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謁見4



『有り難うございます』


 貴族の気品を漂わせて再度一礼をし、顔を上げる。


 さぁて、許可も得たし早速準備に取りかかろうかな、と思って踵を返して兄弟たちの方を向くと、皆が首を傾げて灯里を見ていた。


「……ん?」

「灯里姉ちゃん、今の、どこの言葉っ? フランス語?」

「いーや」


 蛍の疑問に首を振る灯里。

 それからややあって、今まで顎に手を当て考えていた(イケメンだから様になってる)浩介が訊いてきた。


「…イギリス英語?」

「違うよ。アーカイス国の言葉」


 この中で一番語学堪能な兄が当てられないのであれば、と、灯里は国名を明かす。


「アーカイス国って?」

「えっとね、私の前世──シスリアの生まれ故郷の王国だよ。ここ、ルースラッド国とは長年友好国で、尚且つ隣国なんだ」


 咲の聞き返しに、そういえば詳しく説明していなかったな、と思い出し、簡単な説明も加えることにした灯里。

 念のため、「今でも友好国ですよね?」という確認の視線をエルヴァ様に送ると、頷かれた。

 …うん、未だ両国の仲が良くて良かったです。仲が悪化する原因がそもそもないんだけどさ。


「召喚されてからの皆が話していたのは、ここの──ルースラッド国の言語だよ。まぁ、日本語に聞こえるから、多分これは召喚オプションの自動翻訳って能力なんじゃないかな? 私の勝手なる推測だけど。

 ちなみに、さっき蛍がアーカイス国の言葉を理解できなかったことから鑑みるに、多分、自動翻訳されるのはこの国の言語のみなんだろうね」

「シスリア。僕からも質問良いかな?」

「どうぞ」


 エルヴァ様に呼ばれた『シスリア』という名前は前世のものだったけれど、何の違和感もなかった。

 そのため、スムーズに受け答えができる。

 前世とはいえ、私は私なのだから、齟齬が生じるわけもないんだけど。


「どうしてシスリアは、自分が喋っているのが母国の言葉ニホンゴじゃなく、ルースラッドのものだと分かったの?」

「注意して聞けば違いなんて分かりますよ。…まあ、こちらでの私の母国語はアーカイス国ですから、わざわざ自動翻訳してくれるのにルースラッド国の言葉を意識して喋ろうとはあまり思いませんけど」


 日本人で言えば、日本語訳された英語を再度別の表現に変えるような──非常にややこしく、且つまどろっこしい事なのだ。


 先ほど試してみたことなのだけれど、エルヴァ様や司祭様の言葉は、意図すれば『日本語』の認識から『ルースラッド国』の認識へと変わるようだ──すなわち、自動翻訳が外れるようだった。


「あ、一つ確認ですけど、エルヴァ様には私の言葉なにに聞こえます?」

「僕? ルースラッドだけど」

「そうですか……。おそらく多分だけれど、アーカイス国の言語は喋れないと思うよ。今の『有り難うございます』も日本語翻訳されてなかったみたいだから。自動翻訳オプションはルースラッド国のと日本語間でしか作動しないようだね。…というわけで、アーカイス国民と意志疎通を図りたかったら、アーカイス国の言葉を覚えることだねー」


 頑張れーと声援を送ると、英語が苦手な蛍から恨めしい視線を向けられた。そんな目を向けられてもどうしようもないので、微苦笑を返す。

 姉や海はそこまで苦手でもないので、日常会話で使うものくらいは覚えようか、ということでまとまった。

 …兄は言わずもがな。あの人はまだ大学生なのに、既に5か国語は喋れるから、別に苦にも思ってないようだった。


「………蛍、必要なときは私が通訳してあげようか? タイムラグが生じるけど」


 可愛い妹が、自動翻訳が使えればいいのに、とあまりにも落ち込むものだから、さすがに不憫になってそう提案を持ちかけてみた。

 すると、蛍は途端に俯いていた顔を上げ、きらきらと期待に満ちた笑顔を向けてきた。


「(……あ、嵌められた?)」


 とっさにそう思った。

 今までの落ち込みようが演技だった訳ではないだろうけど、ここまで極端に喜怒哀楽を示されると…何とも言えない。

 

「本当!? 灯里姉ちゃん!」

「……うん」


 本当は本人同士で意志疎通が出来ると良いんだろうけど、妹にそれを期待するのは無理そうだ。

 途中で投げ出す可能性がある。仮に習得出来たとしても何十年かかることやら。


「………海。私が傍にいないときは、蛍をよろしくね」

「……あぁ」


 はしゃぐ蛍に遠い目をしてそう頼んだ私に、呆れたような視線を蛍に向けつつ、海が頷いてくれた。


「…あそこまで嫌いだと、逆に清々しいよ」


 そう言った灯里は深くため息を吐いて、ぐったりとうなだれたのだった。



あとで書き直す可能性があります。

というか、早く、彼女の祖国の人物たちを見たいです。

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