第七十八話 未確定
シーナ視点。
先程までいた部屋の扉前を後にして十分ほど、いきなりのピンチがシーナの前に立ち塞がる。
糸を辿る内に一纏まりに丸め、小石ほどに大きくなった。
それが問題ではない、もっと大きな問題がシーナの足を止める。
石の下にいる虫やミミズのように隠れる場所を探しては適度に落ちていた空き木箱の中に、天井に結界で足場を作り隠れたりとあの手この手で廊下を歩き、シーナは人間を目視で確認するなり隠れる屈辱感がシーナには我慢の効かない今このような状況じゃなければしない行動だった。
我慢して隠れながら廊下を歩くシーナ、糸を辿り歩いていると、よく知る血の匂いを嗅ぐ。
その匂いを嗅ぐなり、足を部屋の前で止め扉を勢い良く開ける。
バン! と勢い良く開いたせいか中にいた少女の姿をした者を驚かせてしまう。
「眷属さん!? …って、えぇェェ原初様!?」
「ひゃっ!?」
「…あれ、いえあなたは... …違う? 匂いが眷属さんと似て原初様に似ている…」
シーナは、部屋の中にいた少女の姿をした者が目元に腫れる程の涙を流して泣いていた事を察する。
「誰ですか貴様は… 敵ならここで―」
肌を刺すような殺気をシーナは感じ、一瞬体が防衛体勢を取ろうとした。だが、とある人間の姿を目視するなり体は自然と元の体勢に戻し、口元に僅かな笑みを浮かべる。
「けど …良かった。質問したいのはこっちもなんだけど色々と。けどまず誤解を解きましょう私は眷属さんの味方、敵じゃない。…一応。元敵だけど… 今は無駄に争っている暇はないから。見たところあなたは原初様と何かしら関係がある。それと… そこで魂が抜けたようにリラックスした様子で眠る眷属さんがいることに私は安堵している。…そんな些細なことよりも一つ良い? 頭の上の輪はなに? まさか...! 天使なのあなた!? 嘘… ルーナにも見せてあげたいけど、本人ならだけども…」
「…え、あっ... その…えぇ… アバッババヤァ…!」
ルーナの質問と言葉の情報整理に少女の姿をした者は混乱している。
「待って… ください! そんな一息に言われても、答えられない…」
「あら? ごめんなさい。けど私も今は時間がない。あなたに構っている暇は本来無いのだけど… 眷属さんがいるから色々と舞い上がってしまったの。…それであなたは原初様と眷属さんの何なの?」
「…敵意が無いことは分かりました。私は... ここで眠る原初ミルの第一眷属様を守る剣であり盾。この身が滅び朽ちる時までそうあれと作られた…本体の分体です。もうその力すら無いのですが…」
分体と言われてもシーナの頭でも理解できずにいた。
「…まさか、あの時屋敷で助けてくれたあなたが原初様のぶんたい? その… ブンタイが何かは聞いてる時間が無いから聞かないけど、とりあえず眷属さんを守ってくれてたんでしょ?」
「はい。ですが… 私にはもうあなた一人殺すほどの力もありませんからご安心を」
「良いの? 見ず知らずの吸血鬼にそんな重大な事を教えて」
「…良いと判断しました。 …不本意ながら想定外が重なり私もあなたを見てなぜだがホッとした気持ちになったとしか説明できませんけど。私は本来、心や自我と呼ばれるものは無い本体から切り分けた意識の一部をの命令として従い、この時を残すこと無く僅かな時間のみを生きるだけの存在でしたが、先程にこの輪を貰い、生きる時間を伸ばして貰えました。だから… あなたに頼みたいのです。この眷属、田中正人様を守ってほしいのです、私の代わりに...」
血を流しながら拳を固める其ほどに強い力で握るほどの感情が目の前の少女の姿をした者にはあるとシーナは理解する。
