ゆかの幼馴染・山本くん2
廊下にでて、階段の踊り場まで移動する
少し目立つが仕方ない
話は聞かれたくない
「佐野がさ、今みたいにいじめられる前に言ってたことが気になってさ」
言いにくそうに山本くんは床をみながら言った
「鈴野は嫌われ者だって話を聞いたんだけど、そのときは俺、佐野の話信じてなかったから無視してた。でも、この前、佐野が他に言ってたことが本当になった」
のどが渇く
言ったことが本当に?
「・・・何が本当になったか聞いてもいいかな?」
「あー、たいしたことねぇよ、ただの・・・兄弟喧嘩だ」
「弟がいるんだよね?前、ゆかが言ってたよ。すごいツンデレだって」
「うん、すげぇツンデレ。でも、かわいい弟だよ」
弟くんは確か、今年入学したはずだ
バスケ部に入ったってゆかが言っていた
「・・・そっか」
「うん、・・・でさ、佐野が卒業前に鈴野が登校拒否するって言ってたんだよ」
「登校拒否?私が?」
永井くんはみきちゃんが山本くんに話しているのを聞いたと言っていたが
これは聞いてない
「どんなだよってかんじだよな、俺も最初は佐野がなんかやらかすのかと思ったんだけど、あいつ今あんなだし」
みきちゃんは靴を隠されたり、教科書に落書きをされたり、そんな典型的ないじめは受けていない
ただ、存在しない者として扱われているだけ
・・・前のみきちゃんには戻っていない
1人でも平気な顔でいるが、ほとんど学校に来ていない
「まぁ、気をつけろよ」
「うん、ありがとう。・・・ゆかに伝えてもいいかな?」
「えっ、今の話を?いや、あいつ鈴野に対して過保護すぎるしやめといた方がよくねぇ?」
「ううん、そうじゃなくて。・・・告白じゃなかったよって」
教室をでる前にゆかには一言、言っておいた
「あー、悪い。誤解させたか。ちゃんと言っとく。悪いな」
「前は付き合ったり、別れたりしてたけど最近はそういうことないね」
ここで初めて山本くんの顔から申し訳そうだとか言いにくそうだとかいうのがなくなった
「嫌味?」
器用に片眉をあげて聞いてくるなんて器用だ
「ううん、ただ不思議に思って・・・好きな子でもできたの?」
「違う違う、・・・鈴野はさ、愛ってなんだと思う?」
少しイライラした様子で否定する
爽やかなチャラ男だと思ってたんだけど違うのかな?
「愛?」
「そう、俺わかんなくてさ。話したこともない女子が俺に告白してくるんだぜ?「恋しました」って顔でさ。どこを好きになったんだよってかんじ」
中学生の恋愛なんてそんなもんだよ
常識のついた大人は話したこともない人に話しかける勇気はないから
今だけ許される
「顔?」
しかないじゃん?
「鈴野ってけっこー言うのな。確かに、俺かっこいいけど」
「自分で言うの?」
「うるせぇー、玲の次ぐらいにはこの学校でかっこいい!」
少し、表の永井くんに似てるかも
「そうかも?」
面倒になって、てきとーに答える
だって
山本くんは
私を愛してくれない