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この街で君と出逢った  作者: 二条 光
20/20

帰省/プチ同窓会

「慎吾、車出してくれてありがとう」


 夕方。

 かおりは慎吾――正確には慎吾の母・ミヨちゃん――の車・“ミヨちゃん”の後部座席に乗り込む。

 助手席には美奈子――かおりが、高校時代の元彼・巧と別れたことを慎吾に教えた人物――が乗っていた。


 木戸兄弟と分かれてからあの後結局寝て過ごしてしまい、わずか一時間前に起きた。


「ねね、かおりのカレシってどんな人? 大学生?」


 美奈子は後ろに少し体を傾けて早速訊く。


「うん」

「ねぇねぇ、かっこいい? かっこいい? かっこいい?」

「あー、多分?」


 かおりは気恥ずかしそうに美奈子から視線をそらした。


「マージで~! いいな、イケメン!」

「う~ん」


 かおりは曖昧に笑う。


「その人の画像ないの?」


 一瞬平和公園で写真を撮ったことがよぎるが、すぐに「ううん、ないよ」と首を振った。


「えー絶対今のウソでしょ!」とわざとらしくジトっとした視線を送る美奈子。


「ホントホント」

「あやし~! あとで絶対きいてやるし」

「ハイハイ」



 その後は同級生の近況を、これまた美奈子がほぼ独壇場で語り、“ミヨちゃん”は高校のプチ同窓会場に着いた。


 プチ同窓会場は、友人・深見優奈フカミユウナの両親が経営する居酒屋。

 当初、十人程度で集まる予定だったが、あれよあれよという間に四十人近い人数が集まることになっていた。あまり広くない店内にそれだけの人数が入るということで、今夜はほぼ貸し切り状態だ。


 三人が店に着くと、すでに二十人程がいてバラバラに座っていた。


「らっしゃい」

「いらっしゃいませっ」


 職人気質の父親はあまり接客が得意ではないようだ。若干無愛想にも思えるような挨拶をした。それをカバーするように、元気な挨拶を母親がする。

 それだけでも、夫婦二人で仲睦まじく切り盛りしている様が伝わってくる。


「久しぶり~!」


 その二人の娘・優奈が満面の笑みを浮かべて、駆け寄ってきた。


「カレシ元気?」

「うん」


 美奈子がニヤニヤしながらさっそく優奈に訊くと、あまり両親にはきかれたくないのか、カウンター内にいる父親をチラチラと窺いながらも、優奈は照れくさそうに頷いた。


「二人は?」


 そう言いながら、美奈子と慎吾を交互に見る優奈。


「相変わらず仲いいみたいだけど。付き合ってないの?」

「あ、うちら?」


 美奈子は隣に立つ慎吾をチラリと見やる。


「別に付き合ってないね~。まぁやることはやってるけど」


 そして、ギャハハと口元も押さえず、豪快に笑い飛ばした。


「そうなんだ。ハハ」

「ぶっ」


 優奈はさすがにそんな答えが返ってくるとは思わず、乾いた受け答え。

 一方、幼なじみであるかおりは慎吾の素行を子どもの頃から承知しているため、思わず吹き出し、苦笑いを浮かべながら、「ついにヤッたか」と慎吾を見る。

 当の慎吾は居心地が悪そうに他所を向いていた。



「優奈、お客様をご案内して」

「あ、はい。こちらどうぞ」


 優奈の友人といえど、今夜は客として来ているかおりたちを立たせたままでいる娘に、母親が上司として声を掛けると、慌てて優奈は奥のほうへ案内した。


 いったんは案内された場所に腰を下ろした三人だったが、すぐに高校時代、他にも親しかった友人のもとへバラけた。



 続々と会場入りする同級生たち。


 そのうち、男子の団体が到着。そのほとんどがサッカー部の面々でその中にかおりの元カレ・佐々木巧の姿があった。


(あ、……)


 別れてから初めての再会。

 巧はかおりに気づいていないのか、気づいていて素知らぬふりをしているのか、こちらに視線を向けている様子はない。


 いざ巧を見つけてしまうと当然彼のことに考えがいく。

 もう別れたのだし、今は龍之介という大事なパートナーもいる。本当ならば、もう彼に関わる必要などない。

 しかしながら、直接会ってちゃんとさよならをしたいと思っていたため、二人で話せる時間がほしいと思った。


 サッカー部は彼女たちが在籍中あと一歩のところで全国大会という位置にまで活躍していた。そのため、人気のあった彼らはもみくちゃにされながらかおりから離れた場所に座った。


 後で話す時間がほしいな。


 まだまだ時間はある。なんら焦ることはないとかおりは自分に言い聞かせると、幾分落ち着いた。

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