「初対面だよ私達は。そんな事を聞くほどに親しくも無いのに。…はぁ、そうなんだけど。…けど、ルーナがいたらきっと助けるんだろうなぁこんな時は。…分かった、良いよ。けどちゃんと全部そこで寝てる眷属さんに伝えてからだからそれまではあなたが眷属さんを守る... それなら良い」
「…難しい事を言うのですね、あなたは。守れるほどの力も残ってない… 無力感しか無い私に」
「…分かるよその気持ち、私もここ最近ず~と感じている無力感。自分の力が足りないから、守りたいのに守れない存在がいるって辛いよね、よく… 分かる。そうだ! あなた名前は?」
「…正人様が付けてくれたメリーサン、という名前があります」
「まさかあなた… メリーさんのさんまでが名前だと思ってる?」
「え? …違うのですか? てっきりそうなのだと… ずっとメリーサンと呼ばれていたから...てっきり」
「…フッふふ、アハハ。…へぇ、メリーね。眷属さんが付けたにしては可愛くて良い名前。私達が出会ってまだ短いけど、私あなたの事がルーナの次に好き」
「…何か不本意な笑いがあったように思います…」
「うん! 面白い! そうだ、あなたもし生きてたら私の屋敷で働きに来ない?」
「…そうですね。もし、生きることが出来たのならそうするのも良いと、あなたと話して思うくらいには私もあなたが好きになっています」
「やーくーそーく~! ね?」
シーナはメリーに近づき、小指を出す。それの意味を理解してか、メリーも同じように小指を出し互いに結ぶ。
「約束ですか…」
「破ったら針を千本飲むらしいよ? そのくらい痛みを味わうか約束を守るか、どっちが良いか考えておいて…」
「…そうですか。痛いのは確かに辛いですね。約束ですから… 守りたいです」
「うん守って貰わないといけないお呪い! それじゃあ、寄り道はこれくらいにして、眷属さんの目が覚める前に親友のルーナ探しに戻らなくちゃ…」
「…私はこの部屋を離れるわけにはいきませんが、見つかると良いですね。応援してます」
「…! メリーありがとう!」
シーナはメリーに向かって熱いハグをする。それはシーナのルーナがいない寂しさを埋める行為でもあったが、メリーへの感謝の気持ちでもあった。
「わっ! …ふふ、ホント… もっと生きたいと思わせてくれるおかしな吸血鬼さん…」
「生きれば良い。必要ならいくらでも力を貸すし、メリーを邪魔する相手がいるなら一緒に泣くまで痛め付けてあげるから、そんな諦めた声で話すのはもう今日でおしまい。って… ルーナなら言うかな…」
「本当に信頼しているのですねその親友の事を」
シーナ腕を解きメリーの肩を掴む。
「うん! 私の、一番の親友なんだ。…早く会いたい」
「あなたにもそういう相手がいるのですね。原初様と同じで… とても良い関係が」
「うん! 絶対、メリーにも会わせるから! 戻ってくるまで勝手にくたばらないでねぇ~!」
シーナは立ち上がり、部屋に背中を向けまた歩む。糸の辿りながら、決してこの時間が無駄だと思うことはない。出会えた事がむしろシーナの先ほどまであった心の緊張が溶けていた。
「ヨシ…! 頑張れシーナ… 負けるなシーナ… ルーナは必ず助けられるぞシーナ…。うん! ファイトぉ…」
小さく呟きながら自身を鼓舞する。そうしなければ泣いてしまう弱さが今のシーナにはあった。ルーナと出会ってからシーナは変わった。傲慢な考えも少しはマシになったが、同時にルーナがいないとダメな程に精神面で弱くなりやすい子になっていた。
まるで磁石のようにくっついているほど、常に側にはルーナが、ルーナの側にはシーナがいる。当たり前となり、視界に映るものには必ず互いが居る。
大粒の冷や汗が額から首滑り背中や胸にまわる。胸が痛い、頭は熱を出したみたいに回らない。部屋を出た途端に来る不安は一時忘れたのを詫びさせるようにシーナを苦しめる。
