最終回:世界へ響く土の歌、そして新しい朝2
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美智子の畑には、村の若者たちや、隣町からやってきた五十代の仲間たちの姿があった。
美智子は今、自分の野菜を売るだけでなく、村全体の特産品をどうやって世界に発信するかをアドバイスする「地域コンサルタント」としての顔を持つようになっていた。
彼女の手元には、いつもあの本と、Feloがある。
「美智子さん、このカボチャも世界に売れるかな?」
近所の農家仲間が、照れくさそうに聞いてくる。
美智子は微笑んで、タブレットを開いた。
「聞いてみましょう。世界中には、きっとあなたのカボチャを待っている人がいるはずだから」
夕暮れ時。
美智子は一人、縁側に座って黄金色に染まる畑を眺めていた。
五十五歳。かつては「人生の夕暮れ」だと思っていた。あとは静かに、誰からも忘れられていくだけだと思っていた。
でも、違った。
AIという翼を得たことで、彼女の人生は、まるで朝露に濡れた畑が朝日を浴びて輝き出すように、新しい彩りを帯び始めたのだ。
「お母さん、何見てるの?」
帰省してきた娘が、隣に座った。
「ん? 明日のプレゼンの資料を、ちょっとね」
「また? お母さん、本当にパワフルだね」
美智子は、自分の節くれ立った手を見た。
相変わらず土の色は染み付いている。けれど、その手はもう、何かを諦めるための手ではなかった。
新しい世界を切り拓き、誰かの背中を押し、未来を掴み取るための手だ。
窓の外では、また新しい冬が近づいている。
けれど、美智子の心は、春の陽だまりのように温かかった。
「さて、次はどんな夢を、Feloに相談してみようかしら」
美智子の指先が、画面を軽やかに叩く。
その光は、田舎の静かな夜の中で、星よりも明るく輝いていた。
(完)




