表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

967/1173

獣王襲来 【亜人種強制収容所編】 その21




広場の片隅の大天幕のなかでは、タルパカス兵たちの休息所、戦場での傷を癒すための簡易病棟、それに食堂が用意されている。



その天幕内の専用食堂では、一般の市民よりはほんの少し豪勢な、栄養のつく食事が出されていた。




《戦場に出て、命がけで戦っている彼らですから、当然の優遇措置ですね》





だが、レオニダスは自分の前に大盛りによそわれた食事を前にして、あまり気が進まない様子だった。



子供たちが空腹に泣いている声が耳について離れないのだ。




「あなたが食べていないと、他の兵士たちも気にしてしまって食が進みません。


どうかお食べてください」




前よりもほっそりと痩せているカサンドラ姫が、優しい微笑みを浮かべながら獣王レオニダスを諭す。



自分はほとんど食事を口にしていないのに、


ツラい表情かお一つ見せず、逆に夫の身を案じている。



妻の健気な姿に、獣王レオニダスは胸がいっぱいになってしまう。




カサンドラの思いやりに応えるためにも、少しでも食事をとろうかと目の前の骨付き肉をつかんだとき………………



どこから軍人用の天幕に入り込んだのか、


小さな子供…………子犬の亜人種がレオニダスのそばに佇んで、羨ましそうにその食卓を眺めている。



羨望にウルウルと潤んだ瞳。


その子犬の少年の目があまりにも切実だったので、


獣王は口にしかけた骨付き肉を思わず途中でストップさせていた。




「あ、コラ!いけません!!」




ウェイトレス係の、太めの犬族女性が気づいて、子供を後ろから抱きかかえた。


そのまま連れ去ろうとするが、




「まぁ、いいではないか」




獣王レオニダスはウェイトレス係を制して、




坊主ボーズ、食べるか?」




激しくうなずく子犬の男の子。





「レオニダス様…………いけません」




カサンドラは、少し表情を固くして




「あなたの身体は、あなた一人のものではありません。


この国を護る大切な身体、国を守護する生ける盾です…………


情に流されてはなりません」




獣王レオニダスはフッと微笑んで




「自分の事を棚上げにして…………」




カサンドラが満足に食事もとらずに、自分の分まで他の者に分け与えている事をレオニダスは知っている。




「お前の愛する国民が飢えているのに、自分だけ腹を満たすなど、俺にはできん」




獣王レオニダスの瞳に宿る、自分への深い愛情を見て取って、カサンドラは言葉を失う。



獣王レオニダスはカサンドラその人を愛するように、妻の故郷の民を深く愛していた。



本気で、この命に代えてもカルタゴス国民を守り抜こうと決意していた。




坊主ボーズ、ほかの子供も呼んでくるのだ。


できるだけ、たくさんな。意地悪せずにみんなに声かけするんだぞ?」




子犬の少年はハッハッと興奮した息づかいで、舌を出しながら頷いた。



そのまま、我を忘れて四足歩行で仲間たちのところに駆け出していく。





「仕方のない……………人なんだから…………………」




カサンドラは涙ぐみながらささやく。





「夫は、妻に似てくるものなのだぞ?」




獣王レオニダスは真面目くさった顔で答える。




この一連のやり取りを見ていた歴戦のタルパカス兵たち。




「ええい!!!なんだこの不味い食事は!!!!こんなモノを口に出来るか!!!!」



「これが誇り高きタルパカス兵に出す食事か!!!?」




「そうだ!!そうだ!!食えるか、こんなモノ!!!」




さっきまで美味そうに食べていたのに、


急に変な理由をつけて、食卓を前に腕を組み始めた。



痩せ我慢をしているのは一目瞭然。



全員、ヨダレを垂らしながら食卓にそっぽを向いている。




「ちょっと待て……………お前らはちゃんと食事をとれ。


俺に続く必要など無い!!


キチンと食べんと明日、戦場で身体が持たんぞ!?」




獣王レオニダスの副官にあたる、顔中キズだらけの山猫タイプのタルパカス戦士が




「王が食わないのに、ワシらだけ食事なんてできるか!!!!


この天然!!!!カッコつけマン!!!!」




腹立ちまぎれに上官をののしる。




結局その夜、タルパカス戦士たちは自分たちの夕食を、すべて飢えた子供たちに分け与えた。



その夜だけ、子供たちの空腹に泣き叫ぶ声が少しだけ途絶えたのだった。





《なんという……………尊敬すべき男たちでしょうか》








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