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新緑騎士団  王都No.1人気の騎士団に男装して潜入し、生き別れた兄を探します  作者: 北村 清
第六章 ローゼンリール邸放火事件

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犯人

アレクは驚いた。


襲撃そのものは予測していたが、その場にはユリウスが手紙で同行させないと書いていたフロルもいたのだ。


更に、警備兵とおぼしき人達もいた。その数十人以上。

その為、襲撃者達はほぼほぼ制圧状態にあり、既に何人かは捕らえられ拘束具をはめられていた。

河原は血で染まっており、それを見たイルムヒルトはガタガタと腰を抜かしそうな程震えていた。


「カイト殿。林の中にもう一人いる!」

エーデルガルトにそう言われアレクはエーデルガルトの視線を追った。


男が一人立って、捕物の様子をじっと見ていた。フードを目深に被っている為表情は窺い知れないが、そのフードは豪華な刺繍を施した明らかに高級品だった。貴族だ!とアレクは思った。


アレクが走り出そうとすると

「エーデルガルト様から離れないで。エーデルガルト様を守って!」

とイルムヒルトが叫んだ。


しかし、当のエーデルガルトは

「カイト殿。行け!」

と叫んだ。アレクは走り出した。


イルムヒルトやエーデルガルトの声で危険を察したフード男が走って逃げ出した。その走り方が明らかに普段運動をしていない者の走り方だった。挙句、木の根につまずいて顔からこけた。アレクは首を押さえフードを剥ぎ取った。


実はアレクは逃げようとした男はユージィンなのではないかと思っていた。だが、男はアレクとは面識の無い男だった。歳はおそらく二十代前半。美しい金髪をしていたが、その下の顔はぞっとするものだった。

もしかしたら、元々の造作はそれなりに、いやかなり美しかったのかもしれない。だが、今目の前にいる男は頬がこけ目の下には色濃い隈があり、血走った目ばかりがギラギラとギラついていてまるで御伽噺に出て来る幽鬼のようだった。


「離せ、貴様俺を誰だと思っている!」

「やましい事情を抱えた不審者だろ。そうでないなら何故逃げたのだ?」

「貴様が追いかけて来たからだ。離せ、このような無礼、処刑に価するぞ!」

「あんたの意見より侯爵令嬢の命令の方が私には大事でね。」


アレクの側にその侯爵令嬢がやって来た。


「久しぶりだな。アウレール・フォン・バルトロメウス。」

「おい!こいつをどうにかしろ!」

と男は叫んだ。エーデルガルトに対してひどい口調だと思ったがエーデルガルトは肩をすくめただけだった。


その間に、河原での捕物も終了しようとしていた。アレクに気がついたフロルが

「アレク様ー!」

と言いつつ仔犬のように走り寄って来る。だがアレクの隣にエーデルガルトがいるのを見ると、ぎょっとした顔をして顔を背けた。


「アレク!」

と言いつつユリウスとヴェルギール、そしてシュテファンもやって来た。オーラフはいない。彼を病院に残したという話は本当の事のようだ。


「ユーリ、あの手紙は何だったんだ?」

既に何かの事情があったのだろうという事をアレクは察していたが、わざと怒ったような声を出した。


「すまない。内通者を炙り出すため仕方なかったんだ。」

とユリウスが言う。その横で。


「ユリウス様は嘘を書いたわけではないんです。本当の事なんです。」

とフロルが打ち萎れて言った。


「どういう意味だ?」

とアレクが聞く。」

「本当に私が情報を流出させていたんです。」

「話してくれ。」

とアレクが言うと


「ポーポーだろ。」

とエーデルガルトが言った。


「こいつはポーポーに情報を書いて送った。それ以前にもグリューネバルトの領館で僕らに自分たちの行き先を告げていた。そして『こちら側』の人間がカイト殿が押さえつけているその男に情報を流し、その男がゴロツキを雇って新緑騎士団の隊長達を襲わせた。」