「…すぅぅ、ハァァァァァ…」
深呼吸をして再び身を隠しながら糸を辿り協会本部の廊下を歩く。
普段は安全な道である廊下も、人間の視線を気にすれば全てが敵に見えてくる。
辺りを気を配らせていたはずのシーナの前に再び立ち塞がる壁が現れる。
その者は突如目の前に現れた。音もなく、気づいた頃には目の前に、シーナが一瞬の瞬きをした間に現れた。
「立ち止まれ… 吸血鬼」
「え、」
シーナの警戒は完璧であった。人が四人ほどならべるほどの幅ある廊下、中心らしき場所に庭がある程に広い場所はあっても廊下は直進だけ正面と後ろに主に警戒して部屋の扉や曲がり角なども警戒してたシーナですら気がつけない者がいた。
「本部に侵入した命知らずのあの吸血鬼かと思えば… 絶影卿の連れてきた吸血鬼だったとは。あのお方に用ある様子ですが…。再度治療室におとなしく戻るのならば送ってあげます…」
「邪魔しないで… ワ,私は...ルーナを…!」
怖い、身を針の付いた板で削られるような恐怖が目の前の男にはあった。
「おや…? この糸は絶影卿の…」
「あっ! だめ、糸がルーナを!」
「そうか、この糸は命綱ならぬ、命糸というわけと…。吸血鬼に手を貸しその吸血鬼一人の監視の命を放棄するとは… あの絶影卿がそこまで愚かだったとは」
「そう、あの… 絶影がでござる… 愚かな考えでも手を貸さずにはいられなかった…」
糸を男から奪い去る一つの影。
「吸血鬼の味方とは、いつからあなたは協会… いいやあのお方を裏切るような真似を…」
「すまぬなへシリア卿 …罰は受ける。だが、反省は別の話。この判断はワシの私情ゆえ少し殿の考えに腹をたてたワシの反抗期とでも報告してくだされば...」
「どうして人間さんがここに...」
「うむ、それは簡単な話、小娘の護衛もとい、後を付けていただけの話。小娘に糸を渡すだけでは必ず邪魔も入る… 隠れるだけではごまかせない、そこのヒシリア卿のような… 番犬にな。手強い番犬様だ」
「反抗期… 見た目が小さいからと子供騙しですね絶影卿。良い歳した大人であるあなたがあのお方の判断に逆うのは、あなたの師が先代絶影卿が人に味方した吸血鬼であるから情が移ったのでしょう…」
「ご自由な判断をヒシリア卿。ワシは殿がした判断が許せぬ事に否定は、ない…! 来いカミツキ!」
合図と共にヒシリアを縛る糸の束。
「…手加減をする余裕はワシには無い。はじめからズルをさせてもらったすまぬなへシリア卿。ワシみたいな臆病者は常に策を講じてから現れる… 目の前に現れたのならそれはもう策の中だへシリア卿」
「ヴァン…」
『はいはいっと…!』
へシリアの影から現れる鎖が絶影、神月、シーナ、へシリアの周りにいた三人を生き物のように襲う。
「躾のなった犬だ…!」
『だから犬じゃねぇ狼様だ! 何度も言ってるだろ人間!』
指に着けた金具に糸を通して鎖を全て弾く絶影。結界で身を守るシーナ。
「…こんなの原初様に比べたら!」
「ハハ、吠えたな小娘!あの犬よりも強い! 良いだろうワシもより頑張らなくてはな。相手は協会本部で殿に次ぐ実力者だ。踏ん張れ小娘…!」
炎で糸を燃やし剣を抜き絶影に斬りかかる。
「怪我人ですから、気絶程度にしておきますよ絶影卿」
「ワシをなめるな!」
真剣白羽取りで剣を止める絶影。
「…なぜ今なんです? 世を乱す化物に死による罰を与えるのが協会所属である我々の役目。あなたも私も多く化物を退治しては殺して来ましたが、原初の危険性はあなたも理解しているはずなんですが…」
「確かにそこに否定はない! 必要なら道を外れた人間も殺した…。だから知っているはずだへシリア卿。あの小娘達は血を流してもあの原初を止めようとしていた。ワシが報告した内容に誤りは無い。現場で見てたワシには殿の考えは理解できても、動かずにはいられなかった、ただそれだけだ」
