攻略!迷宮魔城
遂にCastle of Labyrinthの扉は開かれた。リューショー達は固唾を飲んで一歩目を踏み込んだ。
「な…何だい?この靄掛かった迷路は」
「フッ、これじゃあボクの美しい容姿も台無しじゃないか」
「リューショー、これは?」
「あぁ、やはり書き換えによる森野の仕業だろう。視界が限られてる以上、オレの頭の中にあるダンジョンマップ通りに行きながら、探り探り行くしか、なさそうだな」リューショーを先頭に、一行は先の見えない迷宮をゆっくりと進み始めた。
「ヘイグ、ここを右に曲がったところに、魔法陣があって、そこに乗るとワープする設定になっていたのを覚えているか?」
「あぁ、宝箱を無視して、出口までの一番、無駄のない近道だよなぁ」ヘイグの言う通りだった。今までの道程で、高原地帯にしろ、スポークの森にしろ、ロスト・フォレストにしろ、あるはずの場所に、あるはずの宝箱がなかった。町中でもそうだったが、アイテムを手に入れる方法が、町の店頭で買うしかなかった。それは恐らく森野の "レアアイテム" を手に入れさせない為の陰謀と考えられた。
リューショー達は、右に曲がり、魔法陣を見つけた。
「とりあえずは靄以外の罠も、ありえるって事かい?」ゲームの世界を知らないフィリップスが聞いて来た。
「分からん。とにかく魔法陣に乗ろう」一行が魔法陣に乗ると、時空が歪んだようにその場から消え、再びある場所に現れた。しかしそこは四方を壁に囲まれた行き止まりの場所だった。
「クソ!本当ならここから北に道が延びているはずだぜ」ヘイグが言ったその時、いきなりリューショーの背中を激痛が走った。
「グヮーッ、クッ、敵だ!」背後には、この世界で一番の強敵、ターミネーター・レベル7が三体立ち塞がっていた。
「サンダー・ボルテージ」空かさずスターシャが呪文を唱えた。
「スターシャ、コイツらにマジカルは対して効かない。ここはマジカルパワーと武器攻撃を合わせた技を使うんだ!ファイヤ・スラッシュ」リューショーのMP8を使う、炎系呪文の全体攻撃で、ターミネーターのHPを半分ほどまで減らす事が出来た。
「ヌヌッ、サンダー・アタック」ヘイグをターミネーターの雷系攻撃が襲った。
「ヤバいね。リューショー、ヒーリングをかけるかい?」フィリップスがヘイグのHP回復を図ろうとしたが、リューショーは止めた。
「ヤツらの攻撃は、後、一体だけだ。フィリップスは防御をとってくれ」フィリップスが防御している間に、残りのターミネーターの通常攻撃が、リューショーを襲った。
「ヘィ、リューショー!もう限界じゃないのかい?ユーもヘイグもフラフラだよ」
「分かった。次の番が来たら、オール・ヒーリングを頼む」一度でも誰かが死んでしまえば、パーティの陣形も、一気に崩れてしまう。何より生き返る保証はどこにもないのだ。
「アタシから行くよ!ウィンド・ウィップス」スターシャの風系の鞭攻撃が炸裂した。これにより、土属性を持つターミネーターは、二体が倒れた。
「ヨッシャー、流石はスターシャちゃんだぜ!これでトドメだ!ウィンド・ストライク」ヘイグの斧攻撃で、ターミネーターを一掃した。
「フッ、どうやら間にあったみたいだね。さぁ、皆んなボクの魅力で元気になっておくれ。オール・ヒーリング」全員のHPが全回復した。
「ヨシ、一旦この部屋を出よう。もう一度魔法陣に乗るぞ」リューショーが魔法陣に乗ろうとした時だった。
「待ってくれ!この壁、何かおかしいぞ?」四方を取り囲む、北側の壁を、ヘイグが軽く押すと、グラグラと動いた。
「一回、思いっ切り蹴飛ばすぜ」ヘイグが壁を蹴ると、壁は容易く崩れ落ちた。
「おぉ、ナイスだ、ヘイグ」リューショーは思わず拍手していた。
「なぁ、リューショー。ゲームを作る上で、ダンジョン形成は結構、労力がいるだろ?森野がどれほどのクリエーターかは知らねぇけど、こうやって全体に靄をかけたり、ダミーの壁を築くくらいしか、対抗策がねぇんじゃねぇか?」
「アタシもそう思うね。結局、クラウドタウンにドンボルゲを送り込んだ事に時間を用し過ぎて、他のトラップを形成する余裕がないのさ」
「フッ、このくらいの細工なら、ボクでも簡単に出来るね。所詮その程度の男って事だね」三人の言葉を聞いて、リューショーは専門学生時代の事を思い出していた。
『おい、滝沢。お前さぁ、後輩共の力を借りんと自分のイメージしたものを作る事も出来ないのか?』森野は滝沢をバカにしたように言って来た。
『何を言ってるんだ、森野。人には誰しもが得手、不得手と言うものがある。オレは万能のつもりはない。天才でもない。オレに足りないところを後輩達に頼って何が悪い?』普段から一人で作業をする事が多い、森野を気遣った滝沢の言葉だった。
『フン、お前は自分が天才じゃないと認めるんだな。良いか!オレは天才だ。だから誰もオレについて来れないんだ。あんな役立たず共と、仲良くサークルごっこなんてしてる暇はねぇ。お前とオレの差は、これで決まったな』森野は能力の優劣を、出来上がった作品そのものよりも、個人の能力を重視していた。
『お前には言っても分からんようだな。まあ良いさ。オレは自分にないものを持つ人間を頼ってでも、良い物を仕上げる。お前はお前でやると良いさ』このやり取りの後、森野は専門学校を主席で卒業し、大手ゲームメーカー "TGKプランニング" に入社した。一方で滝沢は、まだ当時、ゲームメーカー会社としては、大した実績もなかった新設会社 "DGP企画" へ入社したのだった。
しかし、その後に社会に出た二人の差が生まれて行った事は言うまでもない。
「ヘイグ、否、小園。クリエーターとプログラマーの違いが何だか分かるか?」急にリューショーから滝沢に戻った物言いに、小園は面食らった。
「そ…そりゃあクリエーターはゲーム全体を創作するプロデューサー、プログラマーはそれを実際の形にするディレクターって事でしょ?」ヘイグも小園に戻って答えた。
「そう、森野はクリエーターとしては、もしかしたらオレよりも上かも知れない。しかしなぁ、オレと森野の違いは、プログラマーを意のままに操る事、と言うより、自分の頭の中をプログラマーに上手く伝える事が出来ないんだ」リューショーの言葉にスターシャも和倉に戻って柏手を打った。
「分かる、分かります。あの森野、他人を見下したトコがあって、自分の思い通りにならなかったら、突然気分を悪くして "誰も俺に近付くなオーラ" みたいなの出すんですよ。だから気が付けば、皆んなが滝沢先輩の元に集まってるんですよねぇ」
「そう言う事さ。敵は森野一人、それに対して、オレ達は強い絆で繋がった、この四人がいる。もう怖い物なしさ。さぁ、行こう」
その後も滝沢の頭にあるダンジョンマップ通りに進んで行き、途中で仕掛けはあるものの、全てが子供騙しの安物なものだった。そして遂に、一行は最後の砦 "タイガーストリーム" の入口に立った。
「ヨシ、先生の事もあるし、皆んな、ここでブレイブ・エン・ズラックを使うぞ」滝沢達は、川上 新次郎が待つであろう、現実世界へ帰って行った。




