魔王集会、終わります
さっきまでとはラケットが変わって、本気モードになったルシファーとパイソン。先ほどの試合では二人とも市販のラケットだったが、今度は自分用の調整を重ねた愛用のラケット。今度こそ大魔王に勝つと静かなる闘志を燃やすルシファー、全力で主人をサポートすると決めたパイソン、二人の絆は固い。
「そんなに気合い入れられたら俺も少しは本気出さないとなー」
サタンの手に握られているのは見たこともないような形のラケット。通常のような楕円のような形ではなく、縦に長い三角形のような形だ。明らかに普通のラケットより小さい。
ブラッドは普通のラケットだ。
「今度こそお前をぶっ潰す!!」
ルシファ―がラケットの先をサタンに向けて力強く言い放った。
「フツフツフツ……」
だがサタンは余裕の笑みを浮かべる。
「あまり強い言葉を使うなよ、弱くみえるぞ」
「二十五点先取のデュースなし、サタン&ブラッドチームのサーブで始めます」
審判であるキューちゃんの掛け声で試合が始まる。
ブラッドのサーブ、「いきま~す」などと気の抜けたような声からは想像も出来ないような速さのシャトルがパイソンの横を通り抜けて地面に落ちた。
「私だって長年大魔王の妻やってるんだもの、このくらいで驚かれてもらっては困るわ」
余裕の笑みを浮かべるブラッド、安い挑発に乗ってしまうパイソン。
「言ってくれるわね、調子に乗るなよ……」
ブラッドのサーブ、パイソンは今度はちゃんと反応してしっかり返す。そしてラリーが少し続く。がここでルシファーが動いた。ルシファーが打ったシャトルは異様なまでに遅い、驚くほどに遅い。今まで音速レベルの速さのシャトルが飛んでいたなかでこのスピードではせっかくのリズムが崩れてしまう。サタンとブラッドがポカンとしている中、ルシファーとブラッドだけがニヤリと笑う。
そしてシャトルがネットを超えたその時、ブラッドの目の前にあったシャトルが消えたのだ。
「シャトルが…消えた…!?」
「後ろだ」
固まってしまっているブラッドにルシファーは余裕でそう言った。
確かにブラッドの後ろにシャトルはあった。でもブラッドには何が起きたか理解できていないようだ。サタンは敵チームをにらみつける。
「今打ったのは加速するシャトルだ。あのスピードから音速にまで早くなる。初速を知りたいか? 教えてやろう。あの技の初速はな、13㎞や」
13㎞からの音速に、文字通りブラッドは目で追う事も出来なかった。
そのあと挑発に挑発を重ね、単純な四人は最終的にはバドミントンではない何かをしていた。何をしていたかはそれをを見ていた誰にも分からなかった。
結果、勝ったのはサタン&ブラッドチーム。
「くっそ~やっぱ親父は強いなー」
「ちょ! ルシファー様、大魔王様のラケット頭に刺さってるwwww」
ラケットとは刺さるものなのだろうか、サタンのラケットは特殊な形なので仕方ないのかもしれないが。
それにしてもキューちゃんは笑いすぎだ。ルシファーは何故かラケットを抜こうとしないし。
そして何故か空気と化しているハーデス、ウルフがハーデスをガン見したけど何も言わない。
そしてなんやかんや魔王集会、もといレクリエーション大会は幕を閉じた。