「…そうですか。難しいんですよ絶影卿。殺さずに痛め付けるのは…」
「…何をしている小娘、止まってないで今の内に走れ… ワシが勝つことに期待しているのならその余裕は戦い始めから無い!」
剣を受け止められて驚きながらもへシリアは剣を空中で一瞬離し、宙に剣が浮いている間に絶影に素早い蹴りと殴りを行う。
剣を離し攻撃を避けながら話す絶影。
「ここで... 止まるな! 走れェェ!!!」
「はっ、はい!」
床に落とした糸を掴み再び走る。背後に絶影とへシリアを感じながらも、シーナは背を向け走る。
「…逃がさない。雷光の槍」
へシリアは絶影を壁に蹴り、左手をシーナに向ける。手からはバチッと電気のエネルギーが現れると同時にシーナに向かって槍の形になり飛んでいく。
「ぬっ… させぬ。ゴホッ! 影、法師… ゲホ…!」
絶影は意識を絞りように作った分身により電気エネルギーは止まる。
背後から激しい戦闘音がするが必死に糸を辿りもう辺りの人間を気にしている余裕がない程に走る。
ざわざわとどんどん広がる人間の声の数。振り払うためやれることを全部やる。
自身を止めるため掴む腕を振り払い、結界で壁や床を作り逃げ続けた。
そして追いかける人間達から逃げきりついにたどり着く。
「はぁはぁ… ここに」
身長よりも高い大きな扉の前に糸はこの先に続いていた。扉の隙間からキラキラと光る糸が見える。
両手で扉を押し開き部屋の中に入ると。
「馬鹿な娘だお前は…」
入るなりとそんな言葉が聞こえた。
「招き入れたのは絶影卿だが、その原因を作ったのは私というわけか… 先の見えぬ不安とはこういうものか。心痒いなこの気持ちは…」
「あなたと話している時間は私の心余裕からしてないの…。ルーナを返して。一回で意味は伝わってると良いのだけど…」
シーナは視界の先に写す人間に向かって言う。
大きな椅子と大きなテーブルが一つある部屋だ。椅子にはあの人間が座っている。
「…待って!? ルーナはどこ…」
「糸を辿って来たのだろうが… 安心しろあの原初は今も生きている。この部屋とは別の場所で拘束させて貰っている」
「拘束… へぇ...、ならその部屋を教えて。助けに行くから」
「…それは出来ない。お前の友は原初がこの世に止まる依り代となった。監視のため返すことは出来ない」
十秒ほどの静寂の後、人間が話す。
「私は恨まれて当然の事をしたお前のような友を思う吸血鬼を悲しませる事を。手荒無い真似をして申し訳ないと思っている。だが後悔はしてない。原初はこの世にもっともいてはいけない存在だからな…」
「だからなに…。世界のためにルーナをこの冷たい人間達がいる場所に置いて、私は諦めて帰ってくださいって? 親友を見捨てて家に帰れると... 。嫌、絶対ルーナを返して貰えるまで帰らない」
「知恵ある子だとお前の父親からは聞いていたが… 愚かな考えを」
「あなたがお父さんとどういう関係で私の事をどれほど知っているかは知らないけれど、いい加減ルーナを返すと言いなさい…。じゃないと… この部屋ごと建物を壊してでも探しに行く」
「冷静な子とも聞いてたが… 頭に血が上り冷静な考えも無いに等しいな…。やはり親バカかあの二人…」
シーナは地面を蹴るようにして走り勢いのまま正面の人間に向かって飛び蹴りをする。
座っていた椅子を壊す程度に終わり、すんなり躱される。
「チィッ!」
背後に立つ影を捉えてから回し蹴り、躱されても捕まえるように腕を狙い掴もうとするが続けて躱される。
「はぁはぁ… ぐっ!」
「無駄だと分かっているなら止めろ。お前では私の髪も掴むことが出来ない」
