協力者
だんだん慣れてきたものの、変化してくる球の場合対応しきれない。
「もう少し練習が必要ね」
休憩を挟んだ5時間練習をして、その日は帰宅することにした。
帰り際、ちょっと待ってと腕を引かれた。
「明日も気は抜けない。 店に敵が来る可能性がある」
「え……? どういうこと?」
「敵は僕が地球から動かない理由を宇宙船の故障と考えるはずだ。 僕が最初に勘違いしたみたいに、スターシップがコーヒーショップとは思わずやってくる可能性が高い」
それはあなただけじゃないかしら?
と、言いたい所だったけど、あり得なくはない。
「じゃあ、もし来たら戦わないといけないの?」
「そうだ。 だから朝から僕も客として紛れ込む。 もちろん変装してね」
「待ってよ! 店の中であんな槍を振り回したら……」
その点に関しては考えてある、と説明された。
敵がやってきたら店の中まで案内する。
時間減速装置を使われる前に背後から刺す、とのことだ。
「もう一つ質問なんだけど、私が訓練してる日に敵がやってきた場合、どうするの?」
「……そうだな、穴を埋めるための協力者が必要になる」
協力者……
でもこんな話を分かってくれる人なんているかしら?
うーん……
「ちょっと明日話してみるわ。 ダメ元だけどね」
翌日、私はある人物に相談に行った。
「あのー、水元さん。 ちょっと相談いいですか?」
朝のロッカールームで水元さんを引き止める。
水元さんはほぼ毎日仕事に出ており、休みの日は私と入れ違いになるので穴埋め役に適していた。
「ん? どうしたの?」
「実は…… 変なストーカーに付きまとわれてるんです」
「え! まさかこの前の人?」
「それとは違うんです。 自分のことをSF映画の主人公だと思い込んでる人なんですけど」
私は昨日考えたストーリーを話した。
私は敵の宇宙船に連れ去られた姫の役で、ストーカーはそれを追う冒険者。
途中、船が故障して地球に降りたち、後を追って冒険者役のストーカーがこの店に来る、そういうシナリオだ。
「……杏さんって、どこでそんな人と知り合うの? いつか殺されちゃうよ?」
「あはは…… 今回ので身にしみました……」
「とにかく、そのストーカーが来たら警察に連絡すればいいわね?」
「あ、いや! 私に連絡ください! もう付きまとわないでって直接言ってやれば大丈夫だと思うんで」
ほんとに大丈夫? と念を押されたが、なんとか誤魔化してその場を離れた。
うまくいったわ……!