「その人、誰ですか?」

と、フロルがアレクが組み伏せている男の正体を質問した。


「アウレール・フォン・バルトロメウス。国王の愛人からの寵愛も妻も他の男に奪われたマヌケだ。」

アウレールはエーデルガルトを血走った目でにらみつけたが、エーデルガルトは微動だにしなかった。


「新緑騎士団の隊長の生首を皿に乗せて国王の愛人の所に持って行ったら、寵愛を取り戻せるとでも思ったのだろう。あるいは誰かに唆されたのかだな。」

「この男が白葡萄荘でヴェルを殺そうとしたのですか?」

とシュテファンが聞いた。


「いや。ローゼンリール家の財産を焼くなんてそんな真似、こんな小物にはできないさ。それを指示したのは。」

エーデルガルトは後ろを振り返った。


「おまえだろ。イルム。」



「な・・何を。エーデルガルト様。」

「最初に違和感を覚えたのは、伯爵夫人に亡き伯爵の友人がローゼンリール家の別荘で殺されかけたと聞かされた時だ。僕は状況が全く理解できず、どこの街の別荘か、いつ頃起きた事件なのか、友人は何歳で何者なのか、友人の性別は?と質問をしようと思った。だが、イルムはすぐに継母の仕業に決まっていると断定した。その時、その事件が起こった事を既にイルムは知っていたのだと思った。」

「・・・・。」

「だから、書斎で書類を探していた時、後からイルムが確認を済ませた書類を確認してみた。そしたら案の定、手掛かりになる書類が見つかった。見つけていたのに僕やカイト殿にそれを言わず、むしろ隠そうとしたんだ。襲撃は常に鳩が届いて数時間後に起きた。ポーポーやクークーが届けてくれた手紙の内容をその男に伝えていたのだろう。そもそも、もう一方のグループにポーポーとクークーを渡そうと言い出したのはイルムだものな。」

「・・・・。」

「残念だよ、イルム。裏であの継母と繋がっていたなんて。」

「違います!わたくしは決して。この男とて利用してやろうと思っただけです。この男を上手い事唆せたらエーデルガルト様との婚約を解消してやると、ユージィンに言われて。だって、この男が死んだらユージィンはこの男の妻と結婚できるわけだから!」

「貴様ーー!」

アレクに押さえつけられているアウレールがわめいた。


「あ・・あの、ユリウス様。私、さっぱり状況がわからないのですが。」

フロルがそう言ってユリウスの服のそでを引っ張る。


「うむ、私にもさっぱりわからん。」


「襲撃して来たのはあの男が雇った連中だ。でも黒幕はあのおばさんだ。俺とおまえを焼き殺そうとした黒幕もあのおばさんだ。誰と誰が婚約してるとか結婚とか不倫とかは今は考えるな。」

とヴェルギールがフロルに言った。


そのヴェルギールを眼光鋭くイルムヒルトは睨みつけた。


「おまえが死ねば良かったのよ!おまえになんか生きている価値などないの。おまえさえ死ねば!」

「はいはい、そうですか。そういうおばさんの方が俺の中では生きてる価値がないんだけどな。ま、でもおばさんの余命もそんな長いもんじゃないだろ。貴族の屋敷を燃やすのは重罪だからな。」


イルムヒルトは歯が折れそうなほど歯ぎしりした後

「リーナの居場所はわかったの?」

と質問して来た。


「・・いや。ルリさんは居場所を知らなかった。」

とヴェルギールは言った。嘘だ。とアレクにはわかった。嘘をつく時ヴェルは耳を触るクセがある。だが、イルムヒルトは騙されたようだ。満足そうに微笑み

「リーナは、ローゼンリール領にはいないわよ。」

と言った。


「どこにいるか知ってんの?」

「知らないわよ。たとえ知っていてもおまえなんかに教えるわけないけどね。永遠に見つからないリーナを探し続ければいいのだわ。あはははは。」


そう言った後、服の袖から小瓶を取り出しイルムヒルトはそれを一気にあおった。


「・・イルム。」

エーデルガルトが目を見開く。


二度、三度、激しく痙攣し、その後イルムヒルトは吐血した。一分後には完全に絶命していた。

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