スポークの森
アルフレックスからクラウドタウンに行くまでには、迷宮の森と言っても良い幻の森を抜けなければならない。占星術師スターシャが占った通り、この森の中で、敵兵であるカウンター達の襲撃を受ける事になっていた。
しかし、リューショーにとって、川上が言った "不穏なプログラムの書き換え" と言う言葉が妙に引っかかった。恐らくは森野 虎次郎による策略である事は想像出来たが、森野を良く知る滝沢と言えど、考え方が根本的に違う森野が、どのような策略を施して来ているかは、詳細には分からない。だからこそ、川上の作った "Bleib und zuruck" の呪文が鍵になるかも知れない事を覚悟していた。
スポークの森に突入して、しばらく、リューショー達の目の前に敵兵が現れた。しかし、始めに出る予定のエスクワイヤーと違い、いきなりカウンター四体が現れた。
「さぁ、出たよ!アタシのアイス・トルネードで一層して…」スターシャが得意の氷河系呪文でカウンターを一層しようとした時、リューショーがそれを止めた。
「イヤッ、待て!スターシャ!フィリップスに攻撃力増強呪文だ!その後でフィリップスのウィップスで攻撃だ」リューショーの指示で、スターシャの呪文の後、フィリップスがウィップスで全体攻撃を仕掛けた。それにより、四体中の三体が死滅した。
「ヘイグ!とどめだ!」残りの一体をヘイグが通常攻撃で仕留めた。
「へぃ、リューショー!何であんな攻撃を指示したんだい?もっとスマートに殲滅させられたろう?」フィリップスの言葉にリューショーは返した。
「オレ自身もそうとは思う。しかし、いきなりカウンターが襲って来るのはおかしい。皆んな、ここに来る前の川上先生の言葉を思い出してくれ。これは恐らくはゲーム首謀者の強い意志が感じられる。ここからは慎重に進めて行って、最悪は先生の下さった呪文、Bleib und zuruckが必要になるかも知れない。皆んな、心してかかってくれ」リューショーの言葉を聞き、一同は固唾を呑んで聞き入った。
しばらく行くと、カウンター二体にナイト一体の敵兵が現れた。
「えっ?何でこのレベルでナイトが現れるんだよ!」ゲームの世界を熟知するヘイグは発言した。
「言ったろ?森野の考えそうな事さ」
「どうすんのさ!リューショー」スターシャ役が板に付いて来た和倉ことスターシャが言った。
「ここは川上を信じる!スターシャ!サンダー・ボルテージだ!」リューショーの司令により、スターシャのサンダー・ボルテージが炸裂した。属性に関係ない雷系呪文はナイトを一体残し、殲滅した。
「後はオレに任せろ!ルビー・ド・スラッシュ!」MPを使わないルビーソードを使った剣技により、リューショーが最後のナイトを仕留めた。
「良し!皆んな、良いか?この調子でこの森を出来る限り進むぞ!そして、ギリギリのタイミングでBleib und zuruckで脱出して、森野の出方を伺いながら進んで行こう」
リューショーこと滝沢 龍昇にとって、この戦いは、愛する妻、可憐を救う為の戦いであり、またそれに参戦してくれた仲間との共闘でもあったのだ。
滝沢はその狭間の中で、胸が締め付けられる思いをしていた。