「だからって止めたら… やめたらルーナに会えない」
「捕まえられたとしても、私は返すとは言ってない。勝手なルールを作るな」
「違う…。ボコって泣かして、後悔させてやる。私を怒らせた事を!」
「そうか… 本気でそう思っているのなら少しは評価しよう。だが、無駄だ」
シーナの手が服に触れるよりも早く弾く指はシーナの額にバチンとぶつかる。
デコピンである。ただのデコピンではない吸血鬼も痛がるほどのデコピン、足の小指をぶつけたに等しい痛みだった。
指が額にぶつかると同時にルーナの視界はグルグルと歪み地面に膝を着き頭を押さえてうずくまる。
「それがお前の友が肉体に入っていると思え。力の差は歴然、今は精神的不安定で弱体化しているとはいえ原初ミルよりも強い存在になり得るのだお前の友の肉体に入っている原初には。そうなる前にここに捕えておく他無い」
「何されるか分からない所にルーナは置いていけない…」
目に堪え涙を流しながらも目を服で擦りで拭う。
「いい加減にしろ。あれはお前の友ではない。友の名を語る偽物でしかない」
「だとしても... ルーナの魂が変える場所である肉体をここに置いておけない。偽者の魂が入っていようと、返してもらう」
「……。……。ならば条件付きで返そうお前の友を」
人間は指を振ると壊れた椅子が元の形に戻り部屋も元の形に戻っていく。
人間はシーナにも指を振り椅子を用意する。椅子に座り少し考えてから椅子に座らせたシーナに話す。
「だが、条件を話す前にとても重要な事を話してから決めてほしい。これはお前にも関わる重要な事だ」
「…分かった。話くらい聞く。やっと返してもらえそうだし…それくらいは良い。けど、長いのは嫌だから」
「残念長い話だ…。お前とあの友の肉体を使う原初に深く」
「そう…」
「あの原初はお前の願いを聞いてあの友の肉体使い友の復活を演じたが、本来あの原初が狙っていたのはお前の肉体だったんだ」
「…」
「原初の目的を私はお前が来る前、こことは別の部屋に拘束する時聞いた。『なぜ今だ』と。原初は答えた。『本来はシーナの肉体を狙っていた』と」
「何で私の肉体を?」
「優秀な肉体と力を合わせ持つお前が欲しいからだ。原初にとって器は重要、吸血鬼に力を与え死んだ者がいるが、その力の受け皿にも素質が必要なんだ。お前はその器に選ばれた。素質無き者は強大な力に肉体が耐えきれず死ぬ…」
「…私は力に耐えられる器であると?」
「まだ分からない。だが、仮にそうであるならば、ある日突然原初に肉体を奪われお前と言う意識は消え、私の敵となる。遊びで友を殺しかねないぞ。人間も吸血鬼もこの世すべての者は原初にとってのオモチャでしかない」
「私がルーナを… ありえない。そんな酷いこと」
「起こらないとは言いきれない。原初はその気まぐれで昔、人間の街を吸血鬼モドキの人間がゾンビと呼ぶ知性無き化物だらけにした例もある。人間社会を生きてきたお前とは違う独自のルールで生きる別の存在だと思う事だ」
人間は指を振るとシーナの背後の扉からルーナを連れた人間が二人扉を開けて入ってくる。
「ではお前の友を返す条件を言おう。監視と拘束… 監視はお前が、拘束は私がかけた力の拘束だ。その二つで友は自由だ好きな所に行けば良い」
「…」
「…さっきの話を信じるかはお前の自由だが、条件は呑んでもらう。呑めないのなら友を取り返すことは永久に諦めろ」
「…分かった。条件は呑む。けど、私がルーナを殺すかは受け入れたくない。それとあなたには二度と会いたくない」
「私もお前とそこの原初に二度目が無いことを神に祈ろう。まぁ、期待はさせてほしい」
「…私もそうだけど、性格悪いね、あなた」
「褒め言葉として受け取る。さぁお前達は自由だ。原初の元に向かうと良い」
「べぇ!」
