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川上との思い出

クラウドタウンに戻ったリューショー達一行は、相変わらずの曇天どんてんとした空を見上げた。

「相変わらず陰気いんきな町だねぇ。本当、気が滅入めいっちまうよ」スターシャが両手の平を真上に向けた。

「しかしよぉ、何か町の住人達の様子が少し違くねぇか?」ヘイグは町中を見渡した。

「そうだね。きっとボクの魅力みりょく魅了みりょうされて、皆んなヒーリング効果を得たのさ」フィリップスが前髪を掻き上げた。

「フィリップスの魅力は置いといて、どうやら道具屋や武器屋も営業を再開してるみたいだ。行ってのぞいてみるか?」リューショーに言われ、一行は道具屋へ向かった。

「どうやらここにはガイスト・メディシンは売ってないみたいだなぁ」ヘイグはガッカリして言った。

「多分、川上オッさんのプログラミングが追い付いていないんじゃないのかい?何か神様になって登場したりしたから、そんな暇はなかったのよ」スターシャがクールに言った。

「なぁ皆んな。一旦、現実世界に戻らないか?オレはどうも先生の消え方が気になって仕方がない。上手く言えんが、変な胸騒ぎがおさまらないんだ」神妙な面持おももちでリューショーが言った。

「リューショーの言ってる事は分からなくもないさ。でもさぁ、奥さん…もといカリン姫はどうするんだい?先生の話しじゃ、一刻の猶予ゆうよも許されないんじゃないのかい?」フィリップスの言う通りだった。しかしリューショーは、どうしても、このまま次に進む気にはなれなかった。

「前にも言ったが、オレの都合で皆んなを巻き込んでしまい、オレは誰にも犠牲ぎせいになって欲しくはないんだ。それは先生とて同じだ。先生も我々の仲間なんだよ」リューショーの言葉を聞いて、一同は川上とのやり取りの日々に思いを巡らせていた。


『うん、行ったみたいやなぁ、ほならモッサ君、行くでぇ!』

『光子…光子!生きとったんかぁ!ボクが誰か分かるやんなぁ。兄ちゃんやで』

『こないな考え方をしとったら、電子の世界は凌駕りょうが出来ひんで、加藤君』『いえ、後藤です、先生』


「うーん、あまり良い記憶はないね」

「あーっ、鳥肌が立ったじゃん!変な事を思い出した」

「モ…モッサ君…」三人には、どうやら川上に対しての良い思い出はないらしい。もしかしたら、滝沢とて、可憐かりんの事がなかったら、同じだったのかも知れない。

「な…何だ、皆んな反対なのか?」三人の浮かない顔を見て、リューショーは問い詰めた。

「反対って言うかよぉ、別に今直ぐに戻らなくても良いんじゃねぇか?」

「そうさ、アタシらが戻ったからって、オッさんに何が出来る訳でもないしさぁ」

「ボクも賛成だね。大体、人の名前を覚えないって言うのは、相手に対して失礼極まりないね」三人がリューショーの意見に揃って反対するのは初めてと言っても良いのかも知れない。流石にリューショーも折れるしかなかった。


「分かったよ。皆んなの意見を尊重しよう。その代わりと言っちゃ何だが、迷宮魔城は心してかかってくれ。"ドラゴン・ストリーム" を作る時、オレは迷宮魔城に一番力を注いだ。だから一応、オレの頭の中には迷宮の攻略方法もダンジョンマップも入ってる。しかし森野ヤツの事だ!どんな書き換えをほどこしているか、どんなわなを仕掛けているか分からない」リューショーの言葉を三人は真剣な顔をして聞いていた。

「ヨシ!いざ、迷宮魔城へ」リューショー達は今ある最高の装備を整えて、クラウドタウンから、ほど近い、"パンドラの箱" と言って良い、迷宮魔城の入口の鍵を開けた。

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