第三話 「蹴」
京次郎は何処かへ向かっていた。
仲間の二人とあてもなく。
ふらふらと彷徨って、宿に泊まって。
たまに喧嘩をふっかけられて。適当にあしらう。
つまらない喧嘩は買わない主義だ。
昼頃になって、京次郎は適当な店に入った。
「いらっしゃい!」
(洋食……)
三人は端の席に座った。
「おい京次郎、このライスカレーとかいうやつ食ってみろよ。」
幸四郎はメニューを指差す。
「無理だ。」
「いいじゃん食おうぜ!」
「マズかったらどうする!」
幸四郎は勝手に頼んだ。
「ほら食え!」
「無理だ!やめろ!萬次郎!」
萬次郎は京次郎を羽交締めにし、幸四郎はスプーンを運んだ。
「……」
食ってしまった。
「どうだ?!」
「……うまい……」
萬次郎と幸四郎も頼んだ。
萬次郎はスプーンを口に運ぶ。
「美味いなこれ。毒かと思ったが。」
「何故毒になる。」
京次郎は呆れた。
萬次郎のスプーンは止まらない。
「もう一個頼もうかな……」
「金!」
しばらくして、店を出た。
「次どうするよ。」
「映画行こうぜ!」
萬次郎は京次郎と幸四郎の肩を組んで走り出す。
「おい!」
京次郎は少し転びそうになりながらもついてゆく。
「つまらなかったら京次郎の奢りだ。いいな?」
幸四郎が提案する。
「……まあいいぜ。」
三人は洋風の建物に入った。
少しして、三人はやつれた顔で出てきた。
京次郎は壁に寄りかかった。
「前説がヘタクソだった……」
萬次郎は隣に寄りかかった。
「ヘタクソ活弁士だったな……」
幸四郎は座り込む。
「三人分……六十銭が……無駄に……」
京次郎は近くの放置された桶を蹴り飛ばす。
「クソ……もう映画は見ない!」
「金返せ活弁士!」
萬次郎は壁を殴った。
「落ち着け……」
幸四郎は死んだ顔で座ったままだった。
「クソ……帰る!」
京次郎はいつもより早い足取りで帰った。
第三話 「蹴」