目の下を指で押さえて立ち去るシーナ、ゆっくりと深呼吸して目の前の存在を視界におさめる。
「やぁシーナ。君ならそうするって分かっていたよ。おっとシーナ服に埃が着いている。待って落としてあげる」
パンパンとシーナの服を軽く叩き服に付いた埃を払う。
「うん、これで綺麗になった、良かった...。やっぱりシーナは綺麗だから服も綺麗な方が良いよね」
ニコニコと笑うルーナに安心感と、違う存在であると考えが邪魔に思えてくる。
それだけシーナには受け入れ難い事実であった
バタン! 大扉を出ていく二人。
「…怒ってるよねシーナ。私が原初だから…」
「…ルーナの声でそんな事言わないで… こっちまで不安になる」
「…でもね。私はシーナには笑ってほしいんだ。…だから怖い顔しないで?」
「…分かったから。戻らなくちゃ行けない場所があるからいくよ原初様?」
「…そうだね。もうルーナって呼んではくれないよね」
「…」
二人は手を繋ぎ、来た道を戻る。
戻る途中にボロボロの絶影に会う。
「…ん? おぉ、小娘無事だったか良かったぁ… イテテ」
ボロボロの勝手に修復していく壁に背を付けて座る絶影の横で手当てする女性もいた。
「こ、コラ神月! もっと…優しく... ワシは怪我人、イテェー!」
「絶影も無茶な事を… 本当に。私を手に持てばここまで怪我することも無かったのに...」
「フッ… ワシが本気を出せば、相手も殺すで来るだろうから、すまぬが神月の力は借りられなかった」
「なんでも良いけど、無事なら良かった」
「うむ小娘! よく頑張った。あの殿から友を取り返すとはすごいな小娘!」
「…」
「…ん? どうした小娘? コラ神月、包帯はもっとキツくだ」
「はいはい、優しくされたいのかキツくされたいのか神月には絶影の考えが分かりません」
「…そ、それはすまない神月」
「それじゃ、私は行くとこあるから… 感謝だけ置いていく。ありがとう手を貸してくれて」
「…ふん! 困った時は手を貸すそれがワシだからな!」
「神月、今日初めて聞きました…」
「…じゃあまたいつか」
手を振り別れ、歩く。
「…ねぇシーナは私のことが嫌い?」
「何いきなり… 分からないよく… 今は考える時間がほしい。お父さん達にどう説明したら良いかとか… もう色々と!」
「そうなんだ。私はシーナに【嫌い】されるのはとても嫌… だから必要なら私はシーナに手を貸すよ… 約束!」
ルーナは小指を出す。
「…約束」
シーナもそれに答え小指を結ぶ。
「…うん! 契約成立だね!」
「楽しそうだね」
「ううん、嬉しいんだ私はシーナに約束出来て、ふふん!」
そんな事もあったが目的の部屋に着く。
「戻ったよメリー。眷属さんは目を覚ました?」
部屋に入ると先程と変わらない体勢で正人を寝かすメリーがいた。
「お帰りなさい、え~と…名前は」
「あっ、そうか名前言って無かったね。私はシーナ、そしてこっちが...」
「私はルーナですわ! ねっ? シーナ」
「…うん。そうルーナ」
「そうあなたがルーナ… けど何でルーナから原初の気配が... それにこの原初は…」
「分体なのに私に気が付くなんて… よほど力がある分体なんだね?」
「ごめんメリー! このルーナはルーナなんだけど… 原初で、ちょっと私には整理したい部分があるけど… 今は無害だから安心して?」
「は、はぁ?」
無理やり納得させて事なきを得た。
三人は他愛ない中身も落ちもない終わる気配の無い話を繰り返しては笑う。
眷属の目覚めるまで。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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