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第七十七話 悪夢

シーナ視点。


「ン… あれ、いつの間にか私も寝て…」


 安心感から、眠っていたシーナがルーナの眠るベットに頭を付けた状態で目を覚ます。


「あら? 起きましたわ」


「…! ルーナ… うぅ、やっぱりちゃんと生きてるぅ…」


 シーナはベットから起きるルーナを見るなり飛び付く勢いで抱きつく。


「ルーナ~!!」


「わ、ワワァ!? ちょ、超クルシイデスワ… シ、死ぬ… コレ… 三度…目に」


「あっ! ごめんルーナ… けど、もう少しこのままにさせて…」


 シーナは手を緩め改めて抱き締める。


「…シーナはルーナが生きててくれる事に喜んでいるのですね?」


「そんなのあまり前だよ… ルーナ助けられなくてごめん… 二回も助けられなくて… 私にもっともっと… 力があったら… 勇気があったら… ルーナが二回も…うぅ」


「…ううん、ワタクシはシーナが喜んでくれる今がとても嬉しいのですわ。そうやって… 泣いてくれるあなたがとても… 愛おしい」


 シーナの頭を撫でる手。優しく包むように触れる。


「けど、今度は… 私が守る... ちゃんと親友である私が、ルーナを守るから…」


「うん、ならこんな場所で止まっている暇はありませんわ。ワタクシを助けてシーナ、もう一度原初様に会いに行きますわよ?」


「…ん。けど、ルーナは怖くないの、一度ルーナを殺した相手だよ?」


「…大丈夫! ワタクシにはシーナがいますわ。隣で守ってくれて、こうして触れられる相手がいるだけでワタクシは無敵ですわ!」


 明るくルーナは笑う。そんな笑顔にシーナはつられて笑う。


「…うん。じゃあ行きまーす! って!? 出口はどこに…」


「そこの扉から出てから考えましょう」


 シーナはルーナが指差す先ほどから人間が出入りする扉を見る。


「うん、そうしよう。けど…隣で寝ている人間に気付かれないように出なくちゃ」


「…」


 ルーナは何か考えているようだ。


「…分かりましたわ。シーナ…。気付かれなければ良いのでしょう人間達に?」


「うん、けど私達二人で逃げるのは難しいよ… ルーナも目が覚めたばかりで...」


「ふふ、シーナのワタクシを心配をしてくれる所も好きですが… そもそも、気を付けるのはこの場に居ない人を警戒した方が良いのですわ…」


「それって… ここのボスみたいな人間?」


「そう… ここはその人間の腹の中と言っても良いほどに見られていますわ。監視とは… あの原初様とは違い。腹黒と言いますか、そんな人からの視線は気分が良くないですわ…」



 ルーナは手に黒く揺らめく影を手に集め一塊にし片手に収まる漆黒のナイフに変える。

 この世の物ではない物質を元に作られたナイフを持ちベットから降りるルーナ。


 そんな物を持ち立ち上がるルーナを見るシーナは僅かな違和感と若干の恐怖と困惑が体を動かす。


「どうしてそんな物を…? おかしいよルーナ… いつものルーナらしくない」


「変な事を言いますわシーナは。ワタクシはどこからどう見てもルーナですわ?」


「うん、けどルーナは感情や気分に流されて動いちゃう時はあっても... そんな誰かを殺すように武器を持ったりはしない… 最低限相手に対して力を使い分けるくらいは優しさがあるのに… 今のルーナはちょっと怖い…。本当にあなたはルーナ?」


 シーナ本人は否定したい。【親友】が人間から見る吸血鬼のように、化物のようにルーナを見ている自分を。そこにいるのは本当に【ルーナ】か。

初めは疑いは無かった。言動に対したちょっとした違和感がこの少しの時間で積み重なる度に聞かずにはいられなかった。


 シーナは「もちろんですわ」と返ってくることを願っている。この親友の姿をした何かに対しては、死んだ後特有の何かであると今生まれた自分の中での確証無き証明無き理由付けを信じたい。


