バーのママ?と女子高生?の会話 最終編
―しかしその走る姿はふらつき、全くスピードが乗らない。
やがてバッと飛び上がる姿、しかし勢いはなく、このままだと九尾に届くかさえも危ないほど。
「しくじったか、小娘!」
ジャンプした時に伸ばした手足、前足をぐっと引き寄せて、後ろ脚に近づける。
『まだっ!』
その前後の足先に光り出す塊、身体中の火花や電気が集まっていく。
「全く、ようもそれだけ色々と工夫できるのう」
…と九尾。
『行っくぞぉ!』
ドン!と足元で弾ける雷の塊。
ドギュゥンー、白い弾丸となるシロン。狙うは九尾の喉元。
「くっ!」
思わず首を左に傾けてしまい、右手が上がる。
バギャッー!
その右の二の腕を吹き飛ばす!
しかし当のシロンは、九尾の首筋の僅か右をかすり、そのまま吹っ飛んでいく。
「ミスッたあぁっー!」
シロンの絶叫も一緒にすっ飛んでいく。
ゴォン!
そのまま背後の岩壁に激突!!
「…うわっ、はっずっ―」自虐のつぶやき。
額の左上に、冗談のような巨大なたんこぶ。
そのまま下に落ちていき、動きはない。
どうやら気を失ってしまったようだ。
「…完全に一人芝居、わらわは置いてきぼりかよ」
自分の飛ばされた右腕をじっと見る。
「さらにこれか、まるで道化者じゃな?」
しかし口で落ちた右腕をくわえあげると、それを右手に押し付ける。
やがて何事もなかったように、右手首をひねる。
あっという間に元通りのようだ。
「さて、勝負はついた」
ゆっくりと気絶したシロンに近づいて行く。
カッ、と大きく口を開き牙を覗かせる。
…
「そのように殺気を漏らすな」
そう言って、九尾の狐は上を見上げる。
大きな白い猛獣が岩壁の上から首を出す。
「確かに勝負はついた」
「…わらわの負け、でな」
「ふふん、『逃げも隠れもせぬ』とか言うておきながら」
「気圧されて、避けてしまうとはな」
しかし、ばっと身を躍らせて降り立ち、庇うようにシロンと九尾の間に立ちふさがる。
「おや、そんなにわらわは信用無いかのう、犬神どの」
流し目で見つめる。
「いや、そう思われる事こそ、本望なのでは?」
響くドスの効いた低い声。
「以前お会いした時も、どれだけそのお言葉に振り回された事か」
「そういう犬神どのも、以前逢うた時はもっと尖っておったようじゃったが」
「娘ができ、ちいとは丸くなったか?」
「なかなか渋い男になったではないか」
「まあ、今回はなかなかに楽しませて貰うたわ、礼を言うぞ」
倒れ伏すシロンを見る。
「まあこのように過ぎた無鉄砲、大胆、命知らずは、わらわとてほぼ見た事も無いわ」
「大事にせい、珍重すべきじゃじゃ馬じゃ、…おおっと、犬なのに馬とはの」
くるりと背を向ける。
「では、また、の」
あっさりと去って行くその姿。
ほっとしたように背を向ける犬神、しかしぎくりとしてしまう。
「ええっ、ま、『また』って?!」




