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三戦目に突入するに至り、双子が追加ルールの説明を始める。
⑪なわとびが増える。
⑫鬼が増える。
⑬増えた『なわ』も鬼も透明になる。
⑭不可能な『なわ』の張り方が可能。
しかし巡士考太はずっと疑問だった事を口に出す。
「質問してもいいか?」
律義に手を上げて進言する巡士考太に、双子はキョトンとするも快く頷いてくれる。
「「いいよ」」
「鬼が増えるっていうけど、どうやって増えるんだ?」
「負けちゃった子の身体を使うんだよ。ほら、さっきの愛海お姉ちゃんとか」
その言葉を聞いて、少しだけ嫌な思いが心に広がる。しかしそれを拭い去るように首を振ると、続いての質問を口にする。
「じゃあ、透明の『なわ』っていうのは?」
「うー……と、僕らが今持っているビニール製と似たような物だよ。安心して、ちゃんと見えるようにキラキラ光るようになってるから。まあ、見えにくいかもしれないけど」
「なるほど」
そこまで聞いてゲームの仕組みを理解し始める。ならば、とさらなる問いかけを巡士考太は口にする。
「そういえば、お前たちにもルールはあるのか?」
「「あるよ」」
「聞いても平気か?」
「うん」
双子が答える。
鬼たちのルールはこうである。
①ゲーム参加者に物理的な攻撃はしてはいけない。
②鬼に危害を与える、または与えようとした場合のみ①のルールは適用されない。
③ゲーム参加者はゲーム内容での選択肢(死)しか、してはいけない。
④どんなに参加者が拒もうともルール説明は必ず行う。
巡士考太たちプレイヤーに比べると少ないルールだが、しっかりとした決まりが存在することに巡士考太は内心驚いていた。目を丸くすると彼を他所に、双子は「すっきりした?」と口にする。しかしまだ聞いていないことがある事に気づき、巡士考太は「最後だ」と口にする。双子は静かにその質問を待った。
「モブ男は……、桃袋愛男は、どうした?」
「「愛男お兄ちゃんは負けちゃったよ」」
無感動なその声とその答えに、巡士考太は「そうか」と口にして再び泣きそうな顔を浮かべた。しかし双子が「「始めてもいい?」」という言葉に、巡士考太は慌てながら溢れ出しそうな涙を袖で乱暴に拭った。
そして彼は擦り過ぎて赤くなる目元を双子に見せながら口にする。
「始めてくれ」
「「うん、分かった!」」
双子のやけに明るい声を耳に入れながら、巡士考太は双子に背を向けて目を閉じた。
――歌が、始まった。