「…ん。ヘェ~。気付くんだ…シーナ」


「…! 嘘…」


 シーナは常々心を砕けるほどの痛みが走る。闇の中にシーナを再び突き落とした。


 ピシッ、とシーナの耳にも聞こえるほどに今回はっきりと聞こえた。


「…どこがダメだったのシーナ? やっぱりちゃんと調べたくらいじゃ愛にも近い親友を騙せないってこと? 記憶はちゃんと全部見てきたはずなんだけど…」


「…ルーナ何でしょ? チガウ、チガウ… 違う! ルーナは…! シンデナイ…」


 手に持つナイフを再び影に戻しシーナに近づき抱き締める。


「大丈夫ですわ... ワタクシは生きていますわ」


 あぁやっぱり生きて―


「あの原初様の中で…」


 夢に落ちそうになるシーナだったが目が覚めるような言葉の暴力が現実に引き戻す。


 バッ! とルーナを突き飛ばし壁に吹っ飛び部屋ごと揺れる。


 壁にはヒビが走る力で突き飛ばす親友を。


「…! ご、ごめ― はっ! チガウ... 何が違う? あれ、私何を…」


「いろんな事を考えて混乱しているんだよシーナ。イタタ…」


 ゆっくりと立ち上がりシーナに近づくルーナの姿をした何か。


「ルーナ…」


「そういう時は、都合の良いように考えるんだ。苦しいことは一旦忘れて… 楽しいことを考えれば世界は好きに変えられる」


「…ルーナは生きている。…けど、今いるあなたはルーナじゃない…?」


「違う。私がルーナであると受けれる。これでスッキリ元通り。シーナがそう認めれば全部そうなる」


 シーナには今の言葉は何を言っているのか分からなかった。けど、そうしたいと思った。


「話はそこまでだ… 偽者」


 バン! と勢い良く開かれる扉。


「貴様がなぜ今さらこの場に現れたかは聞く暇もないが… 拘束させてもらうぞ原初」


「…邪魔者が来たか、けど良いの?時間が無いんでしょ? あの原初様が人間達を大量に殺す前に止めなくて良いの?」


「…手は既に打ち、そして後は待つのみとなった。貴様を捕らえる余裕はあるほどには時間も余るほどにな、安心しろ」


 教会本部のボスが歩み近づく。ルーナも何かする様子もない。


 だが、その歩みを止めるシーナ。ルーナとボスの間に立つ。


「退け… 邪魔をしたところであの吸血鬼を捕らえることに変わりは無い」


「だから…退かない。 ルーナはあなた達なんかに引き渡したりしない。私が守る... そう決めているの!」


 だが、シーナの体はこれ以上動こうとはしなかった。


「何で...!? 動かないの…!」


 シーナの体は気付けば糸に縛られていた。


「いつの間に…!?」


「…怪我人だというのにすまない絶影卿」


 怪我人である絶影を見ながらボスは言い終えると当時に再びシーナに向かって歩みを進める。

 

「だめ!」


「いい加減目を覚ませ。貴様の親友は本人ではない。本人を語る偽者でしかない」


「偽者は酷いよ。おまえだって… 人間の偽者のくせに... それよりもおまえの中の彼はもう居ないの? 吸収しちゃった?」


「…黙れ、屑。事が済むまで拘束させてもらう。貴様らは一人ですら手が掛かるというのに… なぜ今になってこの者の肉体を使い現れたか後程、聞かせてもらう…」


「フッ…ふふ、偽者にはやっぱり分からないのカナァ? 好きな子には喜んでほしいじゃん?

それ以外あるわけ無い…」


「そうか、理由を聞いても私は貴様を捕らえることに変わりは無い着いてきてもらう。再び眠りにつきたいのなら相手をしよう…」


「確かに今の私ではおまえを殺せない。良いよ着いていく」


「だめ、行っちゃだめルーナ!」


「大丈夫シーナ。すぐまた会えるから...」


 ルーナを連れて二人は部屋を去る。


 部屋から出ると同時に体の拘束は解かれ、扉に向かって走る。

 だが、出た廊下では二人の姿は確認できず辺りを走り回るが必ずなぜか元の部屋の前にたどり着くばかりだった。


「ルーナがいちゃヤダ… ルーナが居ないと… また私は...う、うぅ」


 教会本部の廊下にシーナの圧し殺す泣き声が微かに聞こえる。


「…何を泣いている小娘」


「だってルーナが…」


 シーナに話しかける人間の女性。


「はぁ、絶影は本当に吸血鬼相手と言え甘い… 立て小娘、そしてこれを持て…」


「…糸?」


「もしかしたら… もしかしたらだぞ? あのもう一人の小娘の元に続いているかもしれない… 例えたどり着いたとしても我々二人は何も無関係…だ」


「…! けど…良いの? こんな事して… 私を助けて…」


「…あそこまでして助けられないのなら誰かが手を貸さなければいけない。これは絶影が秘密と言ってた小娘に対しての言葉だ。そしてこれは私から、私は絶影の主の命令に従いこそしたが… 刀とて人の心はある。泣いている小娘に手を貸したくもなるってわけだ…」


「…ありがとう。この恩は返せるか分からないけど忘れない... ありがとう!」


 シーナは手に細く見た目以上に丈夫な糸を持ち歩き進む。


 それが細く不確かなものであっても藁にもすがる思いで糸を辿る。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 ルーナを語る原初については後程語るかもしれませんがこのまま消えるかもしれません。


 色々とやりながら完結目指します!応援の感想なども待ってます!。


面白いと思っていただけたのなら評価やブックマークもお願いします!。

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