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最悪の邪神がログインしました。  作者: 歯車ぐるり
見上げるがいい、唾棄すべきあのアルデバランを:上
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うそ

 アイテムの取得の音が聞こえアトラの機織りが完全に動かなくなったことを確認すると、アザトースは機織りの体を念の為何度か殴りつけた後、アンドレが相手していたアトラの狩人の方を向く。狩人とアンドレの戦いはアンドレが優勢だった。アンドレに手傷はほとんど見られず、持っていたハンマーをワイヤーで繋ぎ、振り回しながら戦っていた。狩人の方はアンドレのハンマーの一撃をもらったのか目の一部が潰れていて、回避するときの動きが雑になっていた。このまま攻めればアンドレの勝利は間違いないのに、なぜかアンドレは及び腰だった。狩人の方はむしろ攻めなければ死ぬと本能的にわかっているのか、積極的にアンドレに飛びかかって攻撃をしていた。アザトースは蜘蛛達は毒を持っていることを思い出しアンドレもアザトースが貰ったマントと同じような服を着ているとはいえ、素肌の見える顔や首筋を噛まれれば死んでしまうことに思い至る。及び腰になっているのも死ぬのを恐れているのだろう。そう解釈したアザトースは狩人とアンドレの戦いを終わらせるべく、手に持っていた強化棍をポーチにしまって魔術を発動する。


「...『薙ぎ払われた大地バドラド』」


 狩人はアザトースの魔術に気付いたのかその場から逃げ出そうとしていたが、『薙ぎ払われた大地バドラド』の攻撃範囲からは逃れることはできず、抗う余地もなく跡形も残さずに消し飛んだ。狩人の周りにあった建物も根元から消し飛び、それらの倒壊音が響き渡る中、アンドレを魔術に巻き込むつもりはなかったのだから彼の方に突撃すれば死なずに済んだのにな、と思っていた。できるだけ魔力の消費を抑えたつもりだったが、それでもやはり本体での使用を想定した魔術なだけあって先程の魔術はアザトースのMPを大幅にむしり取っていった。

 MPを消費したときの虚脱感をアザトースはたっぷりと味わった後、アザトースはアンドレの方を向く。てっきりコウタのように食いついてくるとアザトースは思っていたが、彼は口をあんぐりと開け、今アザトースが起こした結果を受け止めきれずにいるようだった。腕はだらしなく垂れ、若干腰が抜けている。よくよく考えてみれば混沌そのものとも言えるアザトースの力の片鱗をアンドレは見てしまったのだ。本体と比べれば遥かに劣る力とはいえ、正気と狂気の境界線が崩れ、一時的に放心することは致し方ないだろう。コウタはかなり図太いのだなぁと思いつつ、アザトースはアンドレの頬をペチペチと叩く。アザトースの腕がだんだん疲れてきた頃、ようやくアンドレは正気を取り戻した。頭をポリポリと掻きながら彼は困ったような顔でアザトースに質問した。


「嬢ちゃんがオグハの眷属を倒したことに説得力が増したし、蜘蛛神アトラも殺せそうだけどよぉ.......ここまで滅茶苦茶な強さだとは思ってなかったぞオイ。まさかとは思うがよ、最近の『人でなし』はみんなこんな感じなのか?」


「......のん。たぶん」


「じゃあ嬢ちゃん一体全体何者なんだよ...」


 少しアザトースを恐れているような声色のアンドレにアザトースは素直に自分は神だと伝えようかと思ったが、そう言ってしまったらアンドレとの今の距離感は消えてなくなるだろう。崇め奉られるのも悪くはないが、彼には「ヒノロ」という名前の神がいるらしい。信者を奪うような真似はしたくないし、されたくもない。それならばアンドレが納得するような完璧な嘘で誤魔化せばいいだろう。しばし嘘の中身を考えた後、アザトースはゆっくりと嘘を紡ぐ。


「......ヒト」


「.........」


「......ほんとだよ」


アザトース渾身の嘘を聞いてもまだアンドレは訝しげな顔をしていたため、これ以上追求されないようアンドレに繭の塔(コクーン・タワー)に自分を案内するよう促した。

普通人間ならば「何者だ?」と聞かれた時に「人間だ」なんて言いませんよね?

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