シロンの夏休みの会話 悪だくみ編
「つまりは親の代からの復讐という事ですか」
うつむく白ひげの首。
「そうとしか考えられん」
「つまり集団『異能』の何らかの力を借りて、襲ってくる?!」
その時―
男のスマホが音を立てる。さっと取り出して一瞥する。
「尾行は…、撒かれました」
残念そうに言う。
「…ここに向かった事は間違いないでしょう」
「そうか…」
きっぱりと言う白ひげ。
「数百年ぶりの、兄との因縁―」
「決着をつける時か!」
「待ってください」
身を乗り出す「男」。
「あの『犬神 狼牙』という者が、真正面から挑んでくるとはとても思えない」
「何らかの思わぬ手や罠を使ってくるでしょう」
「そこで」
表情を変えて、右の人差し指を立てる。
「提案があるのですが」
「…悪い顔、だな」白ひげの口角が上がる。
「え?」
「…貴男の、名案を思い付いた時の、顔だよ」
ニマリと笑う、理事長。
「絶対に敵に回したくない顔だ」
「今は味方で良かったことを感謝せねばな」
「恐れ入ります」
頭を下げながらも不敵な笑い。
「いえ、そしてこれは、前にも言った『良い知らせ』の事でもあるのです」
軽い咳払いと共にいう。
「お喜びください、稲荷神様が、犬神殿との同盟を承諾されました」
「おおっ!」ぱあっと明るくなる顔色。
「あの気高い命婦どのが、我らごときと…」
「貴男のお骨折りのおかげだ、感謝する」
白ひげの頭が下がる。
「いえ、私はただ仲に立っただけ」
「犬神殿の力と名があってこそでした」
しかし続く「男」の言葉。
「それで、命婦様は同盟を結ぶに際して、お人を寄越して欲しいとの仰せです」
「…そ、それは、まさか?!」
「ご息女の、妙…、いや、シロンさんとお目にかかりたいとの事でした」
「え、あ、いやそれは―」
うろたえる白ひげ、しかしはっとしたように見つめる。
「…それも、この度の『兄の件』との絡みなのか?」
うなづく男、そして続ける。
「今回気になるのは、あの『犬神 狼牙』という者が…」
「どのような企みを仕掛けてくるか、という事です」
理事長を見つめる。
「まず、シロンさんに稲荷神との面会という目的で、こちらに、私の処に来てもらいます」
「…ふうむ?」首を傾げる。
「ご心配は有るでしょうが、今回は『九本のシッポ』が後見します」
「…」
「ご無言、ごもっともです、しかし今回は大丈夫です」
「おそらく…」苦笑い。
「七割五分、ほどは…」
「…まあ、よかろう」
首を振る理事長。
「あの『九本のシッポ』が加わると言うこと自体、ありえない事かもしれないな」
続ける「男」。
「そうすれば、かの『復讐』はまず、シロンさんに向かうと思われます」
姿勢はそのまま、しかし強い言葉が返る。
「我が愛娘を、囮に使うとー」
「…言われるのかな?!」
「お願いいたします」
びしっ、と頭を下げる「男」。
「もし、お気に召さないならば…」
いきなりガチャリと部屋のドアが開く。
「『我が子の命を、ひきかえに…』なんて言うんだろ、はいはい…」
出てきたのは「ちお」。
「ここに来てから楽しかったし、まあ立場的に何となく感じてたけど―」
「世の中って、難しいねー」
肩をすくめる。
「まあ、いいよ、それで…」
「こっちは何とかするし―」
いきなりの侵入者と男を交互に見て、つい、白犬理事長は笑いだす。
「まあ、貴男と『九本のシッポ』の子供らしいな!」
立ち上がる白犬理事長。
「承知した!」
「この件、貴男にお任せしよう!」
深く頭を下げる「男」。




