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風来  作者: 無頼
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第一話 「流」

大正七年

京次郎は十五歳であった。

ただ、彼は喧嘩に明け暮れていた。

喧嘩でツが切れた弊衣破帽。

マントに朴歯下駄。

蛮カラな中学に通う学生だった。

切れ目の三白眼。

伸びた襟足。

いつでも眉を少し顰めていた。

勉強はできていた。

尋常小学校の教師の手記にはこうあった。

「鐵京次郎。非常二素直デアリ、真面目デアル。」

ただある時から彼は変わった。

原因は彼の性格にあった。

彼はもともと疑い深い性格だった。

そして、勉強は親の影響でやっていた。

親に言われて行なっていた。

親は質屋であった。父母ともに勉強家であった。

とある時、彼はこのままでは操り人形ではないかと考えた。

それは、親からの圧であった。

成績の厳しい下限を作られ、自由はなかった。

そして彼は、いつからか喧嘩に明け暮れた。彼には仲間がいた。

幸四郎、萬次郎だ。

二人とも、同じような奴だった。

京次郎は常に群れるという訳では無い。

基本一人で喧嘩をする。

元々群れるのは嫌いだからだ。

だから彼はずっとずっと一人だった。

それに満足していた。一人で殴り合い、警官を殴り、金品をかっぱらう。

日常茶飯だった。それが全てだった。

(今日も来るかもな……)

来ると言うのは、刺客のことである。

刺客といえども、チンピラだ。

喧嘩を売って、恨みを買って。

ナイフ、木刀、そんなものは当たり前。

下駄を手に嵌め、酒瓶を投げ。

誰かも知らぬ家の中にある小瓶を投げ。

たまに家の金庫から金を取り出し、映画を見たり。

彼は自由だった。

思うがままに生きていた。

性格が変わっても。

ただ、景色は変わらなかった。

路面電車。

朝の社会人の雪崩。

夜の警官の見回り。

京次郎は大変退屈していた。

米騒動の騒ぎは少し刺激になっているが。

だから毎日喧嘩していた。

退屈しながら。

そして今日も。

始まったばかりの今日も。

第一話 「流」

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