獣王襲来 【亜人種強制収容所編】 その15
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表向きは全種族の参加を認めているこの【統一武闘大会】だったが、
・武器の仕様禁止
・魔法の使用禁止
この2つの条件がついた亜人種全員参加の武闘大会なんて、
実質のところ『獣人族以外お断り』と言っているようなモノだ。
亜人種・獣人族の戦士たちにとっては、自前の爪、牙こそが最大の武器であり装備なのだから。
生身の人間や他種族 VS 獣人の戦い。
こんな不公平な試合があるだろうか?
獣王は最初、この武闘大会への参加を辞退しようとしていた。
戦闘のエキスパートである自分たちが、ズブの素人を蹂躙したところでそこに何の栄誉があろう。
だが……………
「もし………獣王が辞退するというのなら……………
カルタゴス共和国はタルパカスとの国交を未来永劫、断絶します」
カサンドラ姫にリアル本気のトーンでそう迫られて、
獣王は泣く泣く自分の意思を曲げることになった。
…………うん。これって完全にパワハラだよね?
他人の記憶を覗き見ているだけの他人事ながら。
《そもそも、この武闘大会自体が獣王を狙い撃ちにした大会ですからね》
大国の王女による、《《セクハラ》》であり《《パワハラ》》というわけか。
《美人女上司によるパワセクハラ》
なんなんスか、その『パワフルなセクハラ』みたいなん。
国を挙げた、大々的なお祭り騒ぎ。
ワールドカップの開催国みたいに華やかな盛り上がりを見せている亜人種の国カルタゴスの情景。
統一武闘大会に参加しようと、世界中から集まってくる有名な武闘家や、獣人族の猛者たち。
もしかしたら自分がカサンドラ姫の婿の座に収まれるかも知れない……………
彼女に横恋慕している各国の王子や貴族、腕に覚えのある一般庶民たちが目の色を変えて大会に集ってきた。
そして、超満員の闘技場、その舞台の真ん中に立つ獣王の視点で、
俺はあたりを見回していた。
「なぜ、こんな事になってしまったのだ」
獣王が独り言ちる。
…………なんか、前にもこんな光景を見たことがあるような気がするなぁ。
《聖地イスランフェルで天下無双決定武闘大会に出場したときの事ですね》
やる気なく、しおらしく耳を垂らして佇んでいる獣王だったが、
対面している巨大な角を生やしたサイ型の亜人種は、異常に鼻息荒くエキサイトしていた。
「タルパカスの王だかなんだか知らねえが、しょせんは辺境で細々と傭兵稼業をやっているだけのド田舎の小国じゃねえか…………
井の中の蛙大海を知らず!!!!
世界規模に活躍する、この真の英雄ドスサントス様が本当の闘いってもんを教えてやるニダよ」
ドンドン足踏みしながら威嚇しているサイ型亜人種。
《ブレイキングダウンみたいなノリですね》
ノッコン寺田?
ゲンナリした表情でため息をついている獣王
が、いざ試合が始まってしまえば……………。
タルパカスの戦士としての本能、誇りが、『わざと負ける』とか『手を抜く』なんて事を許さなかった。
白目を剥いて血だるまになっているサイ型獣人の顔が、
後頭部を鷲掴みにされて観客席に向けて掲げられている。
血祭り、瞬殺、血祭り、瞬殺、血祭り、対戦相手逃走。
いざ大会が始まれば対戦相手をことごとくなぎ倒してしまう獣王。
連戦連勝。常勝不敗。
あっという間にトーナメントを勝ち進んでしまった。
貴賓席では、カサンドラ姫が悪そうにほくそ笑んでいる。
《姫様の思う壺》
超満員の闘技場でその実力をいかんなく発揮して、大歓声をうけるレオニダス王。
いつも、試合が終わってからハッと我に帰っても時すでに遅しなのだった。
そして、ついに……………
他の対戦相手を寄せ付けぬ圧倒的な強さで、
全員をけちょんけちょんに蹴散らして獣王は統一武闘大会を制覇してしまった。
優勝者への表彰式典で、カサンドラ姫は獣王の胸に堂々と飛び込んだ。
幸せいっぱいの笑顔を溢れさせながら。
レオニダス王も、この状況に戸惑いながらも嬉しさがこみ上げてくるのを抑えられなかった。
《カサンドラ姫は獣王が優勝して、自分を勝ち取ってくれると確信していたから、この武闘大会を仕組んだのですね》




