二人組との会話 「地上編」
角刈りで小太りと、筋肉質で浅黒い、二人の男がうらぶれた様で歩いている。
何故だかわからないが、牛乳配達でもしてそうな雰囲気の二人組。
ふと角刈りが叫ぶ。
「俺たちには金がない!」
「身も蓋もねえな兄貴、まあ100%その通りだけど」
冷静に突っ込む筋肉質。
「メシ代どころか、散髪代すらないのだっ!」
「威張って言う事でもない、っていうか兄貴の髪じゃ、説得力ゼロだろ」
「そこでっ、仕方なく犯罪に手を染めようと思うっ!」
「そこはちょっと、言い方に罪悪感をにじませてほしかったところだな」
ぼやく筋肉質、だが顔を覆ってため息をつく。
「まあ仕方ねえな、こんな有様じゃ俺の筋肉も維持できねえし…、で、兄貴、どんな犯罪をするつもりなんだ?」
「聞いて驚くな、『誘拐』だあっ」
「え…?」
「子供を誘拐して身代金を要求するっ!」
「それって成功率むっちゃ低くねえ? 無理だろ」
「いやっ、うまい方法を考えたんだ、これで行くぞおっ!」
駆け出す角刈り兄貴を、追い掛ける筋肉弟分。
「あー、目が血走っちゃってら、これはダメだな…、ああ付き合うしかないか、はああ…」
「あれだ、あの子供だっ!」
幼稚園児らしいその子供は、肩にカバンを掛け、トコトコと一人で歩いている。
「え、ええー、どう見ても普通の子供だろ。リムジンでお出迎えとかじゃないのか」
「そんな子供は俺たちの手に余るだろっ」
「誘拐犯になろうというヤツの台詞じゃないぞ」
「い、行くぞ!」
「あ、兄貴、止めようよ…」
「うおぉーっ」
「しまった、止めろと言うほど、行ってしまう性格―!」
「あそこだ、あの廃屋だっ」
ダダダッ―、二人は子供を抱えて駆けこむ。
しばらく激しい息づかいの二人。
「やっちまったなっ」
「ああ、これで俺らも犯罪者だな!」
うつむいてしまう二人組。
しかし、その「子供」は慌てる事無くすっと立ち上がる。
「おいっ、おとなしくしろっ!」
『してるよ』、確かに立ち上がっただけだ。
「う、うるさいっ!」
『…うるさくないよ?』、確かに返事しただけだ。
全く慌てていない態度に、二人は却って慌ててしまうほど。
「こ、このガキッ!、あ、兄貴、本当にこんな子供、金になるのか?」
「間違いない、心配するな」
「でも場末のバーのママの子供だろ? そんなに金があるようには…」
角刈り男は、顔の前で手を振って否定する。
「こいつの父親らしい男は、貿易とかいろんな事業をやってる実業家と言ってるが、裏でブラックな事やってると睨んでるんだ。俺様の眼はごまかせないっ!」
だが心配そうな筋肉質。
「だから警察沙汰にせず、金をたんまり出すってのか?」
「ああ、間違いない!」
クイクイ―
『…おはなしちゅう、わるいけどー』
角刈り男はいきなり服の裾をひっぱられ、ドキリとする。
「な、何だっ、いきなり!」
『やめときなよー、うちのママ、おこると、すっごくこわいんだよ?』
子供らしい言いざまを二人は嘲笑う。
「あははっ、やっぱりガキだなっ」
「ママが怒って来まちゅよー、か、何が怖いんだよ!」
子供はませた態度で首を振る。
『…あんたらのためなのにー、ま、けいこくは、はっしたからね』
「はあ、警告だぁ?!」
『これからは、じこせきにん、で、よろしくねー』
「自己責任、ってこましゃくれたガキだな」
「ホント何様だよ、お前っ!」
『「お子さま」だよー』
ぷっ、「あははっ」
笑ってしまう筋肉質を、ギロリと角刈りは睨む。
「おい」
何か言い争いでも始まるのか、と思いきや…
「今のギャグであんなに笑えるか?」
「えー、でも幼稚園児の意外なヒトコトって案外面白くないか?」
「ウケ狙いのあざとさが入っていたと思うがな、だいたい―」
何故かお笑い談議に発展していく。




