射撃訓練を始める。
最初はばらばら。
だが、数時間後には精度が揃い始める。
側近が呟く。
「……こんなに早く戦力化されるものなのか」
工匠が答える。
「単純な構造ですから」
「複雑さがない分、習得も早い」
傭兵リーダーがクロスボウを構える。
「これ、戦場で一番嫌われるやつだな」
俺は即答する。
「そうだ」
「“技術を否定する武器”だ」
・敵国の未来を壊す兵器
側近が恐る恐る言う。
「これが広まれば……戦場の均衡が崩れます」
俺は頷く。
「崩すために作ってる」
「均衡なんて、弱い側の幻想だ」
・アルベルトの影
その報告が届いた夜。
側近が言う。
「第二王子殿下が軍部に“再編案”を提出したようです」
空気が少しだけ変わる。
傭兵リーダーが笑う。
「内戦の準備か?」
俺は静かに言う。
「内戦は防ぐ」
夜の訓練場。
クロスボウを構えた兵士たちが一斉に射撃する。
矢が空を切る音。
的に突き刺さる音。
そして歓声。
兵士の一人が言う。
「これなら……戦える」
別の兵士が笑う。
「いや、勝てるだろ」
俺はそれを見ながら呟く。
「違う」
「これは“戦えるようになっただけ”だ」
少し間を置く。
「まだ、始まってすらいない」




