第12話 新聞の表面と裏面
瑞峰学園新聞 第〇〇号(春季号)
特集:
「春、動き出す瑞峰学園――新学期の風景と行事レポート」
文責:新聞部・記事班主任
⸻
春の訪れとともに、瑞峰学園にも新たな1年が始まりました。
標高の高い学園には遅れてやってくる桜が、今年は例年より少し早く咲き、生徒たちの登校風景を淡く彩っています。
新入生歓迎会、クラブ紹介、健康診断、対面式――慌ただしくも瑞々しい空気に包まれた4月を、今回は総まとめでお伝えします。
⸻
■ 新入生歓迎会(4月7日)
体育館で行われた歓迎会では、吹奏楽部の演奏と、生徒会長による歓迎スピーチが披露されました。
今年は初めて、上級生による「学園生活なんでもQ&A」コーナーも設けられ、笑い声の絶えない和やかな雰囲気となりました。
特に印象的だったのは、演劇部によるミニ舞台「瑞峰クロニクル・春編」。
学園の歴史と日常をユーモラスに描いた短編劇に、新入生たちから大きな拍手が送られました。
⸻
■ クラブ紹介(4月10日〜12日)
校内各所で行われたクラブ紹介ウィークでは、運動部・文化部あわせて30以上の団体がブースを出展。
茶道部の点前体験、科学部のスライムづくり、軽音部のライブなど、多彩なパフォーマンスが見られました。
今年はボクシング部の公開スパーリングが特に話題となり、廊下から身を乗り出して観戦する1年生の姿も。
⸻
■ 対面式・健康診断(4月15日)
対面式では1年生と2・3年生が初めて公式に顔を合わせ、緊張した面持ちで校歌斉唱を行いました。
健康診断では新型のデジタル測定機器が導入され、スムーズな進行に協力してくれた生徒の皆さんに感謝します。
新年度の始まりは、誰にとっても新しいスタートラインです。
焦らず、一歩ずつ。
春の陽気とともに、今年も瑞峰学園は静かに、そして確実に動き出しています。
新聞部では今後も、日々の学園生活を丁寧に取材・発信してまいります。
生徒の皆さんのご協力と情報提供を、今年度もよろしくお願いいたします。
瑞峰学園新聞部 編集一同
Z-Press 第××号/発禁寸前特集
「不敗の夏希―裏の女帝、その実態に迫る」
記者:九条楓(新聞部/裏班)
この学園には、表と裏がある。
生徒手帳に記載された「生徒会」や「部活動」が表なら、名簿にも載らない、もうひとつの世界が存在している。
その一つである賭場を支配するのが、一人の女子生徒だ。
彼女の名は、片桐夏希。
通称「不敗の夏希」。
本人は否定しているが、この通り名で彼女を呼ぶ者は、少なくともこの学園に30人以上は存在する。
『1年A組男子の証言』
「あの人、最初はただのスカートの長いお姉さんだと思ってたんスよ。でも…マージャンで全員カッパがれて。しかも、その時の勝負、一度も人に振り込まなかったんです。マジで怖いっす」
『とある生徒について』
あの不敗の夏希と引き分けた男子生徒がいるらしい。勝負はチンチロリン。一度目は、片桐夏希に負けたものの、二度目の勝負でピンゾロで勝利したということである。
男子生徒についての噂:様々な種類の本を常に読んでいる/自分の脳内物質を意図的に操作できるらしい
彼は、この学園の表でも裏でも『関与しない者』として知られていた。しかし、片桐夏希と勝負したという事実。それは、これから我らが学び舎で何か起きることを示唆しているのかも知れない。
『記者所感』
この学園で最も『影響力のある』彼女は言葉ではなく、『勝負』で支配している。その姿はもはや女帝である。
だが、気になるのは、その女帝に挑み引き分けた生徒がいたということである。
筆者が、その生徒に取材する日も近いかもしれない。
続報にご期待ください。
Z-Press編集部(記者:九条楓)




