01.見るということ。見えるということ。
駄文を書き連ねて三千里。
なにかに投稿することで継続できるんじゃないかと思った所存でござい。
(見えるって、素晴らしいなぁ。)
昔から僕は、左目が見えなかった。
両親が言うには、2歳の時にゴジラの人形の背中が目に刺さってしまったらしい。
それ以来僕は、立体に見ることが出来なかった。もちろん体育は厳しいし、遠近感を捉えるのも苦労した。
けど、今は違う。
どうやら神様は意地悪と恩寵を同時に与えるらしい。
(さて、どこだここ。)
僕は硬い木製のベッドの上で横たわっていた。
「知らない天井だ。あー、うん。声は出る。出ているはずなんだ。何を言っているかもわかる。けど何だこの言語。」
日本語で普通に発声しようとしたはずが、自分の喉から知らない音が飛び出した。
音的にはスパニッシュに近いだろうか?自分は巻舌ができなかったはずだが、意識しなくともふつーに声に出せる。不思議な感覚だ。
「おい!生きてるか!?」
(ああ、この人は僕の父親だ。)
知っている。いや、身体が識っているのだ。この僕はルーカス・ニコラ。この人の名は、ロダン・ニコラだということを。
「お前、右目見えるのか?というかお前、右目が黒いぞ。」
「?。うん。このとおりばっちり。2キロ先のカモだって一匹残らず数えられるよ。」
「隣のマルコがお前を見つけた時、右目に木の枝が奥まで貫通してたって聞いて、もう二度とお前の両目が拝めないかと母さんがずっと心配してたんだぞ。動けるんだったら、母さんに顔見せてやってくれ。ルミエの世話だけでも大変なんだ。お前が倒れちまったら、さしもの母さんも耐えられねぇ。」
「うん、直ぐに行ってくるよ。」
香草の匂いがする。きっと母さんが鶏の香草焼きを作っているのだ。
「母さん!いい匂いだね!」
「ルー!?良かった。右目も見えるのね。傍についてやれなくてごめんね。痛かったでしょう。」
「もう大丈夫!今夜のご飯は鶏さん?美味しそう!」
「よく分かったわね。お腹いっぱいになるまでしっかり食べて、大きくなるのよ。」
「うん。もちろん!」
さて、整理しよう。
おそらくこの体の持ち主、ルーカスは死んでいる。
何故ならばこの体の最後の記憶が、木から落ちて枝が顔へ貫通するという最悪オブ最悪な記憶が残っているからだ。助かるはずもない。
なぜ僕がこの体に入ったか。
心当たりは一切ない。というか、地球で暮らしていた自分自身の最後の記憶が無い。果たしてベッドの中で急死したのか、トラックにはねられでもしたのか、はたまた元の自分は実は素知らぬ顔でふつーに今も生活してるのかもしれない。それはそれで死んでいるよりマシかもしれないが。
そしてひとつ厄介なことがある。
明らかに右目と左目で見えているものが違うのだ。
そして右と左、そのどちらもが、僕の知っている視界のそれではない。
左目は今、この部屋の全てを見ている。
机の上のペンや本、天井の木目、ベッドの下の埃だまり。そしてそれは注視をすることで、手に取るように観測できる。
立体視と遠近感は左目だけで完結している。
果たしてもう一点はどこに存在しているのだろう?
いや、自分の真後ろが見える時点で大概なのだが。
右目は今、この部屋に存在している何かを見ている。
こちらは左目と違って視界に入っていなけれ分からないのが難点だが。
いくつかのレイヤーに分かれて、様々なものが見える。
風の流れ。僕の今の不安な感情。それと……
レイヤーの深く。いくつも重なった視界の底で、なにかを見つけた。
「なんだろう。この強い歪み。」
そっと触ってみる。
───刹那
僕は意識を失った。
「おーい晩御飯だぞ。っておい大丈夫か!?」
「あれ?今僕床で寝てた?」
「寝るっつうか気絶だろ。休んどけもう。起きたら俺が火を入れ直してやるから。」
「そんな。薪がもったいないよ。もうすぐ春なんだ。それにほら。僕の部屋までいい香りが漂ってる。一緒に食卓につこうよ。」
「……無理しなくていいからな。なんかあったら直ぐに言えよ。」
優しい親父だ。まぁ見た目にはほぼ即死、生きてても後遺症が残るのは必至な事故だった。
俺なら必要以上に過保護になっていた所だ。そんな状況でしっかりと俺のことを見てくれている。
俺にとっては出会って間もないが、信頼できる人だと感じた。
夕食は楽しいものだった。
妹、ルミエールの成長や、僕の右目が黒くなった話、両親の新婚みたいなイチャつきなんかで、何とか今日一日のイベントは終わった。
さて、
「湯はもうわかしてあるの?」
「ああ、俺と一緒に入るだろう?」
「今日ちょっと寝すぎであんまり風呂に入る気分じゃないんだ。少し散歩しちゃダメかな。」
「ダメだ。さっきだって部屋で寝てたじゃないか。今日はもう大人しく床につけ。」
「庭先でいいからさ。そうだ親父。一緒に鬼ごっこしようよ。母さんとルミエがお風呂出るまで。」
「あなたが見てくれるならいいんじゃないかしら。」
「あんまりこいつを甘やかしすぎると俺みたいになっちまうぞ?」
「色男になるんだったらいいじゃありませんか。」
「……少しだけだぞ。お前が俺に捕まったらでいいか?」
こうして僕と親父との、初めての本気の鬼ごっこが始まった。
お前その名前は文化圏おかしいだろというド正論は受け付けません。
俺のナーロッパだとフランスの名前とスペインの名前とアメリカの名前は同じ村で発生するんだい!




