ゲーム世界の真相
「なるほどねぇ。つまりは年功序列みたいなモンじゃないッスか?」実力的には小園 誠の方が上ながら、滝沢の後釜が寺尾 文宏になる事が納得出来ないのか、和倉 瞳はその事を年功序列のせいにして言った。
「イヤッ!それは違いますよ。だって滝沢さんは寺尾さんより二つ年下ですから。まぁ、入社は滝沢さんの方が三ヶ月ほど早いらしいですけど。
でも、やっぱり決め手は滝沢さんの出世作と言っても良い"フライング・ターゲット"シリーズですね。ボクが高三の時かな?あのゲームに魅せられてDGP企画入社を目指したようなモンですから」小園は当時を思い浮かべながら、懐かしそうに語った。
「ウン、分かる!分かりますよ。アタシは当時は専門学校の卒業を控えて、進路に悩んでた時にあのゲームを知って、小園さんとは逆に編集者の道を選んだような所がありますから」新橋駅近くのイタリアンバルにて、気の合った二人が、更に意気投合させている頃、タイガーストリーム内では、とある画策が施されていた。
「フッ、滝沢のヤツ、プレーの方も中々のセンスを発揮しやがる。しかも気に要らねぇのが、ヤツの仲間だ。瞳まで巻き込みやがって…
しかし、次のイベントで、お前の魂は永遠にゲーム内を彷徨う事になるんだよ!そしてカリン姫は…イヤッ!可憐さんさえもオレのものになるんだよ。フッフッフッ」
翌日の就業後、N大電子光学部、川上研究室に集った四人の戦士達に川上は言った。
「エエか?皆んな。今から重要な話しをすんで!こっからは不穏なプログラムの書き換えがあって、正直なトコ、ボクにも何が起こるか分からん!せやから、それに対抗する為に、ボク独自のある呪文をプログラミングさせてもうた。これはホンマにヤバい事があった時に、リューショーのMPを100消費する特別な呪文や」メロンパンを片手に川上は真剣な面持ちで話した。
「それって戦闘中なんかでも有効と言う事ですか?」川上のいつにない真剣さに滝沢も覚悟した表情で返した。
「せや!その為に、アンタのMPは常に100以上残しとく事をお薦めすんで!何せ、この後の世界は、アンタどころか、書き換えた本人しか知らん世界やからな」滝沢は川上の言葉を聞いて、森野 虎次郎が不敵に微笑む姿が脳裏に浮かんだ。
「そ…それでその呪文と言うのは…」滝沢は唾気を呑み込んだ。
「それは… Bleib und zuruckや」
「ブ…ブレイブ・エン・ズルァックですか?」
「せや、まぁドイツ語で言う所のStay and Returnちゅうトコや」川上は医師らしく、呪文にドイツ語を流用していた。
「なるほど!その場に留まったまま、戻って来ると言う事ですね」滝沢は納得したように答えた。
「ウン、この呪文を使たら、一旦、研究室に戻って来て、作戦を立て直すなんかして、回復もしたまんま、その続きを出来るっちゅう、何とも都合がエエ呪文や」川上はメロンパンを齧った後、カフェオレのストローを吸った。
「確かに都合が良過ぎますけど、大丈夫なんですか?普通、プログラムの書き換えは一つのデータベース上じゃないと出来ないはずですけど」コンピュータに詳しい小園が口を挟んだ。
「それは大丈夫や。そもそもが滝沢さんがこの世界に入った時…と言うよりも、滝沢さんの奥さんがこの世界に入ったゲームの世界と、一般に流通しとるゲームの世界は別世界なんや。恐らく、このゲームを作った人間が何かの考えがあってそうしとるんやと思う。詰まりは滝沢さんを挑発しとるんや!」黙って聞いていた和倉 瞳は、今までの話しの流れと自分の記憶を合わせ考えて、複雑な心境になった。
「こっからは、このゲームの向こう側に居る森野とボクのプログラミング対決にもなって来るやろ!奥さんを救う為にもボクも協力は惜しまへんからな」滝沢は川上と初めて出会った時に、変人扱いをしてしまった自分を恥じると共に、この天才学者との出会いに感謝した。
「とにかく、ブレイブ・エン・ズルァックや!忘れるんやないで!」川上はそう叫んで、リターンキーを四回続けて押した。
四人の戦士達はアルフレックスから次の町、クラウドタウンを目指し旅立った。




