気分は名探偵
「今回の反乱の真の目的は四公家の権力失墜と祖父にあたるミニシタ・べリスクの死。そしてこの目的を成すために、前国王及び王女派のマリオ伯爵と共謀していたんじゃありません?」
俺がそう言うと元王子は驚きと嬉しさ半々な顔をした。
「・・・何故そう考えるのか聞いてもいいかな」
「ええ。まず私が疑問に感じたのはあなたの投降です。いくらなんでも急すぎる。あなたが投降した時四大公家の城で落ちたのは1つ。まだ逃げれるし、戦える。けれどあなたは投降した。まるでその時に投降しなければならなかった理由があったかのように」
ここで一旦話を切って部屋を歩き始める。
もう気分は名探偵。もしくは犯人を追いつめるサスペンスドラマの主人公だ。
場所は崖の上ではないけど。
「疑問に感じたのは僕だけではないんです。ジジイじゃなくって・・・えっと・・あぁ・・将軍も疑問を抱いてるんですよ。敵の指揮官がまるでわざと負けるような指揮をとっていたって」
「あれだけ一緒にいて、世話にもなっているのにブレイダー将軍の名前を忘れたのか?」
なんか後ろから聞こえたけど無視しよう。
これは気にしたら負けだ。決して忘れてないんだ・・・決して。
「さて疑問を抱いた僕はその時期に何が起こったのか調べました。後ろにいる近衛騎士団副団長の肩書でこの国の内部資料も調べたんです」
「・・・それで何かでてたかい?」
「いいえ、何もでてきませんでした」
「そうだろう。私が投降したのは勝てないと思ったからだよ。ブレイダーの違和感だって気のせいだろうよ。長く隠居していたんだから」
「僕も国内で起こった事が何もないと分かった時はそう思いました。ただ何とも言えない違和感を感じていた時、ある報告書を見つけたんです。それはアスガラとの国境線を守備する部隊からのもので、そこには何の異常もないと書かれてました」
「何が言いたいんだ?」
「この資料を見るまで知らなかったんですが、先代王国とアスガラの先代国王の時代になるまで戦争をしていたんですよね?今は一時的な休戦状態。ただ休戦を選んだアスガラの先代国王はすでに死亡していて現国王や王子は好戦的。さらに勇者召喚で戦力を得ている。つまりこんな人たちが今回の内乱を契機に戦争を仕掛けてこないわけがないんですよ」
「確かに言われてみれば攻め込まれていてもおかしくはない」
「でも今回は攻めてこないどころか国境付近に兵を集めることもしていない。ここで僕は考えたんです。『しない』ではなく出来なかったんじゃないのかと。そこで今度はアスガラ国内の情報の報告書を副団長の剛腕で調べました。そしたら見つかったんです。偶然にもあなた様が反旗を翻すとほぼ同時頃にアスガラ王国のイニエスタ王国国境と正反対の位置にある場所で大規模な反乱が起こりそれを鎮圧するためにアスガラ王国が兵を動員しているという情報が。そして偶然にもあなた様が投降する3日前にその反乱が鎮圧されたという情報が」
「つまり君は反乱の間にアスガラ王国が攻めてこない様に工作したアスガラの反乱が終結し、何時イニエスタに攻めてくるか分からなくなった為に内乱の終結を急いだから私が急に投降したと言いたいんだね」
「ええ。そう考えています」
「仮に私が投降した理由はそうだとしよう。では君が言った今回の反乱の目的についてはどうしてそう考えるのか話してくれないか」
「ええ。今回こう考えたのもアスガラ王国の穏健派だった先代国王の死が関係していると考えます。アスガラ国内の情報によると先代の死亡後急激に軍拡を押し広めています。ではどの国を攻めるか。普通に考えてこのイニエスタでしょう。アスガラの西にあるこの国をどうにかしない限り、東が海のアスガラに、これまで以上の繁栄はない。そしてイニエスタは"王政"といっても王と同等の力を持つ四家がいるために意思疎通もままならない。攻めるのにこんな最適な標的はない。こんなことアスガラ王国だけでなくイニエスタ王国の広い視野を持つ者なら容易に気が付くはずです。例えば先代の王、伯爵、そしてあなた」
「フフフ・・・君は勘違いしているようだね。私はそんなに視野は広くない」
「今回あなたのことも知りたくて色々調べてみました。多くの人が言うんですよ。あなたは幾年先の事を考え様々な角度から物を見ることの出来る人だと。あなたはこの国のためなら何でもする人だと。あなたは王になれる器を持っている人だと。逆に王女の評判は悪いですね。先は見えない。国より個人をとる。王の器ではないなどなど散々な言われようでした」
「私もそう思っているよ。あの女では心もとない」
「確かにそうかもしれませんね。けれど王になりこの先アスガラ王国と渡り合っていくのは彼女しかいませんからね。あなたが王になれば王女と同等いやそれ以上の奴が一緒に付いてきますから」
「アオイ・・それってもしかして・・」
「そう、あの宰相だよ。奴は外戚として今以上に力を手にする。だからこの王子がいかに優れようと四家と宰相がついてくるから王になれない。そして彼らがいる限りこの国が王の元に団結出来ない。だから彼らに反逆の罪をつけて力を奪い取る。そう前国王や伯爵に持ち掛けたんじゃないんですか?」
「なるほど。ところで今の話の証拠はあるのかい」
「いいえ、証拠はありません。僕の想像です」
「そうか。いや、実に面白い話だったよ。死ぬ前に良いことが聞けた」
「それは恐縮です。では私たちはこれで帰ります」
「分かった・・・あ!最後に聞いておきたいんだが」
「何でしょう」
「君はこれからどうするつもりなんだい?この国に残るのか、それとも出ていくのか?」
「本当は出ていこうかなと思ってたんですが、伯爵に先手をとられましてね。爵位と領地をもらってしまったんで、そこに行こうと考えてます」
「どこをもらったんだい?」
「キークという港です」
「そうか。幸運を祈るよ」
「ありがとうございます」
読んでいただきありがとうございました。
とりあえずこれで一区切りです。
続きは今のところ何も考えていません。これからどうするか決めたいと思ってます。




