魔界の海ヘ
トンネルをぬけた先は
赤い海のなかだった
匂いのない
生温かい水
これが魔界の海なのか
どこからか、ドクン……ドクン……と心臓の鼓動みたいな音がきこえる
もしかしたら海じゃなくて
信じられないぐらい大きな
母親の子宮のなかにいるのかも知れない
いろんな生きもののシルエット
赤い海のなかは巨大生物だらけだ
リムルルの加護か
俺たちのからだは泡のバリヤーにつつまれた
シャボン玉みたいなバリヤーのなかで
ふつうに呼吸ができる
「ロゼッタ、アシスト頼む」
「ええーっと。これってー。あれ?」
「こわいから、疑問形やめてー」
「あのー」
わきの下にかかえられてるロゼッタは、たらーっと冷や汗をたらした
ちなみに猫をだいてるような感触でロゼッタの抱き心地はサイコーです
「秘石の反応が〜
動いてるんですけど〜」
「は!?」
まさか、秘石は生き物の腹のなかってことか?
ニューヨークの夜景を背中にのせてるみたいな
せなか全面がぴかぴか光ってるクジラ
300メートルぐらいある
そのイルミネーションのオバケみたいな生き物が、
赤い海のなか《《それ》》のぶっといぶっとい足を照らした
ドクン……ドクン……という心臓の鼓動みたいなリズムは
その生物のたてる音だったみたいだ
なんで、そんなデカイものが生きて、歩いてるのか
もうわけがわからん。
「まさか、あの超デカイのなかから反応でてたりする?」
ネコ耳がぺたーとちぢこまったロゼッタが目をうるうるさせて俺を見あげる
「ニャ」
コンビニにダッシュしてネコ缶買いあたえたくなるぐらい可愛いな。
やっぱりなぁ。そうくるよなぁ。
浮上した。
海のなかにいたら
そいつの足しか見えないから
満開の桜並木みたいなピンク色のサンゴ礁とか
秋の紅葉にそまる山みたいな赤いサンゴ礁とか
その生きものの表面は
とにかくいろんなものをのせて、生やしてた
赤い海のうえに姿をだしている
超巨大生物
それは、ヤドカリの化け物だった
体長が数千メートルもあるような
島みたいなサイズのヤドカリ
おそろしいことに、そんな巨大なヤドカリが
ゆったりとだけど歩いている
「あちゃー。秘石の魔力を養分にして、思いっきり成長しちゃってるね〜。
もともとはこっちの世界の池にいる在来種のフツーのヤドカリみたいだけどニャ」
フツーの在来種のヤドカリをあんなバケモノに変える秘石って一体なんなんだ?
さぁー。どうやってあんなバケモノから秘石を回収しようか。
黄色い秘石が、背負った甲殻に溶けこんでるのだけはわかった。
もともと、在来種のフツーのヤドカリだって言うし
罪のないヤドカリさんを殺したくはない
うーむ。
おーいSiriたん。俺のなかのSiriたん
《何回も何回もほかの女の名前で呼ぶとか自殺願望でもあるんですか?》
うわ、Siriへの嫉妬がすごい。てかSiriってやっぱり女なのかwww
あのさ、あのヤドカリのバケモノなんだけど
秘石をひっぺがしても生きてられるのかな?
《解。甲殻のなかに今後、数万年は活動できるだけの魔力をためこんでいる模様。秘石を分離してもさしつかえありません》
よしきた!




