雪の女王の脳内 その33
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世界から音が消えていた。
原初の海を思わせるような、生命の揺らめきに満ちていたミクロの戦場。
あの景色とはすべてが一変している。
この場所では、何も動くモノは無く、すべてが静止していた。
あまりの極寒に、もはや生命の活動限界を超えた世界に突入しているのだろう。
そこは【雪の女王の脳内】へと続く一本道。
限りなく【涅槃級絶対氷魂零度】に近い極限の零下に包まれた空間だった。
脳内へと続いているその道は、
まるで全面がダイヤモンドで作られた空中回廊みたいに透明にきらめいている。
その透明に輝く神秘的な回廊のド真ん中に、たった一人でたたずむシルエットがあった。
見るからに、凡百の免疫兵士たちとは別格のオーラを漂わせた氷の戦士。
その氷の甲冑にも、豪華な装飾がなされている。
「…………………【G細胞】
免疫細胞のなかでも最強の兵士。
将軍《General》だニャ」
ニャンコ大先生のいつもの解説も、寒さでかじかんでいる。
免疫軍の大将格ってわけか。
氷の将軍【G細胞】は、胸の前に組んでいた腕をほどくと、強大な氷の戦斧を出現させた。
《間違いなく、【雪の女王の体内】に入ってから遭遇したなかで最強の敵です》
………………だろうな。
【G細胞】の周囲にとてつもない氷系のオーラが展開される。
空気そのものが音をたてて凍っていくような濃密な冷気。
いくつもの雪の華が【G細胞】の周囲の空間に咲いた。
氷の将軍の手の中にある透明の戦斧がどんどんと肥大化していく。
まわりの冷気をどんどんと吸い上げながら、さらに大きく強力に成長していくみたいだ。
………………なるほど。
普通にやれば、これは相当に苦戦するレベルの強敵だろう。
【雪の女王】の免疫細胞、その頂点に君臨する最強戦士。
将軍【G細胞】
「だが、しかし」
【全神武装】の背中の部分から、刀の柄を抜き出した。
同時に右手に装備していた【戦神アテナの盾】を亀の甲羅みたいに背中に装着して、両手でその刀の柄を握り込む。
―――刀身の無い、刀の柄を。
「お前に見せ場を与えるつもりはない。
スペランカーばりにソッコーで再起不能してもらう」
《それだとすぐに復帰してきそうですが》
【七闘神ビームサーベル】
ぎゅぁあああああああああああ………………………
刀の柄から、触れただけで惑星が一つ蒸発しそうな、とてつもない出力の極太ビームサーベルが飛び出てきた。
ぎゅぎゅぎゅぎゅ……………………るるるるるるぅ……………………
俺の身体を覆った【全神武装】
その七闘神のエネルギーのすべてが動員され、絞りつくされ、集約された、究極のビームサーベルだった。
物騒な音をたてながら複数色のイナズマを帯電する光の大剣。
氷の巨大戦斧を両手にもった【G細胞】が、口をぱっかりと開いて茫然自失している。
氷の将軍のまわりに咲いていた満開の雪の華たちが、
【七闘神ビームサーベル】の異様なエネルギーの余波をうけてつぎつぎに溶けて散っていった。
斬!!!!!
次の瞬間には、極大ビームサーベルを振り抜いて氷の将軍【G細胞】を一刀両断していた。
「……………雑魚キャラあつかいしてごめんよ、最強の将軍さん」
ぎょ……………じゅあぁああああ……………………
黄金のダイヤモンドダストを周囲にまき散らしながら、氷の将軍【G細胞】は壮大に果てていった。
本来なら黒死病兵を一騎当千で一方的に虐殺できるような実力者。それを一刀のもとに斬り捨てたのだ。
《真に強い相手だからこそ、すぐに戦いを終わらせたほうが得策って事は《《ままあります》》からね》
ふと、妙な視線を感じたので、仲間たちのほうに目を向けてみると………
シーン
リトさんをはじめ、パーティーのみんながドン引きした表情で俺の方を見ていた。
恐怖と呆れが入り混じったような表情だった。
《【悲報】マサムネついに、強すぎて仲間たちからドン引きされる》
なんでだよ!!!!?




