1〜年下の男のコ〜
この小説は「キレイの魔法」の番外編です。この小説だけでも読むことができますが「キレイの魔法」を読むとより楽しめます。(*^_^*)
今日も、私は翻弄される。
「みーおーちゃんっ」
その愛らしい笑顔と。
「今日も可愛いね〜」
小憎たらしい程の余裕を抱えた台詞に。
――私は、慌てる他ないんだ。
「み、稔くん!静かにしてよっ」
ここはとあるカフェ。
席に一人で座っていたら、待ち合わせをしているうちの一人である稔くんがやってきた。
来た早々大きい声で名前を呼ばれるし、可愛い発言されるしで私はつい慌ててしまった。
うう、まわりの目が痛いよ〜。
けれど稔くんはそんなの気にする様子もなく、私の横に座る。
「咲子たちはまだ来てないんだな」
咲子……というのは稔くんのお姉さんであり私の親友だ。
ちょっと天然が入った可愛い子で、思わず守ってあげたくなるような女の子。
実は私のおにいちゃんと、付き合っていたりもするんだ。
「あともう少しで来るって、さっきメールきたよ」
そう言いつつも私は、隣に座った稔くんをついつい意識してしまう。
――そう、私山田美央は高校一年生なのに、この三つ年下で中学一年生の神崎稔くんに片想いをしている。
咲子と友達になったことがきっかけで稔くんと知り合ったんだけど、まさか好きになっちゃうなんて……。
好きになったきっかけなんて、覚えていない。
ただ、彼の生意気な態度や大人びた台詞に、私はいつもドキドキさせられるんだ……。
と、その時。
「あ、咲子たち来た」
稔くんがそう言った。
カフェの入口に目をやると、咲子と私のおにいちゃんが仲良く手を繋いで入ってきた。
「よ!お待たせ〜」
おにいちゃんが手を振って席にまでやって来た。その斜め後ろには可愛い咲子。
「美央、稔、待たせちゃってごめんね」
すまなそうに笑う咲子。
「ううん、全然待ってないから大丈夫だよ〜」
咲子はすごく人に気を使う子だから、私は笑ってそう言った。
が、しかし。
「咲子遅いぞ!おおかた信也さんとイチャついてたんだろう」
私の隣の稔くんがビシッとそう言った。
信也さん……てのは、私のおにいちゃんで咲子の彼氏である、目の前にいるでっかい男のことだ。
「み、稔!」
慌てふためく咲子。
「お、稔くん正解だぞ」
あっけらかんと答えるおにいちゃん。
――ううーん、この二人って、面白い……。
……じゃなくて!
今日の目的を果たさなくちゃ!
「はいはい、とりあえず飲物注文して、話しよーよ!」
私はそう言うと、立っている咲子とおにいちゃんを座らせてメニューを開いた。
今日の目的……てのは、一週間後に控えた海旅行の話。
私たちの親戚が経営している民宿が海の近くにあるから、この四人でお泊りしに行くことにしたのだ。
今日はそれについてのちょっとしたお話をする予定だった。
とりあえずぱっぱとドリンクを頼むと、私は地図を広げた。
「んとね、その親戚の民宿がここね。小さいけどそれなりに流行ってるから、泊まるのに実は条件出されちゃったの」
「え、条件?」
何も知らない稔くんと咲子は身を乗り出して聞いてくる。
おにいちゃんは条件をおじさんたちから聞いて知っているから、苦い顔をしている。
私はすまなそうに言った。
「タダで泊まらせるかわりに夕食の準備手伝ってほしいって。この時期、かなり忙しいんだって」
すると、稔くんが「ゲッ」と言った。
「じゃあ俺らの夕食は!?」
「ちょっと遅くなるけどちゃんと出してくれるよ。八時くらいになっちゃうかな〜」
「まじかぁ〜……」
少しだけ沈む稔くん。
うぅ、やっぱ申し訳ないなぁ。
タダっていうのは魅力的だけど、やっぱ働くのは嫌だよねぇ……。
けれどそこで、この四人の中で一番生真面目な咲子が稔くんを一喝した。
「こら稔!そんなこと言わないの!こっちはタダで泊まらせていただくんだから」
咲子がそう言うと、稔くんは「はぁい」とちゃんと返事をした。
ふふ……何だかんだで、咲子には弱いんだよね、稔くんは。
何だか微笑ましくなっちゃって稔くんを見つめていたら、稔くんと目が合ってしまった。
稔くんは一瞬バツが悪そうな顔をして……しかし次の瞬間、ニヤリと笑った。
「そうだな……今のうちに美央ちゃんの親戚にもイイ印象与えとかなきゃな!」
「えぇ!?」
なぜ突然そんな考えに落ち着くのか。
稔くんの思考回路は、全然わからない。
「こ、こら!稔!」
「あっはっは!そりゃいい考えだなぁ〜咲子ちゃんも頑張れよ!」
「し、信也さん!」
慌てる咲子と呑気なおにいちゃん。
ああ……この四人で海旅行だなんて……ホントに大丈夫かしら。
やれやれ。




