↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最悪の邪神がログインしました。  作者: 歯車ぐるり
見上げるがいい、唾棄すべきあのアルデバランを:下
96/168

Amber, lost humanity その5

 アトラは歓喜に打ち震えていた。我が王が頼ってくださった。もちろんのこと、アトラはこれまでアザトースをできる限り支えていた。眷属を生み出し使っていただいたり、糸を使い動きを補助をさせてもらっていたりしたのだ。だがそれはアトラの自主的な行いもしくは命令にすぎない。しかし今回は違う。このアトラのチカラを頼りにしていただいたのだ。そしてこのような卑賤で矮小な身のために自らの髪をお渡しになられたのだ。


「これが我が王の力なのですね。これこそが世界の全てなのですね」


 体が前のものよりずっと強い。それに声も出せるようになっている。なんと素晴らしきことか。自分の前に立つ上位者(アザトース)を見ると、その威風堂々たる立ち振る舞いに心の隅々まで敬意で満たされる。そしてさらにその先に立つ不遜なる獣(コハク)を見ると、その傲岸不遜な立ち姿に怒りと侮蔑が骨の髄まで染み込んでくる。


「陛下、御命令を」


「...おけ...『脳の接続(ブレインジャッカー)』」


 アザトースが魔術を発動すると、アトラの脳に作戦が流れ込む。それは恐ろしく単純で、そして残酷であったがアトラにはなんの不都合もなかった。むしろ光栄だと思った。


「もういいかな?アタシ実は待つの苦手なんだよね☆」


 Amber(コハク)が焦ったそうに声をかけてくる。アトラが召喚された時は狼狽えていたが、落ち着きを取り戻したようだ。大いなる神を取り込んだだけはある。随分とまぁふてぶてしいものだ。


「...そだね。じゃあ...ごー」


 気抜けするようなアザトースの言葉と同時に、アトラが糸を吐き出す。それは放射状に広がっていき、Amber(コハク)とアザトースたちを閉じ込めるように囲った。Amber(コハク)の瞳が妖しく光る。


「何これ檻?それとも棺桶とか?なんでもいっか。殺せば終わり。それでよし!」


「...のー。わたし、しなない」


「その不遜、贖えぬものと知れ」






「ううっ...体が重いっ...!」


 コウタも十分わかってはいたつもりだったが、やはりこはくの一撃はプレイヤーのそれとは比べ物にならない。あんな適当にポイと投げられただけなのに、全身が痛む。


「でもっ、でも戦わないと」


 勝てる勝てないではなく、戦う必要がある。こはくをあのまま放置するわけにはいかない。少なくとも、人喰いをするような人物を野放しにしていいはずがない。この世界は不必要にリアルだ。彼女のいう人喰いも、きっとコウタが頭の中で思い描く通りなのだろう。それでも、コウタはまだこはくのことを仲間だと思っている。内容の差はあるが、現実ではできないことをしたくてゲームをしているコウタとこはくは同類だ。


「だから、止めないと」


 彼女の来歴は知らないし、彼女が人喰いをしたがる理由なんてわからない。それでも、人喰いなんて馬鹿な真似はよした方がいい。ゆっくりと立ち上がってアザトースが戦っていた場所へ向かう。その時ゾワリと肩のあたりに悪寒が走る。肩に首を向けると、何かいる。真っ白い体に足が8本。


「げっ蜘蛛!」


「振り払うーな」


「しゃべった!?」


「驚くーな」


 コウタの方にはりつきながらコロコロと鈴を転がすような声で喋りかける蜘蛛に対して、コウタは振り払おうとするのをやめる。よくよく見るとどこかマスコットじみていてあんまり怖くない。


「えーと、アナタ何者...いや何虫なんです?」


「陛下に最も忠実な眷属の分体なのーね」


「陛下?アルキオネさんのことですか?」


「全然違うのーね。陛下はもっとすごいのーね」


 わかってねぇなこいつと言わんばかりに首を振る蜘蛛に、コウタはちょっとだけイラッとくる。


「じゃあ一体誰なんです?」


「アザトース様なのーね」


「アザトースさんが!?」


「私、陛下のあのマントなのーね」


 そういえばイケブクロに来た時アザトースはマントからウサギの被り物を作っていた。どこで手に入れたのかと聞いたらシンジュクで手に入れたとも言っていた。便利なマントだと思っていたがまさか勝手に喋って動くとは。


「それで僕に何か用ですか?こはくさんと戦うのなら、正直今の僕は足手纏いですよ」


 こはくさんはただでさえ強化されているというのに、今のコウタはオスカーの火炎の反動でボロボロだ。彼女の前に立って戦える気がしない。肉の壁にすら多分なれない。


「そんなことは見てたからわかってるのーね。ほんの数秒でいいから隙を作って欲しいのーね」


「どうしてですか?」


「陛下、パワーをためてあの女をぶっ飛ばすのーね。私も手伝うのーね」


「タメの時間を稼いでくれと...わかりました。方法自体はありますから。方法自体は」


「物分かりのいいやつは嫌いじゃないのーね」


 ぐっと体に力を込めて立ち上がる。コウタはもう戦力として数えられるような存在じゃない。それでも、たった一つだけ言えることがある。


「まだ燃えられる」

総合ポイントが1500を突破しました。めっちゃ嬉しいです。これから2週間ほど忙しいので投稿が滞るかもしれません。お許しください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。