15話 いーや、まだ桃だ
年が明けてもまだまだ寒い今日この頃。
だから炬燵は必須なのだ。
畳は無いけど板間に掘り炬燵がある。
中は温熱の魔導具なので安全な熱源だ。
今も狐の獣人達は丸まって寝ている。
そしてその上にはミカンに似た果物が・・
「ああ、ミカンが欲しいよぅ」
「マイタンで我慢しろ」
「これって見た目はミカンなんだけどさ」
「気分の問題だろ」
「スイカの味なんだよね」
「ミカンと思って食え」
「冬場にスイカとか気分壊れるよ」
「なら、オレは桃を味わおうかねぇ」
「ええー、メロンと言ってよ」
「いーや、まだ桃だ」
「ちぇぇ・・」
「なんだ、マツタケ食いたくないのか」
「食べたーい」
夏はフタをして平面になる炬燵。
その隣の部屋は寝室になっている。
寝室にも温熱の魔導具がある。
魔力供給ですぐに温まると。
風の魔法でサーキュレーションだな。
部屋が暖まるとやって来るミカ。
「おお、暖かーい」
「あいつらが寝ている隙にやるぞ」
「あいあいさー」
「なんか、ミカのほうが年上に見えるな」
「そのうち成長するでしょ」
「そう願いたいものだな」
「これはもう成長してるけどさ」
「時々成長しては萎んでるだけだろ」
「あははっ、そうとも言うね」
やれやれ、身体は要求するが、心は変わらんな。
ミカが好きだから、付き合っているようなものか。
気だるさは感じるが、喜びが無いと言うか・・
あいつらが望むから側室にはしたけどさ。
まだまだ抱けないだろ、子供なのに。
後・・そうだな、7年ぐらいか。
ミカと同じく16からぐらいで良いだろ。
それにしても、ダイチは妙に忠実と言うか。
命の恩人とか思ってんのかねぇ。
時々、警備に戦い方習ってるし。
勉強も熱心だし、基本的に真面目なのか。
そのうち何とかしてやりたいものだが・・
「あ、交尾してる」
「交尾したい」
「まだ早いと言ってるだろ」
「じゃ、見てる」
「うん、見てる」
「別に構わんが、面白いか」
「おもしろーい」
「おもしろーい」
「そうなのか?」
「「早く交尾したい」」
「やれやれ」
獣人はみんなこうなのか?
早熟と言うか、何と言うか。
まあ、オレも初めては8才だったし・・
うえっ、何が8才って・・
はぁ、またかよ。何だこの思考は。
この身体の残留思念とか言うまいな。
どうなってんだよ、全くよ。
それはそれとして、なんともふわふわだな。
最初、灰色狐の獣人かと思ってんだよな。
だけど洗ったら銀色狐の獣人だと判って。
乾かしたらふわふわになってよ。
ミカとか喜んで抱き枕にして・・
オレもついでに抱き枕にして・・
ああ、今もふわふわが両方に・・
これは気持ち良いな。
女の腹の上で寝る、ちょっとイタイ風体の男の子。
それがオレだ、中々慣れないものだがな。
そしてその両横には、ふわふわの獣人が。
時々尻尾がさわさわと足をくすぐっていく。
ゾクゾクするから止めてくれよ。
誰でも太ももにやられたらそうなると思うが。
ああ、鳥肌が・・ゾクゾクが止まらんぞ。
「お前ら、わざとやってないか」
「ばれちゃった」
「ばれちゃった」
「やっぱりかよ」
「交尾しよ」
「交尾して」
「抱き枕で良いだろ」
「交尾したい」
「交尾したい」
「後7年が待てないか」
「「待てなーい」」
「どうすっかな」
いくら見た目が15才ぐらいだと言ってもよ。
据え膳は放置しない性質と言ってもよ。
精神年齢はアラサーだぞ。
それが一桁の幼児を抱く?
無い無い無い、あり得ないって。
さすがにそれはやり過ぎだろ。
確かに身体の本能は強いけどさ。
心は全く要求してないんだしよ。
それを言うならミカもだけど。
まあそのうち何とかなる・・と良いがな。