シロンの夏休みの会話 昼食第二弾編
ここは市内の有名なラーメン屋。
満員の店内、そのみんなが一点を見つめている。
それは他のよりもずっと大きいラーメン鉢。
それがぐ、ぐいっと裏を見せ、持ち上がっていく。
皆が息を呑み―
ぷはあーっ、吐息と共にどんとテーブルに置かれるそれ。
現れるシロンの顔。
ラーメン店主の戸惑ったような声。
「…し、白神 妙さん、超大盛ラーメン完食!タイム6分18秒…、新記録です!!」
―うおおおっ
周りから上がる歓声。
一つ隣のテーブルの、恐らくは学生らしい、いかにも軽薄そうな男らがささやく。
「すげえなアイツ、麺三人前の上にトッピングも大盛なのによぉ」
「こないだ相撲取りでも失敗したのに、スープまで全飲みかあ」
「でも、あの体のどこにあんだけ入ったんだ?」
「まあ胸で無い事は確かだな、―イテッ!」
若者の頭に当たったのはレンゲ、学生らはシロンを驚いたように見つめて、そそくさと席を立っていく。
出ていく学生らを、睨んでいるのは「男」。
当のシロンは知らん顔で、店主から賞状と賞金を受け取っている。
他の客とハイタッチしながらノリノリで店を後にするシロン。
「オシャレなカフェでお昼の後が―、ラーメン屋?」
「で、大食いチャレンジ成功って、訳わかりませんよ」
「えー、でもぉ、アタシのさっきの昼代くらいは稼げたんじゃなーい?」
「…はいはい、助かりましたよ」
「…なんで偉大な九尾狐サマが、ラーメン大食いに待たされなきゃならないのよ!」
店から出てくる二人、手持無沙汰で店外で待っていたママのぼやき。
「ふん、『はっちゃけ能天気』に、『大飯喰らい』の属性が付くのかね、この犬っコロは?!」
苦笑いしかないママ。
「まあまあ、いいじゃないですか」
「男」はそう言いながらも、思わせぶりにママに視線を送る、が僅かに首を振る。
「…アイツはまだ、なんだね」
はっと、シロンを見やる二人。
「話し合うか、戦うか、分かんないケド…」
「パワー補給、完了。どんとこい、だよっ!」
くすり、苦笑が洩れるママ。
「全く、この妹分は…」
「抜けてんだか、抜け目ないんだか分かんないねえ」
「でもぉ、アイツが来るってどうやって分かんだ?」シロンの問い。
「まあ、アタシがちょいちょい使う手だけど」
「シッポを八本、使い魔の狐に変化させて、この町の周り八つに分けて忍ばせてあるのさ」
「探知器代わりにね、強い『力』を感じたら分かる仕組みさ」
「では散歩がてら、市内の繁華街辺りをウインドウショッピングといきますか?」
「男」の声に意味ありげな笑顔で応えるママ。右の方を指さす。
「じゃあ、あっちから行こ」
「お目当ての服でも?」
「そう、でもぉ」
思わせぶりに振り返る。
「服だけじゃあ、ないけどね!」
やれやれとでも言いたげな男。
しかしママの足は止まり動かない。
「どうしました?」
「…ちぇ、買い物はまた、だね」
にゅ、と狐耳が頭に生える。
南西の方を指さす。
「あっち、幹線道路沿いをゆっくり、歩いている、おそらく一人…」
「どうやって来るのかと思っていましたが…、その方向なら、タクシーですか」
「…やはり人目に付きたくないんですね」
「行ってくる」歩み出すシロン。
「いけません、みんなで行った方が―」引き留める「男」。
「人間ってさあ…、あ、アイツは違うかもしんないけどぉ」
頭をかくシロン。
「やっぱ、サシで会って、ちゃんと話しすんのが、スジでしょ?」
「シロンさん、重ねて言いますが、相手はどんな卑怯な手を使ってくるか―」
心配そうな声。
「うん、だからお願い、その時はさあ…、助けて!」
「ピンチのヒロインを救うキャラで、お願い!」
「分かった、その覚悟なら行っといで」頷く狐耳。
「あんがと、姉御!」
たたっ、と駆け出すシロン。




