新たな敵、の会話 遭遇編
ちょうど日が暮れようかという時刻。
ママの店、グラスを傾ける「男」
「えー、ソイツの『異能』ってぇ…?!」
「さっき言ったでしょう、『千里眼』と『瞬間移動』だそうですよ」
「…何回聞いても、シンジラレナーイってやつね」
「そんなの誰もかなうハズ、ないじゃん!」
「はは、ホントなら一か月で世界を征服できるでしょうねぇ」
カランと鳴るグラス。
「ちなみに海千山千の偉大なる九尾様には、そのような能力の心当たりやご記憶はございませぬか?」
芝居がかった男の台詞。
にゅ、とママの頭に狐耳が飛び出し口調が変わる。
「ふん、心当たりも覚えもないのう。そのような人並み外れた能力、だいたいが自然の、人の、妖の道理に外れておる」
ピョン、と引っ込む狐耳。
「ちょっと、ナニ、やらせんのよ!」
「そう、そんな便利すぎる『異能』、規格外すぎます。何らかの条件や制限なしには使えないのは間違いない!」
「ふふ、つまりそれを言いふらしている、って事は―」ママを指さし問いかける男。
「―!、派手な能力をわざと言い立てる、つまり、煙幕、目くらまし?」応えるママ。
「ご名答、よっぽど条件や制限を知られたくないのが丸分かりです」うなずく男。
「でもぉ…」ママは思わせぶりにカウンターに肘を置き、両手を顎に乗せてみる。
「それって、すぐに、簡単に分かるものなのぉ?」
「さ、そこが今回のキモです!」
男は身を乗り出す。
「そこでママに一肌脱いでいただきたいのですよ」
「やだあ、下着脱げって?、エッチねえ」
「色っぽいご返事ありがとうございます」
「つまり、ママが裏切ったという形で、相手に接近して探って欲しいんです」
「ああ、昨晩言ってたような、アレ?」
「…でも、相手はそんな簡単にアタシの裏切りを信じるかしらね?」
腕を組み、やや頼りなげに聞き返す。
「おや、ママらしくない。ノリノリで首を突っ込んでくれると思ってましたが?」
微妙な沈黙が流れ、そして…、意外な一言。
「―ね、もう止めない?」
「え?」さらに意外そうな男の顔。
「『子供』も居るんだし、アタシとあんたと一緒にどっかに逃げて、静かに暮らすって道もあるんじゃない?」
「―ど、どうしたんです、ますますママらしくない。いや、天下の九尾狐の台詞とは思えませんよ」
さらに更に意外そうな男の顔。
「…どう?」身を乗り出してくるママ。
「どう、って言われても、私もここまで来た『意地』ってものがあります。もう引く事なんてできませんよ」
「…どうしても?」いつにない真剣な顔。
「ホントにどうしたんです?、できませんよ!」
「―そう、分かった」身を引くママ。煙草を取り出し火をつける。
ほ、とした表情の「男」
「分かってくれましたか」
その時、カラン―、
扉の音がして一人の男が店内に入ってきた。




