ともだち
三連休だからでしょうか?金曜からPV数がものすごい勢いで伸びてきています。
左腕を失ったアザトースにある問題が発生していた。左腕の腫れている部分を触ることでステータスなどに干渉していた都合上、ステータスが上げられない。さらにアイテムを取り出せない。後者はコウタから渡されたポーチがあったのでなんとかなったが、前者はどうしようもなかった。ステータスを見ることだけは何故かできることが救いだった。アザトースが自分で決めたことなので特に文句はないとはいえ、不満はある。気を取り直してオスカーを倒した報酬を確認する。ゴソゴソとポーチの中を漁ると、オスカーの使用していた釘バットが出てきた。
オスカーの強化棍
燃殻の神父 オスカーが用いていた一本の奇妙な棍棒。先端に紅い布が巻かれその上から釘が打ち込まれている。皮膚を晒した相手には悍ましい苦痛を与え出血を強いることができるが、鎧を着込んだ相手にはその効果は薄くなるだろう。
奇特者として知られていた燃殻の神父はこの武器の由来を決して語ろうとしなかった。言えるはずもない、幼い頃の憧れなど。
一通り説明を読み終わったアザトースに対してコウタが上機嫌に話しかけてくる。その手には焦げた小さな本が握られていた。
「僕の方は結構当たりでした。アザトースさんの方はどうでしたか?」
「...どんき」
「ああ釘バットだったんですね...少し見せてもらっても?」
アザトースが許可を出すと、コウタは空中に何やら画面を表示させて調べている。調べ終わった後コウタは興奮した面持ちでアザトースに説明を始めた。知らない用語が多すぎてアザトースにはちんぷんかんぷんだったが、ステータスが上げられなくなったアザトースでも振るうことのできる武器だということだった。コウタから釘バットを返してもらった後ポーチの中に仕舞い込む。ポーチはコウタがくれるというので素直に貰うことにした。ただMPを回復してくれるポーションはきっちり回収されてしまった。
コウタの手に入れたものはなんだったのか聞くと、オスカーの使っていた炎を覚えることができる本だそうだ。アザトースは自前の魔術で炎を生み出せるので本に対して特に思うところはなかったが、コウタが随分喜んでいるところを見ると、なんというか気分がよかった。
「いやーよかったよかった...そうだアザトースさん、フレ登録しませんか?」
「.......ふれとーろく?」
欠片たりともゲーム用語を知らなかったアザトースに散々教えたからか、慣れた調子でコウタは説明する。狭間駅で落ちあえるとか相手がオンライン状態かわかるなど色々と説明されたが、要は一緒にまた遊ぶときに便利な設定ということだった。
「...とまぁ色々と言いましたが、なんというかですね。えーっと、僕と友達になりませんか?」
ぎこちなく調子で頬をポリポリと掻きながら友達になろうと誘いを切り出すコウタの言葉に、アザトースはうまく言葉を返せなかった。思い返せばアザトースと他者との関係は生まれてからずっと畏れを媒介とした主従関係だけだった。絶対の神であるアザトースに楯突く者はいなかったし、並び立とうと考える者も一人もいなかった。そんな自分にコウタは対等な関係でいようとする。知らない感情が渦巻いて言葉が出ない。長い時間が過ぎた後、アザトースはようやく口を開いた。
「................わたし、ともだちはじめて。ふふ」
「そうですか。僕とおんなじですね」
照れ臭そうに肩をすくめるコウタを見てアザトースはシンパシーを感じとる。なるほど、ともだちだからかと納得すると、また説明できないようなくすぐったさが心に残った。そしてしばらく二人で話していると、オスカーは持っていたバットを投げ捨てていたのにどうして今アザトースの手元にあるのか?という話題になった。コウタはゲームだから細かいことは気にしないほうがいいですよと言っていたが、アザトースはどうしても気になったのでバットを投げ捨てた方角へ歩き出した。そうして足を踏み出した瞬間にいきなり足元のアスファルトが崩れ落ち、コウタとアザトースは底が見えないほどに深い大穴へ飲み込まれていった。
オスカーの祈祷書
燃殻の神父 オスカーの持っていたページの端が焼け焦げた小さな本。読み解くことで正気度の喪失と引き換えに神炎の秘儀を知ることができる。
オスカーの身も心も焼いた炎、それは怨嗟でも怒りでもなくただの憧れだった。
追伸 PVが5000を超えました。嬉しい。
追伸その2 PVが6000超えました.....のびが凄くて心が追いつきません